異世界で俺はチーター

田中 歩

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{第三十八話} 「測定不可」

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昨日、オレが吐いた事で騒ぎが起きたのが楽しかったのか、今日はオレを吐かせようと腹部を集中的に狙ってきた。

「今日も吐くのか?w」

「オラ!」
腹を数発殴られた。

「グッハ...」
殴られたオレは床に崩れ落ちる。

「ぜんぜん、吐かねぇぞ!」
吐きたく無かったオレは、その日の給食をあまり食べなかったのがよかったのか昨日より吐き気があまりしなかった。

「あ~、もうめんどくせぇ!」

「死なない程度に痛みつけるぞ」
そんななかなか吐かないのが気に食わなかったのか、全体的に殴り始めた。

「オラ!」

「グハッ」
痛すぎてどこが痛いのか分からない。

「も、もう十分だろ...?」

「それを決めるのはお前じゃねぇ~よ!」
強いけりが入ったのを機に意識が遠のいていくのが分かった。

(俺の出番がついに来たか...)

そんな声が聞こえた気がした...幻聴か...?「どうやらオレは死ぬな」と悟った...
そこからの記憶が無く気がついたら、俺は保健室のベットに居た。
目を開けると見覚えの無い天井で、最初はびっくりしたが部屋を見回すと、身体測定で来た覚えのある保健室だと分かった。
横を見ると、母が涙目でイスに座っていた。

「しょう、大丈夫なの?何があったの?」
どうやらオレがいじめられた事を聞いたようだ。

「クラスのヤツにやられたよ...」

「そう...一言でも相談してくれればよかったのに...」

「できねぇよ...そんなこと...」
気まずい雰囲気が流れたところに担任が校長と一緒にやってきた。

「今回は、こうなる前に気づかなくてすいませんでした」
何を言っている?オレは何回も先生に言ったぞ?そのたびに「冗談だろ?」「遊びだろ?」とか言って聞く耳を持たなかったし、挙句の果てには「しょうが本気で嫌がらないからいけないじゃないか?」と、オレが悪いみたいな事まで言われた。
先生達は面倒ごとはかかわりたくないのだろう、いじめを注意するのは先生の仕事の一つだろ。
しかも、今はまるで「私は気づかなかったんです。気づけばもちろん注意しましたよ?」みたいなオーラを放っていた。
一方校長は、この問題を大きくしたくないのか「どうか穏便に...」とか言ってる。
その日は学校を早退した。
車に乗って家に帰る途中

「あんな学校には無理して行かなくていいから」
どうやら校長達の対応を見て察したらしい。
その一言を理由にして次の日から学校を休んだ。
後日ほかのクラス友人に聞いた話だが、オレは一度気を失った後すぐに起き上がってまるで別人のように政宗達をボコボコにしたらしい。
中学二年生の一学期の時の話だ。

中一のころはみんな中学に慣れていなかったのもあるが、特にオレとぶつかる人間がクラス居なかったのが大きな理由だろう。
それでも学年には何人かいた。
中二になると、そんなヤツらが全員クラスメイトになった瞬間オレは「オレの中学校生活終わったな」とつぶやいたほどだ。
しかも最悪なことに、そのオレと中の悪いヤツら同士は中がよかった。
その中でもリーダー的な存在が「政宗」だった。
彼はクラスの中心的存在でもあった。

政宗とは小学校から一緒で、当時はいろんなことをオレのせいにする程度で済んでいたが、中学生になって少し知識を得るとそれをいじめに使うようになっていった。
いじめの標的にオレが選ばれたのは小学生だった時の事もあるのだろう。
不登校になったオレは暇な毎日を過ごしていた。

よく不登校や引きこもりは、ゲームやテレビばかりを見ていると言われるがオレはちがった。
確かに最初の数日はゲームばかりしていたがさすがに飽きが来て、最終的には家事をしていた。
そして、生活リズムが崩れて昼夜逆転するらしいが、夜10時に寝て朝6時に起きると言うしっかりした生活リズムを刻んでいた。
部屋が汚い事も無く、毎日掃除機を掛けたりしていたおかげで比較的に綺麗だった。
そんな事をしていくうちに家事全般がかなり上達していた。
上達していくにつれ家事のスピードが上がっていき、また暇になってくる。
そんなオレがアニメを見始めるのは必然だったのかもしれない。

「主人公最強系アニメ」にはまったのは、いじめられる弱い自分が嫌いで「異世界物」が好きなのはこの世界が嫌いだからだろう。
そうして、オレの中学二年生は終わった。

中学三年生になってクラスが変わったのを機にオレは学校に行くことにした。
何かが変わった様な気がしたからだ。
幸いにことに、政宗達とは別のクラスで人間関係に問題は無かったのだが、学校に行かないことの効果は大きかったらしく、新たな壁が出来ていた。
勉強についていけなくなってたのだ。
中二の勉強をぜんぜんしていなかったオレが中三の勉強についけるわけも無く、不登校とまでは行かなかったが毎日遅刻して学校に行っていた。
しかし3学期は、4時間目終わりに学校に行って給食を食べ5、6時間目は寝ていた。
結果、通信表の英語や数学、国語の欄には「測定不可」と書かれていた。
そんなオレが高校入試を一発合格できたのは奇跡だろう。
受験前に塾に行ったおかげの方が大きいだろうが...


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「...さ...ん...」
「ショ..さ...ん...」
「ショ...ウ...さん...」
目を開けるとネラが心配そうな顔でオレを見ていた。
どうやら、オレは気を失って倒れて、今はネラのひざの上に居るらしい。
一瞬、ここは天国かと思ってしまった。
女性のひざの上は天国だと言っても過言では無いだろう...
そんなことはさておき...

「なにが起こった?状況は?さっきの敵は?」
普通に起き上がったオレを見て安心したのか、落ち着いたいつもの様子で質問に答えた。

「敵は全員ショウさんが倒されました。もう敵は来ないようです」

「そうか...オレは?どうしてここに?」
立ち上がったが体中が筋肉痛みたいに痛いし数箇所切り傷や打撲がある。

「森から逃げて来た敵を倒してこの場で倒れたので私が様子を見ていました」

「その時のオレの様子はどんな感じだった?」

「まるで別人のようでした」
そうか...やっぱり彼が...
どうやら、記憶とともに彼まで出てきたようだ。

「そういえば、姫様達は無事か?」

「はい」

「分かった、ネラは引き続き姫様達の護衛を頼む」

「分かりました」
ネラと一緒に姫様のところに行くとそこにはオレの出したシールドの中にミニメイドと一緒に居た。

「ショウさん、怪我は無いですか?」

「大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」
ふと、ミニメイドを見るとドヤ顔をして「ちゃんと守りましたよ!」「どうですか?」みたいなオーラを出している。
かわいい!実にかわいい!
取り合えず、ミニメイドを褒め頭をなでなですると満足したらしくピョンピョン飛び跳ねて消えていった。

「じゃ、オレは王のところに行ってくるから...」

「待ってください!回復魔法を掛けますので」

「おう、悪いな」
回復魔法を掛けてもらうと先ほどまでの筋肉痛のような痛みは無くなり、切り傷は消えたし体が軽くなったような気がした。

「ありがとう、楽になったよ」

「この場は頼んだぞ!」
この場はネラに任せて王の居る書斎へと急ぐ。
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