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死の草編 -本編-
先鋭、一丸となる。
しおりを挟むそれから初日にグループ分けをし、それぞれ研究・検証実験を行ったのでした。
1日目・2日目・3日目と、各グループはそれぞれ指定された実験や検証を行ったわけですが…
何故詳しく語らないかですか?
端折ったのか?
…検証実験の結果、上々のグループ・中々のグループ、残念なグループと別れ、この残念なグループが問題でした。
他のグループの足を引っ張ってみたり、邪魔をしていたりと、この3日?4日?国に選ばれた人間たちとは思えない所業があり、私は自身の実験検証業務に加え、そちらの処理にも時間を取られ、いっそ殺意すら湧くわけです。
私の殺意を引っ込めるためには、思い出さないことが一番。
よって、語りません。思い出しません。
と、そんな私の無の思考を、4日目の朝、この両者は踏みにじっているわけです。
([死の草研究]の冒頭と繋がります。)
無能研究者AとB。彼らがどんな凄い研究所から来たのか、興味もありません。
が、今日という日が始まり又研究実験に明け暮れる身としては、すぐにでも退出願おうと思っています。
では、彼らだけが残念グループの脱落者かと思うでしょ?
違うんですよ。
1日目に1組。2日目に1組。3日目に1組。各日、1組ずつ研究邸から退場を命じており、彼らは隔離棟に入れられて監視されています。
そりゃそうです。近衛兵が動いて軟禁?監禁?されているんですから、私たち。
そんな退場者を彼らは、1日目2日目3日目と目の当たりにしているはずなのに、何故私の前でこんなバカな言い争いが出来るのでしょう。
理解出来ません。よって、名前も経歴も記憶から抹消させて頂きます。
私は、青筋を浮かべて手を上げました。
すると彼ら無能研究者たちを監視している近衛兵さんたち2名が、朝食を摂る為に椅子に座る彼らの両腕を後ろから拘束し、そのまま馬鹿力ゴホンッ日々の鍛練の成果で、食堂室から連れ出し連行して行きました。
彼らは、「そんなっ!」とか「待ってくれ!」だとか叫んでいましたが、食堂室の扉が閉まると途端に静かになりました。
残ったのは真面目に検証実験に明け暮れ、生気と気力を引き換えに研究結果を出している出涸らしのような 研究者のみ。
その一人である私は、そっとため息を吐いたあと、残った彼らを見ました。
「さて、 掃除は完了しました。見込みより早くマーク対象者全員の処理ができました。それではここからが本番です。私たち残った者が、死の草を丸裸にし、“ただの草”にして差し上げましょう。
ファドモン所長とも話をしましたが、残り1週間でデータを揃え、解毒剤精製の着手に入ります。今日から、解毒剤精製班と反応紙又は液の作製班に別れます。よろしいですね?」
「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」
残ったのは、13人。
私の補助に1人入って、グループは6組。
3組ずつに別れる形で、うん、ちょうどいい。
「反応紙・液作製班は、出来うる限り早急に作り終えてください。作業が終わり次第、王立研究員に渡し、量産を開始します。そして解読剤作製班と合流します。私は、反応紙・液班に入り、陣頭指揮をします。では、今から名前を呼びます、呼ばれた者は、反応紙・液班です。
まず…………」
私は彼らの名前を呼んでいく。
この3日間、この残った研究者たちの技術・知識等を見させてもらい、グループ分けを新たに行うことにした。
相性もあるだろうから、そこも考慮しながら選んだつもりだった。
反応紙・液班の名前を呼び終わったあと、突然元気な声と手が上がった。
「はい!」
「?はい、リアードさん。」
彼は、藻の研究者ルーベンス博士のところの研究者だ。
手先も器用で、効率的な考え方。検証結果の報告も早い。
レンガ色の髪の毛は直毛で、眼力が強い男性。
試験管を持たせるより、剣を振り回している方が、似合っているような風貌である。
「私も反応紙・液班に入れてください!」
「…貴方は勘もいいし、要領もいい。知識等も申し分ない。貴方には、解毒剤班のリーダーになってもらいたいのだけど。」
「は、はい!?」
「私が反応紙・液の指揮を執っている間、貴方が解毒班をまとめていて欲しいと思っているのよ。言っておくけど、ここに残った研究者全員を私は評価し、信頼に足る人物だと思っている。優劣なんて着ける気もないわ。
けど、適材適所。
樹木の研究所から来ているゴクルさん。水の成分分析を得意としている研究所のトゥーリさん。着色剤研究所のパズさん。科学薬品精製を得意としている研究所からサブジャルさんと、別の研究所ですが同じく精製を得意とするバユースさん。花の研究所のルコバンさん。
そして他国薬学の研究所から来られたライディーさん。引き続き私の補佐をお願いします。
彼らは、ご自身の研究所で培われた研究知識から最短で反応紙・液の作製が可能になると判断しました。
そしてこれから解毒剤班として名前を呼ぶ方々は、技術・知識はもちろん。正確かつスピーディーなデータ集めが出来、他の研究者との連携も獲れる方々。
私たち反応紙・液班が合流する迄に、正確で有益なデータを上げてくれると信じています。
……なので、よろしいですか?リアードさん。」
斜め右に座るリアードさんと視線を合わせると、彼は少し戸惑ったような困ったような顔に変わり、その後、後頭部をワシャワシャとかき混ぜながら笑った。
「……正直いうと、反応紙・液の作製にも興味があり加わりたいですが、引きます。これからもご指導ご鞭撻願います。」
レンガ色の頭がバッと下がって、旋毛が見えた。
女の私にこんな礼儀を尽くしてくれる彼は、やはりジェントルな藻研究者ルーベンス博士の教え子と言ったところだ。
顎を引いて、頷くと改めて名前を呼ぶ。
「では、解毒剤班。リアードさん。タバタさん。ナナロさん。シニーさん。ゼロさん。ナゼームさん。解毒剤又は、それに準ずる無効化データの模索をお願いします。
ここからは、ファドモン所長が貴方達の元に付き、“死の草”も分析対象に上げます。この草の扱い時、ファドモン所長、バロン隊長監視下の元、ファドモン所長から試験管に一欠け渡す形を取ります。そして大本の死の草の重さと、お渡しする死の草の重さを管理します。
その後も直接手で触れず、ピンセット等器具を使い取り扱ってください。
我々の手元にあるのは、この“死の草”のみ。
他の薬品は薬草等も貴重なものはありますが、これは本当に代えが利きません。
……ただ、研究者の一人としては、ガンガンドバドバ検体を使って解明していきたい気持ちは分かります。」
そこで、口の端が少し上がってしまう。
すると、他の研究者も少し口角が上がっている。同士だと思う。
私は、改めて彼らに向き直った。
「本当は好奇心の赴くまま、沢山の実験を行使したいと思う気持ちは分かるつもりです。でも、今回はそれを許されていません。世紀を超えて人間を脅かし続けてきた危険な草なのです。
気を引き締め、己に課せられた義務を“何者にも危険なく”勧めます。宜しくお願いします。」
「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」
私たち研究者が一丸となった時に、一通の手紙が届いた。
差出人は、イデオン=サブウェル。
お気づきだろうか?
私に教師職を無茶振りされ、教師をするには結婚が必要と壁際まで(精神的に)追い込まれている彼である。
私は手紙の差出人を見て、彫刻のように見事に固まった。
後ろめたさしかない。
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