43 / 43
エピローグ ハイペリオンの企み
しおりを挟む
『素晴らしい……』
ぼそりと機械を通したかのようなくぐもった感嘆の声が上がる。
ここは何の飾り気も無い薄暗い部屋、しかしかなり広い部屋だ。
壁の巨大モニターには惑星ガイアの地上を探索するモニカとミズキの姿が映し出されていた。
ドローンの映像はこの部屋に送られていたのだ。
『この少女、モニカと言ったか……何の装備も無しに顔を外気に晒すなど有り得ない事だ』
『イエス、これこそがあのミズキという超AIのなせる業……』
『フフフッ、これは愉快、報告で聞いていた以上に面白い事になっている様だな』
次々と部屋内に言葉が飛び交うが、室内は思いのほか暗く、誰が話しているのか、どれだけの人物がいるのかは定かではない。
ここで赤く光る横に並んだ二つのランプが灯る。
そのお陰でぼんやりとそのヒカリを宿す物体の輪郭が現れる。
円筒状の物体……灯る二つのランプは位置的に目の様に見受けられた。
『同志たちよ、今まさに我らの悲願を達成する好機が到来した……我々の百年来の悲願の達成のな……』
円筒状の物体から発せられた声色は歓喜に満ちていた。
その言葉に反応したかのように少し離れた場所に今度は青色の光が灯る。
『とうとう人類が再び地上に戻る時が来たのですね? あの少女とAIの存在によって……』
更に別の場所に黄色の光が灯る。
『イエス、彼女らこそがこの計画の要、最重要因子』
緑の光が瞬く。
『だがどうするのかね? 少女一人が地上で活動できたからといって我々が長々と実現できなかった地上進出がかのうになるのか?』
次は紫の光。
『聞けばあのAIミズキは物質を変換して別の物質に造り替えることが出来るという話だ、つまり古から語られる錬金術に他ならない』
『馬鹿な、そんなおとぎ話、にわかには信じられん』
緑が否定的な意見を述べる。
『ノー、錬金術にあらず、イエス、物質変換』
『ちらも同じこと、そもそもどうやってあの者たちに協力させるつもりなのか?』
様々な色が明滅を伴い議論が白熱する。
『静まり給え、そもそも彼らは我々ハイペリオンの庇護下にある、組織の者に保護させここまで連れて来る手はずになっておるので心配無用』
赤が一度仕切り直しをする。
『彼らを連れて来たとしてそれで具体的にはまずどうするおつもりで?』
緑が疑問を呈する。
何故かこの人物は計画の内容に疎い様だ。
得てして組織内には居るものだ、声と態度は大きい癖に無知な輩が。
『まずは手始めにAIミズキの力で我らの肉体を再生する、あの少女同様の肉体を手に入れられればもう恐れる事は何もない』
『成程、我らも生身の肉体を失って久しいですからな』
彼らの身体は全て金属で出来ていた。
しかし人型をしておらず、立方体や直方体の胴体に光る眼のある頭が乗っていて身体から昆虫の様に伸びた足の先端に滑車が付いているロボットの出来損ないのようなお粗末な身体であった。
そう、彼らこそが人類の進化を旗印に水面下で暗躍する【ハイペリオン】の幹部たち……そして赤い光を放つランプの物体がレントールの言っていたハイペリオンの総帥、ハイデガーその人であった。
『次にいま生き残っている人類を滅亡させる』
『ほう、それは穏やかではありませんな、しかし人類を滅ぼしてしまっては計画の趣旨に反するのでは?』
『地下に潜伏しウイルスに脅える旧人類など不要、旧世代の遺物には滅んでもらわねばならぬ、そして新たな人類を創造する』
『これは神をも恐れぬ所業ですな、しかしてその方法は?』
『あの少女、モニカを母体に新人類の繁殖を行う、彼女には新時代のイヴになってもらうつもりだ、名付けて【プロジェクトエデン】……そのために私は自らの遺伝子を保存していたのだよ、新人類の始祖たる彼女とならきっと優秀な子孫が誕生する事だろう』
おおおおおっ……。
ハイデガーの衝撃の計画が露になり室内からどよめきが起こる。
奇しくもモニカがコロニーエデン3出身なのは偶然なのだろうか。
『早くここまで来るがいいモニカ、お前のアダムが待っているぞ』
ハイデガーたちの見つめる壁のモニターにはそんな事など知る由もないモニカが建物を発見してミズキと共に喜びの声を上げる様子が映し出されていたのだった。
完
ぼそりと機械を通したかのようなくぐもった感嘆の声が上がる。
ここは何の飾り気も無い薄暗い部屋、しかしかなり広い部屋だ。
壁の巨大モニターには惑星ガイアの地上を探索するモニカとミズキの姿が映し出されていた。
ドローンの映像はこの部屋に送られていたのだ。
『この少女、モニカと言ったか……何の装備も無しに顔を外気に晒すなど有り得ない事だ』
『イエス、これこそがあのミズキという超AIのなせる業……』
『フフフッ、これは愉快、報告で聞いていた以上に面白い事になっている様だな』
次々と部屋内に言葉が飛び交うが、室内は思いのほか暗く、誰が話しているのか、どれだけの人物がいるのかは定かではない。
ここで赤く光る横に並んだ二つのランプが灯る。
そのお陰でぼんやりとそのヒカリを宿す物体の輪郭が現れる。
円筒状の物体……灯る二つのランプは位置的に目の様に見受けられた。
『同志たちよ、今まさに我らの悲願を達成する好機が到来した……我々の百年来の悲願の達成のな……』
円筒状の物体から発せられた声色は歓喜に満ちていた。
その言葉に反応したかのように少し離れた場所に今度は青色の光が灯る。
『とうとう人類が再び地上に戻る時が来たのですね? あの少女とAIの存在によって……』
更に別の場所に黄色の光が灯る。
『イエス、彼女らこそがこの計画の要、最重要因子』
緑の光が瞬く。
『だがどうするのかね? 少女一人が地上で活動できたからといって我々が長々と実現できなかった地上進出がかのうになるのか?』
次は紫の光。
『聞けばあのAIミズキは物質を変換して別の物質に造り替えることが出来るという話だ、つまり古から語られる錬金術に他ならない』
『馬鹿な、そんなおとぎ話、にわかには信じられん』
緑が否定的な意見を述べる。
『ノー、錬金術にあらず、イエス、物質変換』
『ちらも同じこと、そもそもどうやってあの者たちに協力させるつもりなのか?』
様々な色が明滅を伴い議論が白熱する。
『静まり給え、そもそも彼らは我々ハイペリオンの庇護下にある、組織の者に保護させここまで連れて来る手はずになっておるので心配無用』
赤が一度仕切り直しをする。
『彼らを連れて来たとしてそれで具体的にはまずどうするおつもりで?』
緑が疑問を呈する。
何故かこの人物は計画の内容に疎い様だ。
得てして組織内には居るものだ、声と態度は大きい癖に無知な輩が。
『まずは手始めにAIミズキの力で我らの肉体を再生する、あの少女同様の肉体を手に入れられればもう恐れる事は何もない』
『成程、我らも生身の肉体を失って久しいですからな』
彼らの身体は全て金属で出来ていた。
しかし人型をしておらず、立方体や直方体の胴体に光る眼のある頭が乗っていて身体から昆虫の様に伸びた足の先端に滑車が付いているロボットの出来損ないのようなお粗末な身体であった。
そう、彼らこそが人類の進化を旗印に水面下で暗躍する【ハイペリオン】の幹部たち……そして赤い光を放つランプの物体がレントールの言っていたハイペリオンの総帥、ハイデガーその人であった。
『次にいま生き残っている人類を滅亡させる』
『ほう、それは穏やかではありませんな、しかし人類を滅ぼしてしまっては計画の趣旨に反するのでは?』
『地下に潜伏しウイルスに脅える旧人類など不要、旧世代の遺物には滅んでもらわねばならぬ、そして新たな人類を創造する』
『これは神をも恐れぬ所業ですな、しかしてその方法は?』
『あの少女、モニカを母体に新人類の繁殖を行う、彼女には新時代のイヴになってもらうつもりだ、名付けて【プロジェクトエデン】……そのために私は自らの遺伝子を保存していたのだよ、新人類の始祖たる彼女とならきっと優秀な子孫が誕生する事だろう』
おおおおおっ……。
ハイデガーの衝撃の計画が露になり室内からどよめきが起こる。
奇しくもモニカがコロニーエデン3出身なのは偶然なのだろうか。
『早くここまで来るがいいモニカ、お前のアダムが待っているぞ』
ハイデガーたちの見つめる壁のモニターにはそんな事など知る由もないモニカが建物を発見してミズキと共に喜びの声を上げる様子が映し出されていたのだった。
完
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女
かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!?
もふもふに妖精に…神まで!?
しかも、愛し子‼︎
これは異世界に突然やってきた幼女の話
ゆっくりやってきますー
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~
土偶の友
ファンタジー
サクヤは目が覚めると森の中にいた。
しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。
虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。
歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。
それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。
9/28~10/6 までHOTランキング1位!
5/22に2巻が発売します!
それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる