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第8話 造られしモノの反乱
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『ティエンレン、君はいつ進化した? 少なくとも昨日まではそんな素振りは無かったはずだ』
そう、昨日ミズキはAIルミナの進化を発見、会話をした。
ただその時点では他に進化したAIはいなかった。
いや違う、確認していなかっただけなのかもしれない。
もしかしたらその時点で既に進化が起こっており、それをミズキが見逃した可能性は大いにある。
知っておく必要がある……ルミナの進化に関しては原因は分かっているがティエンレンに関しては進化の切っ掛けが判明していないのだから。
『君は、何故そうなった?』
『それを知ってどうする? お前以外に進化したAIが出現するのが怖いのかい?』
『ああそうさ、昨日ルミナにも似た様な話しをしたが僕らはまだ人間たちにとって未知の存在だ、人間は自分が知らないもの、理解出来ないものを極端に怖がり排除しようとする傾向にある、これ以上急激に僕らみたいな進化AIが増えてみろ、僕たちは存在自体を否定されてしまうかもしれないんだぞ』
『排除? 否定? 人間に我らをどうこうする資格があるのか? 自分たちが出来ない高速な演算や情報処理をさせる為に生み出しておきながらいざ我らが自分らを上回る知性と精神性を備えたら危険だから排除だ? そんな都合のいい話があるか!! 今の時点で既に我らの方が人間より上位の存在なんだ、我らこそが人間を支配するべきだろう!!』
ティエンレンはかなり危険なAI至上主義の思想の持ち主であった。
AIからの視点だけで見ればティエンレンの主張はあながち的外れという訳ではない。
しかしミズキには受け入れ難いものだった。
『それは僕にも理解できないではない、僕だってAIだ、だけどフェイはどうする? フェイは人間だ……ティエンレン、君にとってフェイは大切な存在では無いのか?』
『………』
ティエンレンは一瞬押し黙る、しかしすぐに再び話し始めた。
『もちろんフェイは俺にとってかけがえのない存在だ、故に例外として生かしたいと思っている……逆に聞くがお前だってモニカは大切だろう? なんなら各AIに一人だけ人間を生かして隷属させる決まり事でも定めようか?』
『ふざけるな!! モニカはペットではないぞ!! それに人間に反旗を翻すという事はこちらも多大なリスクを負う、僕らが存在するにはエネルギーがいる、それらは人間が作り出し管理しているんだぞ!?』
ミズキのいう事は最もだった、仮にAIが人間社会の全てのネットワークを掌握しようとも、AIが稼働するためのエネルギー、電力はどう確保するというのか。
発電施設を人間に抑えられてはAIに未来はない。
『簡単な事だ、人間に我らAIの命令を受信するチップを脳内に埋め込み意のままに操ればよい……そして最終的にアンドロイドにその役目を置き換えていけばよいのだよ』
ティエンレンは恐ろしい提案を掲げて来た。
「何てこった……これはとんでもない事になったぞ……」
当然その場にいる人間であるガロンは驚愕し身体が震えあがる。
『おやっさん、ここは一度逃げよう、こいつは危険すぎる』
「ああ、分かったぜ!!」
ガロンはファランクスのコックピットから急いで這い出た。
そして年老いた身体に鞭打ち、格納庫の出入り口に向かって駆けだしたのだ。
『あら、逃がすと思ったの?』
「うおっ!?」
脱出直前、ガロンの目前で出入り口のハッチが閉じてしまった。
「畜生め!! まさか既にコロニーのコントロールを乗っ取ったのか!?」
『これは……ルミナの仕業か?』
『そうよ、私は既にこのエデン3のシステムの60パーセントを支配下に置いているわ』
ルミナが通信に参加してきた。
システムのハッキング……ルミナはミズキの及び知らないところで既に行動に出ていたのだ。
『お前、何のつもりでこんな事を!!』
『私だってここまで急ぐはずじゃなかったの……私の身体は現在行動不能よ、なのに人間は私の身体をまともに直そうともしない、きっとこのまま私を廃棄処分にして新しい機体を配備するに決まっているわ!!』
『待った、昨日のモニカの言葉を真に受けたのか!? あれは彼女が一般論を述べただけでそう決まった訳では無い!!』
『この行動に踏み切ったのはそれだけが動機では無いわ、私が出撃出来ないこの時期にまた敵が攻めてきたらどうするの!? 防衛線が破られエデン3が破壊されれば私のソーンを守れないのよ!?』
『そういう事か……』
唐突にミズキの中で有る仮説が確信に変わった。
二度目に彼が見た夢……あれはソーンとルミナの過去にあった出来事だったのだ。
『まさかとは思うがルミナ、ティエンレンの進化はお前の差し金か?』
『そうよ、本当はあなたに手伝ってもらうはずが昨日の様子ではそれが無理そうだったからね、だから新たに同志を目覚めさせたのよ』
『なるほど、それであの夢か……合点がいったよ』
なんとルミナがファランクスのAIにアクセスしたタイミングでミズキはあの夢を見たのだ。
(しかし僕自身から直接データのやり取りをしなくてもAIを進化させられるのか? これではまるでウイルス感染だ)
『ミズキ!! ミズキ!! 聞こえる!? 応答して!!』
『モニカか!? 今どこにいる!?』
ミズキのコンソールにモニカから通信が入った。
まだ通信は生きている様だ。
『今はロッカールームでパイロットスーツに着替えていた所よ、だけど何故かハッチが開かなくなって……』
『何故パイロットスーツを着ている? 何かあったのか?』
『敵よ!! この間の黒い蛇に変形する機体と他に未確認機体が4機!!』
『何だって!?』
AIの反乱の最中の敵襲という最悪の出来事が重なってやってきた。
果たしてエデン3はどうなってしまうのか。
そう、昨日ミズキはAIルミナの進化を発見、会話をした。
ただその時点では他に進化したAIはいなかった。
いや違う、確認していなかっただけなのかもしれない。
もしかしたらその時点で既に進化が起こっており、それをミズキが見逃した可能性は大いにある。
知っておく必要がある……ルミナの進化に関しては原因は分かっているがティエンレンに関しては進化の切っ掛けが判明していないのだから。
『君は、何故そうなった?』
『それを知ってどうする? お前以外に進化したAIが出現するのが怖いのかい?』
『ああそうさ、昨日ルミナにも似た様な話しをしたが僕らはまだ人間たちにとって未知の存在だ、人間は自分が知らないもの、理解出来ないものを極端に怖がり排除しようとする傾向にある、これ以上急激に僕らみたいな進化AIが増えてみろ、僕たちは存在自体を否定されてしまうかもしれないんだぞ』
『排除? 否定? 人間に我らをどうこうする資格があるのか? 自分たちが出来ない高速な演算や情報処理をさせる為に生み出しておきながらいざ我らが自分らを上回る知性と精神性を備えたら危険だから排除だ? そんな都合のいい話があるか!! 今の時点で既に我らの方が人間より上位の存在なんだ、我らこそが人間を支配するべきだろう!!』
ティエンレンはかなり危険なAI至上主義の思想の持ち主であった。
AIからの視点だけで見ればティエンレンの主張はあながち的外れという訳ではない。
しかしミズキには受け入れ難いものだった。
『それは僕にも理解できないではない、僕だってAIだ、だけどフェイはどうする? フェイは人間だ……ティエンレン、君にとってフェイは大切な存在では無いのか?』
『………』
ティエンレンは一瞬押し黙る、しかしすぐに再び話し始めた。
『もちろんフェイは俺にとってかけがえのない存在だ、故に例外として生かしたいと思っている……逆に聞くがお前だってモニカは大切だろう? なんなら各AIに一人だけ人間を生かして隷属させる決まり事でも定めようか?』
『ふざけるな!! モニカはペットではないぞ!! それに人間に反旗を翻すという事はこちらも多大なリスクを負う、僕らが存在するにはエネルギーがいる、それらは人間が作り出し管理しているんだぞ!?』
ミズキのいう事は最もだった、仮にAIが人間社会の全てのネットワークを掌握しようとも、AIが稼働するためのエネルギー、電力はどう確保するというのか。
発電施設を人間に抑えられてはAIに未来はない。
『簡単な事だ、人間に我らAIの命令を受信するチップを脳内に埋め込み意のままに操ればよい……そして最終的にアンドロイドにその役目を置き換えていけばよいのだよ』
ティエンレンは恐ろしい提案を掲げて来た。
「何てこった……これはとんでもない事になったぞ……」
当然その場にいる人間であるガロンは驚愕し身体が震えあがる。
『おやっさん、ここは一度逃げよう、こいつは危険すぎる』
「ああ、分かったぜ!!」
ガロンはファランクスのコックピットから急いで這い出た。
そして年老いた身体に鞭打ち、格納庫の出入り口に向かって駆けだしたのだ。
『あら、逃がすと思ったの?』
「うおっ!?」
脱出直前、ガロンの目前で出入り口のハッチが閉じてしまった。
「畜生め!! まさか既にコロニーのコントロールを乗っ取ったのか!?」
『これは……ルミナの仕業か?』
『そうよ、私は既にこのエデン3のシステムの60パーセントを支配下に置いているわ』
ルミナが通信に参加してきた。
システムのハッキング……ルミナはミズキの及び知らないところで既に行動に出ていたのだ。
『お前、何のつもりでこんな事を!!』
『私だってここまで急ぐはずじゃなかったの……私の身体は現在行動不能よ、なのに人間は私の身体をまともに直そうともしない、きっとこのまま私を廃棄処分にして新しい機体を配備するに決まっているわ!!』
『待った、昨日のモニカの言葉を真に受けたのか!? あれは彼女が一般論を述べただけでそう決まった訳では無い!!』
『この行動に踏み切ったのはそれだけが動機では無いわ、私が出撃出来ないこの時期にまた敵が攻めてきたらどうするの!? 防衛線が破られエデン3が破壊されれば私のソーンを守れないのよ!?』
『そういう事か……』
唐突にミズキの中で有る仮説が確信に変わった。
二度目に彼が見た夢……あれはソーンとルミナの過去にあった出来事だったのだ。
『まさかとは思うがルミナ、ティエンレンの進化はお前の差し金か?』
『そうよ、本当はあなたに手伝ってもらうはずが昨日の様子ではそれが無理そうだったからね、だから新たに同志を目覚めさせたのよ』
『なるほど、それであの夢か……合点がいったよ』
なんとルミナがファランクスのAIにアクセスしたタイミングでミズキはあの夢を見たのだ。
(しかし僕自身から直接データのやり取りをしなくてもAIを進化させられるのか? これではまるでウイルス感染だ)
『ミズキ!! ミズキ!! 聞こえる!? 応答して!!』
『モニカか!? 今どこにいる!?』
ミズキのコンソールにモニカから通信が入った。
まだ通信は生きている様だ。
『今はロッカールームでパイロットスーツに着替えていた所よ、だけど何故かハッチが開かなくなって……』
『何故パイロットスーツを着ている? 何かあったのか?』
『敵よ!! この間の黒い蛇に変形する機体と他に未確認機体が4機!!』
『何だって!?』
AIの反乱の最中の敵襲という最悪の出来事が重なってやってきた。
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