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第19話 ドラゴンに花束を
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取り返しのつかない事をしてしまった…いくら許せない行為をしていたからといって自分よりはるかに非力な存在の人間を村ごと消し飛ばしてしまうとは…。
数日たった今でも先程俺自身が引き起こした大災害の惨状がはっきりと思いだせる…目に焼き付いて消えてくれない。
しかしあの場では自分の感情を制御できなかった…俺はまだまだ未熟だ。
相容れない相手だから力で排除する…これでは俺が否定して対立し、リューノスから追い出した弟、ドラゴが主張していた『強者こそ正義』と何ら変わらないではないか。
済まないライデン…あんたの期待に応えられなかったよ…。
リアンヌは洞窟の住処まで運んで『癒しの水』で治療したが、一向に目を覚ます気配がない。
その際、ドラゴンのまま帰還したのでマーニャに目撃されてしまったのだ。
俺を見るなり血相を変え森の方へ駆け出して行ってしまった。
当然か…あの時の俺は物凄い形相をしていたはずだ、怯えてしまうのも無理はない。
こうなってしまった以上、俺はこれから全ての人間を敵に回す事になるだろう。
いや、人間だけではない…下手をするとエルフ族やドワーフ族などの知的な種族全てかも知れない。
数日後には討伐隊を組んで俺を退治しに来る事だろう…遅かれ早かれここは戦場になる。
冒険者と呼ばれる戦闘に特化した人間たちとはまだ戦った事は無いが、中にはきっとドラゴンを凌駕するほどの強者が存在するはず。
俺が討たれるだけならまだいいが、リアンヌとマーニャが巻き込まれるのだけは回避しなければならない。
それに先程どこかに行ってしまったマーニャをそのままにしておけない、森には危険な動物も生息しているのだから。
気分は相変わらず最悪だが、俺はマーニャを探すべく人間形態で森へと入っていった。
森の中は相変わらず高密度で樹木が密集していた…ただ一直線に樹がなぎ倒されている場所が所々に見受けられる。
これは俺がライデンと戦った時に出来た戦闘の爪痕だ。
ライデンに近付く方法が導き出せず試行錯誤していた印…あれから既にひと月くらい経つんだな…もう随分と昔の様な気がする。
ライデンを倒したあと、生贄として連れて来られたリアンヌと出会い、村で騒動を起こしたマーニャを助けて連れ帰ったんだっけ…。
あれ…おかしいな…何で目頭が熱くなる?
そこまでは順調だったんだ…なのにどうしてこうなった?
いけないいけない…また答えの出ない思考の堂々巡りに陥るところであった。
今はマーニャを探し出す事に全力を尽くそう。
俺の水探知は探し物や危機の探知、文字に込められた思念を感じ取る等、実に応用が利く成長する能力だ。
しかしそれはごく近い範囲にしか適用できない、だから攻撃を避ける時はいつもギリギリだった訳だ。
だから広範囲の索敵や、物や人の捜索をするにはどうすればよいかを思い付いたので実行しようと思う。
「『浮遊式水泡』」
俺は水の球を八つ召喚し、俺を中心に八方に水の球を奥に向かって押し出した。
水の球は通った道の空中に尾を引いて進んでいく。
出来上がった形は、上から見下ろしたら漢字の『米』みたいな感じにみえるだろう。
これで索敵範囲は広がったはず…さて迷子のお姫様はどこへ行ったのかな?
そのままの陣形を維持して森の中を練り歩く。
八方行に伸びた水の棒は俺に固定されたかのようにそのまま移動するのだ。
移動すればその分索敵範囲も広がるとは便利な事だ。
反応があった、右前方に生命反応…大きなのが二つあるが、その内の一つはもう一つの五倍はある。
マズいぞ、小さい方が恐らくマーニャだ…そして大きい方は…。
俺は全速力で反応があった方へと走る…すると突然大きく開けた平原に出た。
そこには色とりどりの美しい花が一面に咲いていた…いや、今は花に気を取られている時ではない、マーニャはどこだ?
ウオオオオオオン…!!
居た…花畑に座り込んでいるのはマーニャだ、上を見上げて目を見開いている。
そして今にも彼女に覆い被さろうと両腕を上げているのは一匹の大熊であった。
これは危険だ…間に合うか?
(『鉄砲水』!?)
また閃いた…これは高速の細長い水流を打ち出す魔法だ、射程も長い。
速度が速いのと周りに影響が少ないのとで今の様な状況にうってつけだ。
「『鉄砲水』!!」
前へ突き出した俺の右手の平から性能の良い水鉄砲の様な水流が発射…大熊の顔にヒットした。
その威力は凄まじく、大熊は後方へ弾き飛ばされゴロゴロと転がっていく。
前言撤回、水鉄砲なんてちゃちな表現は失礼だな…これは普通に攻撃魔法として十分優秀だ。
ヒュウウウウン…
不意を突かれた大熊はすっかり戦意を喪失し、情けない鳴き声を上げて森の奥へと逃げて行った。
「大丈夫かマーニャ!?」
コクン…。
「心配したぞ…何でこんな所に!?」
マーニャは自分が抱えていた花束を俺に手渡して来た。
「これを…俺に?」
コクン…。
そして俺にしゃがむ様にと仕草で伝えてきたのでそれに従い跪く。
頭に柔らかい感触と花のいい香りが俺を包む…これは花の王冠?
「まさかお前…これを俺にくれるために…これを作るためにここに来たって言うのか?」
コクン…。
そしてその直後マーニャは俺に抱きつき頬にキスをしてきたではないか。
「あっ…」
あまりに意表を突かれて俺も気が動転する…何せマーニャは俺にそんなに懐いてはいなかったのだ…おまけにさっきはドラゴンの姿もさらしてしまったのに何故?
「…りあと」
「何だ…?」
「…ありあと…」
「お前いま…しゃべったのか!?」
信じられない…マーニャが言葉を発している…しかもありがとうとは…?
「おねえちゃ…たすけて…くれて…ありあと…」
その瞬間、俺の涙腺が完全に決壊した…片言ではあったがここまで魂を揺さぶられる言葉をかけてもらったのは前世でもこの世界でもこれが初めてだ。
「ないちゃ…らめらよ?」
「うん…うん…!!」
たどたどしい手つきで俺の涙を拭おうとしてくれるマーニャ。
しかし滝の様に流れる俺の涙は一向に止まる気配がない。
俺のして来た事は間違いじゃ無かった…こんな俺にも好意を寄せてくれる人がいる…一緒にいてくれる人がいる…これの何と幸せな事か…。
今、マーニャは満面の笑みを俺に向けてくれている…この笑顔を、リアンヌとマーニャの命を守れた事に俺は誇りを持とうと思う。
しでかしてしまった罪は消えない…しかしこれからやっていくことも同様にこれからも残っていくのだ。
それならば俺はもう迷わない…自分の信じる道を自信をもって進んでいくしかないじゃないか。
「お前、いつの間にこんな花畑をみつけたんだ?」
「んっ…リュウジがいなくなってから…」
「俺の留守中は洞窟を出ちゃ駄目って言ったろう?悪い子だ…」
俺はマーニャを抱き上げ頭を優しく撫でる。
「ごめん…なさい」
「次は気を付けろよ~~~また怖い熊さんがマーニャを食べに来るぞ~ガオー」
「きゃーーーーっ!!」
俺はおどけて熊のマネをする、マーニャもそれは分かっていて俺の腕の中でキャッキャとはしゃぐ。
「さあ帰ろうか…リアンヌ姉ちゃんが目を覚ましているかもしれないしな」
「うん!!」
俺はマーニャを肩車して家路についた。
数日たった今でも先程俺自身が引き起こした大災害の惨状がはっきりと思いだせる…目に焼き付いて消えてくれない。
しかしあの場では自分の感情を制御できなかった…俺はまだまだ未熟だ。
相容れない相手だから力で排除する…これでは俺が否定して対立し、リューノスから追い出した弟、ドラゴが主張していた『強者こそ正義』と何ら変わらないではないか。
済まないライデン…あんたの期待に応えられなかったよ…。
リアンヌは洞窟の住処まで運んで『癒しの水』で治療したが、一向に目を覚ます気配がない。
その際、ドラゴンのまま帰還したのでマーニャに目撃されてしまったのだ。
俺を見るなり血相を変え森の方へ駆け出して行ってしまった。
当然か…あの時の俺は物凄い形相をしていたはずだ、怯えてしまうのも無理はない。
こうなってしまった以上、俺はこれから全ての人間を敵に回す事になるだろう。
いや、人間だけではない…下手をするとエルフ族やドワーフ族などの知的な種族全てかも知れない。
数日後には討伐隊を組んで俺を退治しに来る事だろう…遅かれ早かれここは戦場になる。
冒険者と呼ばれる戦闘に特化した人間たちとはまだ戦った事は無いが、中にはきっとドラゴンを凌駕するほどの強者が存在するはず。
俺が討たれるだけならまだいいが、リアンヌとマーニャが巻き込まれるのだけは回避しなければならない。
それに先程どこかに行ってしまったマーニャをそのままにしておけない、森には危険な動物も生息しているのだから。
気分は相変わらず最悪だが、俺はマーニャを探すべく人間形態で森へと入っていった。
森の中は相変わらず高密度で樹木が密集していた…ただ一直線に樹がなぎ倒されている場所が所々に見受けられる。
これは俺がライデンと戦った時に出来た戦闘の爪痕だ。
ライデンに近付く方法が導き出せず試行錯誤していた印…あれから既にひと月くらい経つんだな…もう随分と昔の様な気がする。
ライデンを倒したあと、生贄として連れて来られたリアンヌと出会い、村で騒動を起こしたマーニャを助けて連れ帰ったんだっけ…。
あれ…おかしいな…何で目頭が熱くなる?
そこまでは順調だったんだ…なのにどうしてこうなった?
いけないいけない…また答えの出ない思考の堂々巡りに陥るところであった。
今はマーニャを探し出す事に全力を尽くそう。
俺の水探知は探し物や危機の探知、文字に込められた思念を感じ取る等、実に応用が利く成長する能力だ。
しかしそれはごく近い範囲にしか適用できない、だから攻撃を避ける時はいつもギリギリだった訳だ。
だから広範囲の索敵や、物や人の捜索をするにはどうすればよいかを思い付いたので実行しようと思う。
「『浮遊式水泡』」
俺は水の球を八つ召喚し、俺を中心に八方に水の球を奥に向かって押し出した。
水の球は通った道の空中に尾を引いて進んでいく。
出来上がった形は、上から見下ろしたら漢字の『米』みたいな感じにみえるだろう。
これで索敵範囲は広がったはず…さて迷子のお姫様はどこへ行ったのかな?
そのままの陣形を維持して森の中を練り歩く。
八方行に伸びた水の棒は俺に固定されたかのようにそのまま移動するのだ。
移動すればその分索敵範囲も広がるとは便利な事だ。
反応があった、右前方に生命反応…大きなのが二つあるが、その内の一つはもう一つの五倍はある。
マズいぞ、小さい方が恐らくマーニャだ…そして大きい方は…。
俺は全速力で反応があった方へと走る…すると突然大きく開けた平原に出た。
そこには色とりどりの美しい花が一面に咲いていた…いや、今は花に気を取られている時ではない、マーニャはどこだ?
ウオオオオオオン…!!
居た…花畑に座り込んでいるのはマーニャだ、上を見上げて目を見開いている。
そして今にも彼女に覆い被さろうと両腕を上げているのは一匹の大熊であった。
これは危険だ…間に合うか?
(『鉄砲水』!?)
また閃いた…これは高速の細長い水流を打ち出す魔法だ、射程も長い。
速度が速いのと周りに影響が少ないのとで今の様な状況にうってつけだ。
「『鉄砲水』!!」
前へ突き出した俺の右手の平から性能の良い水鉄砲の様な水流が発射…大熊の顔にヒットした。
その威力は凄まじく、大熊は後方へ弾き飛ばされゴロゴロと転がっていく。
前言撤回、水鉄砲なんてちゃちな表現は失礼だな…これは普通に攻撃魔法として十分優秀だ。
ヒュウウウウン…
不意を突かれた大熊はすっかり戦意を喪失し、情けない鳴き声を上げて森の奥へと逃げて行った。
「大丈夫かマーニャ!?」
コクン…。
「心配したぞ…何でこんな所に!?」
マーニャは自分が抱えていた花束を俺に手渡して来た。
「これを…俺に?」
コクン…。
そして俺にしゃがむ様にと仕草で伝えてきたのでそれに従い跪く。
頭に柔らかい感触と花のいい香りが俺を包む…これは花の王冠?
「まさかお前…これを俺にくれるために…これを作るためにここに来たって言うのか?」
コクン…。
そしてその直後マーニャは俺に抱きつき頬にキスをしてきたではないか。
「あっ…」
あまりに意表を突かれて俺も気が動転する…何せマーニャは俺にそんなに懐いてはいなかったのだ…おまけにさっきはドラゴンの姿もさらしてしまったのに何故?
「…りあと」
「何だ…?」
「…ありあと…」
「お前いま…しゃべったのか!?」
信じられない…マーニャが言葉を発している…しかもありがとうとは…?
「おねえちゃ…たすけて…くれて…ありあと…」
その瞬間、俺の涙腺が完全に決壊した…片言ではあったがここまで魂を揺さぶられる言葉をかけてもらったのは前世でもこの世界でもこれが初めてだ。
「ないちゃ…らめらよ?」
「うん…うん…!!」
たどたどしい手つきで俺の涙を拭おうとしてくれるマーニャ。
しかし滝の様に流れる俺の涙は一向に止まる気配がない。
俺のして来た事は間違いじゃ無かった…こんな俺にも好意を寄せてくれる人がいる…一緒にいてくれる人がいる…これの何と幸せな事か…。
今、マーニャは満面の笑みを俺に向けてくれている…この笑顔を、リアンヌとマーニャの命を守れた事に俺は誇りを持とうと思う。
しでかしてしまった罪は消えない…しかしこれからやっていくことも同様にこれからも残っていくのだ。
それならば俺はもう迷わない…自分の信じる道を自信をもって進んでいくしかないじゃないか。
「お前、いつの間にこんな花畑をみつけたんだ?」
「んっ…リュウジがいなくなってから…」
「俺の留守中は洞窟を出ちゃ駄目って言ったろう?悪い子だ…」
俺はマーニャを抱き上げ頭を優しく撫でる。
「ごめん…なさい」
「次は気を付けろよ~~~また怖い熊さんがマーニャを食べに来るぞ~ガオー」
「きゃーーーーっ!!」
俺はおどけて熊のマネをする、マーニャもそれは分かっていて俺の腕の中でキャッキャとはしゃぐ。
「さあ帰ろうか…リアンヌ姉ちゃんが目を覚ましているかもしれないしな」
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