1 / 45
第1話 『完遂者』と呼ばれた男
しおりを挟む
俺はアクセル、冒険者だ。
これでも『完遂者』の二つ名を持っていて、拠点にしている街は勿論、近隣の町や村にもその名は知れ渡っている。
自分で言うのも何だがそれなりに有名人だ。
何で俺が『完遂者』って呼ばれているかだって?
それは受けた依頼は確実に熟し、どんな絶望的な状況からも生還するからだ。
これ以上有能な冒険者もいないだろう?
ただ、俺は依頼遂行にあたって他の冒険者と組む事は殆ど無い。
所謂ソロというやつだ。
何故一人で冒険するか……それは俺には他人に知られたくない秘密があった。
俺は死なない、いや死ねない身体の持ち主だからだ。
正確には死ぬ事は死ぬ……しかし時間経過で完全な状態で生き返るのだ。
例え身体を細切れにされようとも、業火に焼かれようとも、巨大モンスターに踏み潰されようともだ。
ただ、いつからそんな不死身の再生能力が俺に備わっていたのかは分からない。
幼い時に転んで派手に擦りむいた膝の傷跡は残っていて、その傷だけは何度死んで蘇っても消える事は無い。
その事から生まれながらにそうだった訳ではないらしい。
俺自身が覚えていないだけで何かしらの切っ掛けがあって不死身になったのかもしれない。
まあそう言った訳で、俺はこの身体の特性を生かし冒険者としてどんな依頼も完遂して来たって訳。
不死のお陰である程度の名声と、暮らすに困らないだけの富は得て来た訳だが、そろそろ限界を迎えている。
不死だからと言って身体に死ぬ程のダメージを受けた時は当たり前だが死ぬ程痛いし精神的にもキツイ。
あとこれが一番問題なのだが、一所に住んでいるとその若いまま変わらない容姿によって余計な噂が立つという事だ。
俺はこう見えて外見は二十代後半だが、三百年以上生きているのだ。
そろそろ拠点を変えるべきか……もしくはこのまま冒険者を引退するのもありかもしれない。
山奥でひっそりと暮らせば今の貯えならかなりの年月を暮らす事が出来る。
そもそも不死なので物を食べなくても死なないんだよな、空腹感は感じるが。
いや、待てよ……いっその事自分の身体の秘密を解き明かす旅に出てみるのも悪くない。
もし普通の人間に戻れるのなら……死ねる身体に戻れるのなら……。
よし、思い立ったが吉日。
俺はコートを纏い、冒険用の装備や食料が詰まったリュックを背負い、愛用の剣と持てるだけの金を肩掛けの袋にねじ込み住み慣れた家を飛び出した。
当てがある訳では無いがまずは西を目指す。
聞くところによると西の地方には『賢人』と呼ばれるあらゆる知識を修めた人物が住まう場所があるらしい。
その『賢人』なら俺を普通の人間に戻す方法を知っているかもしれない。
ただ誰もその『賢人』を見たことも会った者も居ないし、その場所に辿り着いた者もいない……だから存在自体が怪しまれてはいる。
だが他の奴に見つけられなくても俺には見つけられるかもしれない。
何せ俺は『完遂者』、不死身の冒険家……時間だけは際限無くあるのだから……。
これでも『完遂者』の二つ名を持っていて、拠点にしている街は勿論、近隣の町や村にもその名は知れ渡っている。
自分で言うのも何だがそれなりに有名人だ。
何で俺が『完遂者』って呼ばれているかだって?
それは受けた依頼は確実に熟し、どんな絶望的な状況からも生還するからだ。
これ以上有能な冒険者もいないだろう?
ただ、俺は依頼遂行にあたって他の冒険者と組む事は殆ど無い。
所謂ソロというやつだ。
何故一人で冒険するか……それは俺には他人に知られたくない秘密があった。
俺は死なない、いや死ねない身体の持ち主だからだ。
正確には死ぬ事は死ぬ……しかし時間経過で完全な状態で生き返るのだ。
例え身体を細切れにされようとも、業火に焼かれようとも、巨大モンスターに踏み潰されようともだ。
ただ、いつからそんな不死身の再生能力が俺に備わっていたのかは分からない。
幼い時に転んで派手に擦りむいた膝の傷跡は残っていて、その傷だけは何度死んで蘇っても消える事は無い。
その事から生まれながらにそうだった訳ではないらしい。
俺自身が覚えていないだけで何かしらの切っ掛けがあって不死身になったのかもしれない。
まあそう言った訳で、俺はこの身体の特性を生かし冒険者としてどんな依頼も完遂して来たって訳。
不死のお陰である程度の名声と、暮らすに困らないだけの富は得て来た訳だが、そろそろ限界を迎えている。
不死だからと言って身体に死ぬ程のダメージを受けた時は当たり前だが死ぬ程痛いし精神的にもキツイ。
あとこれが一番問題なのだが、一所に住んでいるとその若いまま変わらない容姿によって余計な噂が立つという事だ。
俺はこう見えて外見は二十代後半だが、三百年以上生きているのだ。
そろそろ拠点を変えるべきか……もしくはこのまま冒険者を引退するのもありかもしれない。
山奥でひっそりと暮らせば今の貯えならかなりの年月を暮らす事が出来る。
そもそも不死なので物を食べなくても死なないんだよな、空腹感は感じるが。
いや、待てよ……いっその事自分の身体の秘密を解き明かす旅に出てみるのも悪くない。
もし普通の人間に戻れるのなら……死ねる身体に戻れるのなら……。
よし、思い立ったが吉日。
俺はコートを纏い、冒険用の装備や食料が詰まったリュックを背負い、愛用の剣と持てるだけの金を肩掛けの袋にねじ込み住み慣れた家を飛び出した。
当てがある訳では無いがまずは西を目指す。
聞くところによると西の地方には『賢人』と呼ばれるあらゆる知識を修めた人物が住まう場所があるらしい。
その『賢人』なら俺を普通の人間に戻す方法を知っているかもしれない。
ただ誰もその『賢人』を見たことも会った者も居ないし、その場所に辿り着いた者もいない……だから存在自体が怪しまれてはいる。
だが他の奴に見つけられなくても俺には見つけられるかもしれない。
何せ俺は『完遂者』、不死身の冒険家……時間だけは際限無くあるのだから……。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる