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プロローグ 魔王との邂逅

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 「フハハハハハハ……!! よく来たな勇者とその一行!!」

 俺と三人の仲間の前には身の丈五メートル以上はありそうな大男が偉そうにふんぞり返り高笑いをしている。
 漆黒の外套を纏い、銀色の長い髪、青白い肌、鋭い眼光、避けた様に口角が吊り上がった牙の生えた口、極めつけは頭の両側に生えた立派な角……ファンタジーやRPGに出て来るテンプレ的コッテコテの魔王ルックである。
 そう、これは夢でも冗談でも無く現実に俺の目の前で起こっている事実。

「やい魔王!! 大人しく俺たちに倒されやがれ!!」

 勇敢にも最初に魔王に話し掛けたのは我がパーティーのリーダーにして勇者の『ガイア』
 こちらも炎の様に逆立ったボサボサの髪、宝玉の嵌ったヘッドガード、凛々しくも勇敢な眼差し、派手な装飾の施された鎧や防具、見るからに伝説の剣のチックな武器……こちらもザ・勇者といった出で立ちである。

「そうだ!! そうだ!! こんな茶番はもうウンザリなんだよ!!」

 ガイアに呼応するように腕を突き上げながら叫ぶ戦士『あんぱん』
 ふざけた名前だが自分でそう名乗っているんだから仕方がない、この世界に来て以来いい加減そう言った類の物事に突っ込む気力もない。
 あんぱんはずんぐりむっくりとしたがっしりとした体型で如何にも力がありそう、いや実際背丈より長いロングアックスはいとも簡単に岩をも砕く威力を発揮する。

「これで終わりにしましょう、いい加減家に帰らなければ愛する妻と子供たちが心配です」

 丁寧な言葉遣いの彼は修道士『とり天』
 所謂モンクという職業でパーティーメンバーの回復やサポートと自ら前線に立ち肉弾戦もこなせる頼もしい仲間である。
 その為戦士であるあんぱんとそん色ない筋肉質な身体をしている。
 特に防具らしいものは無く皮の装備で身を固めているのは身軽に動きたいからだそうだ。

 我々勇者パーティーのメンバーは四人、最後は俺な訳だがこんな学芸会みたいな三文芝居に付き合っていられない、特に話す事も無い。

「ほら!! 『ひとみん』も何か言ってやれ!!」

 勇者ガイアが俺に余計なパスを回して来やがった。
 だから何もいう事なんかないんだってば。

「女……何か言いたいことがあるなら聞いてやる、申してみよ」

 チッ、魔王まで便乗してきやがった、嫌で嫌で堪らないが展開上仕方ないのだろう。
 ならば……。

「わ……私たちが必ずあんたを倒してやるんだから!!」

 俺は恥ずかしさの余り顔から火が出て周りを火の海にしてしまうんじゃないかと思う程真っ赤になった。
 何を隠そう今の俺は魔王使い『ひとみん』
 大きな宝玉の嵌った魔法の杖、サイドテールに纏められた髪、大きくぱっちりとした瞳、小さく可愛らしい鼻と口、ひらっひらの可愛いらしい衣装にマントを纏っている少女の外見なのだ。
 何で俺だけこんな仕打ちを受けなければならないんだ……俺、何かした?

「まあそう急くな、お前達、私の手下になる気は無いか?」

「何だと!?」

「さすれば地上の半分をお前たちにくれてやるぞ?」

 こんな所までテンプレかよ時代錯誤も甚だしい。
 この申し出を受けたら最後、俺たちは振出しに戻るって寸法だろう?
 そこからも魔王と勇者の問答が続いていたが俺の頭には全く入って来なかった。

 どうしてこんな事になったんだっけ?
 そうだ、全てはあのスマホに届いたバイト募集広告のせいだ。

 あれは今からこちらの世界の暦で半年前の事……。
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