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第8話 ドラゴンは帰りたい
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竜人の女の子、ツルギとタマの口喧嘩を頭越しに聞きながら辿り着いたのはひと際豪奢な建物……いや城か宮殿と呼ぶべきか。
大きくて立派な門には両端に門番の兵士が立っているが、俺に同行している二人の娘はどちらもこの国の姫、カガミの従者なので門番も顔パスで通してくれた。
建物に入ると内装は和風の佇まいでどこかの高級旅館を彷彿とさせる。
「ここからは靴を脱いでくださいね」
玄関は軽く段になっておりそこからは先は土足厳禁らしい、益々旅館だなこれは。
廊下も壁に提灯や天狗の面などが飾り付けられ、一応和風で統一しようというコンセプトは見られるもののセンスがいいとは言い難かった……さすがに口に出しては言えないが。
この国の国王は余程日本贔屓なのだろう、何故ゼスティアに居ながら俺の世界の日本の事を知っているのかは謎だが。
俺の前を歩くタマとツルギがある襖の前で立ち止まる、どうやらここがカガミの居る部屋なのだろう。
「カガミ様、タク様をお連れしましたわ」
「ご苦労様タマ、入ってらっしゃいな」
二人は俺を挟むように並び、襖を開けた。
「先ほど振りねタク、お連れ様の容態はどう?」
「お陰様で命に別状はないよ、ありがとうカガミさん」
「それは重畳ね、連れてきた甲斐があったわ」
カガミは先ほどの冒険者スタイルではなく鶴をあしらった美しい和服を着ていた。
彼女からはどことなく艶っぽい色気を感じる……初めて見た時から美しい顔立ちだとは思っていたし、どちらかと言うと俺は彼女から活発な印象を受けていたのだが、着ている物でここまで変わるのか……やはり一国の姫なのだカガミは。
「何よ? 和服がそんなに珍しい?」
「いや、俺のいた国の伝統衣装は和服だよ、今でこそ限られた時期や場所でしか見られなくなったけどね」
「ふぅん、やっぱりあなたは転生者なのね、そうなんでしょう? 和服はそもそもここゼスティアには存在しない文化だもの、それを知っているあなたは……」
「………」
これはどう答えるべきだろう……ここで俺が転生者であると告白するのは果たして正しい選択なのだろうか?
ここゼスティアでは転生者はどういう位置づけなんだ?
転生者は珍しい存在なのか、普通に認知されている存在なのか……そこのところが分からない。
もし転生者が忌み嫌われるような存在なら俺は捕まえられた上に処刑されてしまうかもしれない。
いや待てよ、カガミたちナーガス王国が和風の文化を取り入れているという事は逆に俺は受け入れられるという事も考えられるか……。
それにしたって判断材料である情報が少なすぎる……俺の返答がこれから先の俺の未来を決定づけてしまうというなら慎重に答えを選ばなければならない。
「警戒しているのね? 安心して、あなたが転生者であっても特に何もする気は無いわ……どちらかと言うと歓迎よ、だって私のおじいさまがお喜びになるもの」
「えっ? それはどういう意味で?」
「だって、私のおじいさまである先代国王は転生者ですもの」
「何だって……? ドラゴンなんだよね? カガミのおじいさんは?」
「元は人間だったって言ってたわ、それも異世界のね……不慮の事故で命を落として気が付いたらドラゴンに生まれ変わっていたってね」
カガミの祖父は人間からドラゴンに生まれ変わったのか……そんな事も起こりえるのか?
俺も転生者なのは十中八九間違いは無いだろうが少なくとも前世と同じ記憶を持ち同じ姿に転生している、そのせいもあって文化の違いに戸惑う事が多かった。
かたや人間であった頃の記憶を持ったまま別の文化を成長と共に学ぶのはどちらがいいのだろうな。
「そこでタク、あなた私のおじいさまに会ってみたくはない?」
「えっ?」
「同じ転生者として聞いてみたい事があるんじゃないのかしら? 少なくとも無駄ってことにはならないと思うのだけれど」
折角の申し出だ、ジェイクの回復まで時間が掛かるというしここは彼女の祖父に会っておくのも悪くない……何か有力な情報を得られるかもしれないしな。
「分かったよ、こちらとしても願ってもない話しだ」
「そう、良かったわ……では早速行きましょうか」
カガミが奥の襖を開ける……すると今いる部屋とは打って変わって薄暗い和室が広がっていた。
しかもやたらと天井が高く、部屋を真横に遮る形で御簾が下がっていた。
そしてその御簾ごしに巨大なシルエットが透けて見える。
『話は付いたのか? 我が孫カガミよ……』
「ええ、おじい様……件のタク様をお連れしましてよ」
御簾の反対側に居る存在がしゃべっただけで腹に響く様な衝撃が伝わって来る。
これがカガミの祖父でありナーガス開国の祖、ドラゴンのリュウジなのだ。
「はっ、初めまして……タクと申します」
『そう畏まる事は無い、楽にするがよい』
「はっ、はい……」
そうは言われても無理がある、御簾越しの面会なのにこの威圧感と緊張感……子供なら泣き出すだろうし、犬猫なら失禁ものだろう。
「ここにいらっしゃるタク殿は日本文化を知っておられる様子、是非ともおじい様にお目通りを願いたいと思った次第です」
『ほう……そうであったか』
ダメだ、リュウジが一言話すだけで冷や汗が止まらない……この蛇に睨まれた蛙状態はいつまで続くんだ?
『カガミや、少し席をはずしてはくれぬか? タク殿と差し向かいで話しがしたい』
「はい、失礼します」
おいい!! 俺だけを残して行ってしまうのかカガミ姫!! と心の中で叫んでしまった。
あなたが居たからまだこの状況に耐えられたというのに。
俺の心の叫びは当然カガミには届かず、彼女はこの部屋から出て行ってしまった。
『さて……っと』
リュウジがそう言うと御簾越しに見えていた巨大な竜のシルエットは見る見る縮んでゆき、それと同時に部屋全体を支配していたあの重苦しい威圧感が一気に薄れていく……これはどういうことだ?
「いやぁ悪かったね、身内の前とは言えドラゴンの威厳を示さなければならなかったもので」
御簾を一杯飲み屋の暖簾のようにはぐりこちらへ来たのは気の良さそうな青年だった……シックな藍染めの和服を着ているが、肩まである髪の毛と額のバンダナのせいで若干軽く見えるくらいだ。
「改めまして僕はこの国の先代国王リュウジです」
「これはどうも、俺はタクです」
さて、どこから突っ込んだらいいんだろう、聞きたいことが山ほどある。
「失礼ですがリュウジ様は転生者だというのは本当なのですか?」
「ああ、そんなに畏まらなくていいよ、僕の事はリュウジと呼び捨てでいい」
そう言う訳にはいかないでしょう、もし他の竜人に聞かれたら不敬罪で処刑されかねない。
「それじゃあリュウジさんで……」
「う~~~ん、他人行儀なのはあまり好きではないんだけど君の奥ゆかしい性格を尊重してそれで良しとしようか」
「はぁ……」
このフランクさが逆に不気味だなぁ、後で何もなければいいが。
「では最初の質問に答えようか、答えはもちろんイエス、僕も転生者さ……そして転移者でもある」
「転生者は分かりますが転移者でもある? それは一体どういう事です?」
「分かり辛いよね、順を追って説明すると僕は元々人間としてとある世界で生活していたんだけどある事故で死んでしまってね、転生してドラゴンに生まれ変わったんだ、その時居たのがドラゴニアって世界なんだけど……」
「ドラゴニア? ゼスティアではないんですか?」
「まあ焦らないで、まだ話しは途中なんだ」
「済みません……」
「いや、君のはやる気持ちも分かるよ」
危ない危ない、彼の機嫌を損ねてしまっては元も子もない。
「そしてそのドラゴニアで僕は大冒険をする事になったんだ、その時に今は無き妻リアンヌと出会って子を儲けた……ちなみにその娘ミコトが今の国王なんだけどね」
「そうですか」
現国王という事はカガミの親御さんという事だな、一体どんな人物なのだろう。
「それからも各地を転々と渡り歩き、遂に僕は竜人と迫害されている他種族をまとめて国を興したんだ、それが最初のナーガス王国さ」
「最初……ですか?」
「そう最初さ、そしてやっと国として安定した時に有る事が起こった……国ごとこのゼスティアに転移してしまったんだ」
「国ごと!?」
「ああ国ごと、建物と土地ごとまるまるこの世界にね、そのままだと色々な不利益が有ったのでこの滝の裏の洞窟内に新たに国を移転させた、それが第二のナーガス王国だ……そして転移してしまった原因は未だ分かっていない……だけど諦めずにドラゴニアに戻る方法を模索しているんだけど結果は僕らがここにまだいるってことで分かってもらえると思う、もう十年はここに居るよ」
そうか、まだ元の世界に戻る方法は確立できていないんだな。
「僕が自分を転生者であり転移者だと言った事が分かってもらえたかな?」
「はい、余りにも話しが壮大過ぎて付いていけないところがありましたけど」
「ははっ、君は正直だね……実はドラゴニアにはもう一人の娘マーニャに分国したスイレン王国があるんだが、今頃あの子はどうしているだろう……」
リュウジは淋しそうに遠くを見つめた……帰りたいんだな元の世界に。
その気持ちは俺にも痛いほど分かる。
「そしてここからが本題なんだけど……タク、聞いてくれるかい?」
「はい、何でしょう?」
「僕らと君は実に似通った境遇にある、これからは協力し合わないか?」
「協力ですか」
「そう、情報交換さ……こちらは今まで培ったこちらでの経験に元ずく情報を……君は元の世界に居た時の状況とこの世界で得た情報をお互い共有しようじゃないか、この世界から元の世界に戻るために……君にとっても悪い話しではないだろう?」
リュウジの申し出に対し俺は少し考えを巡らせた。
リュウジたち竜人とナーガス王国は元のドラゴニアに戻れれば最初は様々な問題が起ころうとも時間を掛ければ元の生活を取り戻せることだろう。
一方俺は死んで元の世界を離れた身、元の世界に戻ったとして今まで通りの生活に戻れる保証はない。
恐らく葬式も終わって身体は荼毘に付されているはずだから生き返れるのかも怪しい。
しかし出来ないとも決まった訳では無い、どうせこの世界で普通に働いて普通に生涯を終えるくらいなら多少危ない橋を渡るのも悪くない。
そして俺の出した結論は……。
「それは願ってもない話しです!! 是非お願いします!!」
「そうか、これで君と僕らは同盟関係を結んだことになる、以後よろしく」
「はい!!」
俺とリュウジは固く握手を交わした。
大きくて立派な門には両端に門番の兵士が立っているが、俺に同行している二人の娘はどちらもこの国の姫、カガミの従者なので門番も顔パスで通してくれた。
建物に入ると内装は和風の佇まいでどこかの高級旅館を彷彿とさせる。
「ここからは靴を脱いでくださいね」
玄関は軽く段になっておりそこからは先は土足厳禁らしい、益々旅館だなこれは。
廊下も壁に提灯や天狗の面などが飾り付けられ、一応和風で統一しようというコンセプトは見られるもののセンスがいいとは言い難かった……さすがに口に出しては言えないが。
この国の国王は余程日本贔屓なのだろう、何故ゼスティアに居ながら俺の世界の日本の事を知っているのかは謎だが。
俺の前を歩くタマとツルギがある襖の前で立ち止まる、どうやらここがカガミの居る部屋なのだろう。
「カガミ様、タク様をお連れしましたわ」
「ご苦労様タマ、入ってらっしゃいな」
二人は俺を挟むように並び、襖を開けた。
「先ほど振りねタク、お連れ様の容態はどう?」
「お陰様で命に別状はないよ、ありがとうカガミさん」
「それは重畳ね、連れてきた甲斐があったわ」
カガミは先ほどの冒険者スタイルではなく鶴をあしらった美しい和服を着ていた。
彼女からはどことなく艶っぽい色気を感じる……初めて見た時から美しい顔立ちだとは思っていたし、どちらかと言うと俺は彼女から活発な印象を受けていたのだが、着ている物でここまで変わるのか……やはり一国の姫なのだカガミは。
「何よ? 和服がそんなに珍しい?」
「いや、俺のいた国の伝統衣装は和服だよ、今でこそ限られた時期や場所でしか見られなくなったけどね」
「ふぅん、やっぱりあなたは転生者なのね、そうなんでしょう? 和服はそもそもここゼスティアには存在しない文化だもの、それを知っているあなたは……」
「………」
これはどう答えるべきだろう……ここで俺が転生者であると告白するのは果たして正しい選択なのだろうか?
ここゼスティアでは転生者はどういう位置づけなんだ?
転生者は珍しい存在なのか、普通に認知されている存在なのか……そこのところが分からない。
もし転生者が忌み嫌われるような存在なら俺は捕まえられた上に処刑されてしまうかもしれない。
いや待てよ、カガミたちナーガス王国が和風の文化を取り入れているという事は逆に俺は受け入れられるという事も考えられるか……。
それにしたって判断材料である情報が少なすぎる……俺の返答がこれから先の俺の未来を決定づけてしまうというなら慎重に答えを選ばなければならない。
「警戒しているのね? 安心して、あなたが転生者であっても特に何もする気は無いわ……どちらかと言うと歓迎よ、だって私のおじいさまがお喜びになるもの」
「えっ? それはどういう意味で?」
「だって、私のおじいさまである先代国王は転生者ですもの」
「何だって……? ドラゴンなんだよね? カガミのおじいさんは?」
「元は人間だったって言ってたわ、それも異世界のね……不慮の事故で命を落として気が付いたらドラゴンに生まれ変わっていたってね」
カガミの祖父は人間からドラゴンに生まれ変わったのか……そんな事も起こりえるのか?
俺も転生者なのは十中八九間違いは無いだろうが少なくとも前世と同じ記憶を持ち同じ姿に転生している、そのせいもあって文化の違いに戸惑う事が多かった。
かたや人間であった頃の記憶を持ったまま別の文化を成長と共に学ぶのはどちらがいいのだろうな。
「そこでタク、あなた私のおじいさまに会ってみたくはない?」
「えっ?」
「同じ転生者として聞いてみたい事があるんじゃないのかしら? 少なくとも無駄ってことにはならないと思うのだけれど」
折角の申し出だ、ジェイクの回復まで時間が掛かるというしここは彼女の祖父に会っておくのも悪くない……何か有力な情報を得られるかもしれないしな。
「分かったよ、こちらとしても願ってもない話しだ」
「そう、良かったわ……では早速行きましょうか」
カガミが奥の襖を開ける……すると今いる部屋とは打って変わって薄暗い和室が広がっていた。
しかもやたらと天井が高く、部屋を真横に遮る形で御簾が下がっていた。
そしてその御簾ごしに巨大なシルエットが透けて見える。
『話は付いたのか? 我が孫カガミよ……』
「ええ、おじい様……件のタク様をお連れしましてよ」
御簾の反対側に居る存在がしゃべっただけで腹に響く様な衝撃が伝わって来る。
これがカガミの祖父でありナーガス開国の祖、ドラゴンのリュウジなのだ。
「はっ、初めまして……タクと申します」
『そう畏まる事は無い、楽にするがよい』
「はっ、はい……」
そうは言われても無理がある、御簾越しの面会なのにこの威圧感と緊張感……子供なら泣き出すだろうし、犬猫なら失禁ものだろう。
「ここにいらっしゃるタク殿は日本文化を知っておられる様子、是非ともおじい様にお目通りを願いたいと思った次第です」
『ほう……そうであったか』
ダメだ、リュウジが一言話すだけで冷や汗が止まらない……この蛇に睨まれた蛙状態はいつまで続くんだ?
『カガミや、少し席をはずしてはくれぬか? タク殿と差し向かいで話しがしたい』
「はい、失礼します」
おいい!! 俺だけを残して行ってしまうのかカガミ姫!! と心の中で叫んでしまった。
あなたが居たからまだこの状況に耐えられたというのに。
俺の心の叫びは当然カガミには届かず、彼女はこの部屋から出て行ってしまった。
『さて……っと』
リュウジがそう言うと御簾越しに見えていた巨大な竜のシルエットは見る見る縮んでゆき、それと同時に部屋全体を支配していたあの重苦しい威圧感が一気に薄れていく……これはどういうことだ?
「いやぁ悪かったね、身内の前とは言えドラゴンの威厳を示さなければならなかったもので」
御簾を一杯飲み屋の暖簾のようにはぐりこちらへ来たのは気の良さそうな青年だった……シックな藍染めの和服を着ているが、肩まである髪の毛と額のバンダナのせいで若干軽く見えるくらいだ。
「改めまして僕はこの国の先代国王リュウジです」
「これはどうも、俺はタクです」
さて、どこから突っ込んだらいいんだろう、聞きたいことが山ほどある。
「失礼ですがリュウジ様は転生者だというのは本当なのですか?」
「ああ、そんなに畏まらなくていいよ、僕の事はリュウジと呼び捨てでいい」
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「はぁ……」
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「では最初の質問に答えようか、答えはもちろんイエス、僕も転生者さ……そして転移者でもある」
「転生者は分かりますが転移者でもある? それは一体どういう事です?」
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「ドラゴニア? ゼスティアではないんですか?」
「まあ焦らないで、まだ話しは途中なんだ」
「済みません……」
「いや、君のはやる気持ちも分かるよ」
危ない危ない、彼の機嫌を損ねてしまっては元も子もない。
「そしてそのドラゴニアで僕は大冒険をする事になったんだ、その時に今は無き妻リアンヌと出会って子を儲けた……ちなみにその娘ミコトが今の国王なんだけどね」
「そうですか」
現国王という事はカガミの親御さんという事だな、一体どんな人物なのだろう。
「それからも各地を転々と渡り歩き、遂に僕は竜人と迫害されている他種族をまとめて国を興したんだ、それが最初のナーガス王国さ」
「最初……ですか?」
「そう最初さ、そしてやっと国として安定した時に有る事が起こった……国ごとこのゼスティアに転移してしまったんだ」
「国ごと!?」
「ああ国ごと、建物と土地ごとまるまるこの世界にね、そのままだと色々な不利益が有ったのでこの滝の裏の洞窟内に新たに国を移転させた、それが第二のナーガス王国だ……そして転移してしまった原因は未だ分かっていない……だけど諦めずにドラゴニアに戻る方法を模索しているんだけど結果は僕らがここにまだいるってことで分かってもらえると思う、もう十年はここに居るよ」
そうか、まだ元の世界に戻る方法は確立できていないんだな。
「僕が自分を転生者であり転移者だと言った事が分かってもらえたかな?」
「はい、余りにも話しが壮大過ぎて付いていけないところがありましたけど」
「ははっ、君は正直だね……実はドラゴニアにはもう一人の娘マーニャに分国したスイレン王国があるんだが、今頃あの子はどうしているだろう……」
リュウジは淋しそうに遠くを見つめた……帰りたいんだな元の世界に。
その気持ちは俺にも痛いほど分かる。
「そしてここからが本題なんだけど……タク、聞いてくれるかい?」
「はい、何でしょう?」
「僕らと君は実に似通った境遇にある、これからは協力し合わないか?」
「協力ですか」
「そう、情報交換さ……こちらは今まで培ったこちらでの経験に元ずく情報を……君は元の世界に居た時の状況とこの世界で得た情報をお互い共有しようじゃないか、この世界から元の世界に戻るために……君にとっても悪い話しではないだろう?」
リュウジの申し出に対し俺は少し考えを巡らせた。
リュウジたち竜人とナーガス王国は元のドラゴニアに戻れれば最初は様々な問題が起ころうとも時間を掛ければ元の生活を取り戻せることだろう。
一方俺は死んで元の世界を離れた身、元の世界に戻ったとして今まで通りの生活に戻れる保証はない。
恐らく葬式も終わって身体は荼毘に付されているはずだから生き返れるのかも怪しい。
しかし出来ないとも決まった訳では無い、どうせこの世界で普通に働いて普通に生涯を終えるくらいなら多少危ない橋を渡るのも悪くない。
そして俺の出した結論は……。
「それは願ってもない話しです!! 是非お願いします!!」
「そうか、これで君と僕らは同盟関係を結んだことになる、以後よろしく」
「はい!!」
俺とリュウジは固く握手を交わした。
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