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最終話 噂話
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洞窟から出ると眩しい日差しがライアンの表情を歪める。
外は既に日が傾いていたが西日はまだまだ力強かった。
一陣の風が彼女のスカートをはためかせる。
「……これからどうしようか……あ、もう話しかける相手はいないんだっけ……」
ついいつもの様に思っている事を口ずさんでしまうがもうライアンの周りに四元徳の装備は存在しないのである。
ふと手元の亀裂の走った生命の宝玉を優しい眼差しで愛でる様に見つめる。
「ルシアン……」
ルシアンの魂が内在している筈の生命の玉も彼女に答えてはくれない。
しかしここで予想外の出来事が起こった、生命の玉の亀裂が独りでに広がり出したのだ。
「そんな!! 割れてしまうっていうのかい!? まだルシアンの魂を移す依り代も方法も分かっていないのに!!」
尚も続く亀裂の拡大、このままでは完全に二つに分割されるのも時間の問題だ。
「どうしようどうしよう!! このままじゃルシアンが……!!」
おどおどと右往左往するライアン。
対処しようにももう助言をくれる知恵はいないのだ。
「あ、そうだ……」
ライアンの脳裏にある出来事がフラッシュバックする。
「正義の盾の修復の時、一時的に盾にジャスティスとルシアンの魂が同時に入っていたことがあった……暫くの間なら他人の身体に魂をうつせるんじゃないか?」
生命の玉と自分の胸元を交互に見つめ、意を決したようにライアンは命の宝玉を胸に押し当てた。
「お願い!! ルシアンの魂よ俺の身体に移って!!」
ライアンの願いに生命の宝玉が応えた、以前魂を移したときに比べ限りなく弱々しいが薄紅色の光を放ったのだ。
光はライアンの胸に吸い込まれる様に消えていく。
直後、生命の玉は力尽きた様に真っ二つに割れたのだ。
「ふぅ……危なかった……」
緊張感と力が抜けがっくりと地面に膝をつく。
(ブライアン? これは一体どういう事?)
ライアンの頭の中に女性の声が呼び掛けてきた。
「!! ルシアンかい!? 無事でよかったよ!!」
(うんありがとう、それよりどうして私はあなたの身体の中に居るの?)
「それはね、生命の宝玉が割れそうになったから咄嗟に中に居る君の魂を俺の身体に移したんだよ」
(えっ!? そんな事をしてあなたの身体は大丈夫なの!? 前にもあったじゃない、一つの器に魂は二つ共存できないって!! 最悪どちらかの魂が消えてしまうって!!)
「そうだね、それでも君の魂が消えてしまうなんて俺は到底受け入れる事は出来ない、例え俺の魂の方が消えてしまおうともね」
(ブライアン……ごめんなさい……ううっ……)
ルシアンのすすり泣く声が聞こえる。
「大丈夫、今の状態は応急的な物、何か症状が起こる前に君の新しい身体を見付けられたら何とかなる筈だ……生命の玉が失われて魂を移す方法が今は無くても必ず代わりの方法を見つけ出して見せるさ!!」
(ブライアン……)
「そうと決まれば早く近くの町に行こう、全てはそこからだ!!」
(うん……!!)
ライアンの力強い言葉にルシアンも希望を持つことにしたのであった。
数年後……。
「なあ聞いたか? 新しくこの街に現れた女戦士の話」
「ああ聞いたぜ、物凄く腕が立つ上にかなりの別嬪さんなんだってな、俺の所属ギルドでもその話題で持ちきりよ」
屈強な男たちが酒場のテーブルを囲み酒盛りをしながら噂話に花を咲かせている。
「聞く所によると気配を察するの能力が尋常じゃないらしい、よそ者にデカい顔されてたまるかとその女戦士を闇討ちをしようと彼女をつけたしたけしからん冒険者ギルドの連中が居たらしいんだがかなり離れた所で尾行がバレた上に十数人がかりでも太刀打ちできなかったらしい、隙が無さ過ぎて背中にも目が付いてるんじゃないかって専らの噂だぜ」
「へぇ」
「昨日もソロで紅鎧竜を狩って来たって話だ、おっそろしいねぇ」
「化け物じゃねぇかその女!! いくら別嬪でも近付きたくねぇ!!」
「んでその女戦士、名前は何て言うんだい?」
「ああ、確かその女戦士の名前は確か……」
END
外は既に日が傾いていたが西日はまだまだ力強かった。
一陣の風が彼女のスカートをはためかせる。
「……これからどうしようか……あ、もう話しかける相手はいないんだっけ……」
ついいつもの様に思っている事を口ずさんでしまうがもうライアンの周りに四元徳の装備は存在しないのである。
ふと手元の亀裂の走った生命の宝玉を優しい眼差しで愛でる様に見つめる。
「ルシアン……」
ルシアンの魂が内在している筈の生命の玉も彼女に答えてはくれない。
しかしここで予想外の出来事が起こった、生命の玉の亀裂が独りでに広がり出したのだ。
「そんな!! 割れてしまうっていうのかい!? まだルシアンの魂を移す依り代も方法も分かっていないのに!!」
尚も続く亀裂の拡大、このままでは完全に二つに分割されるのも時間の問題だ。
「どうしようどうしよう!! このままじゃルシアンが……!!」
おどおどと右往左往するライアン。
対処しようにももう助言をくれる知恵はいないのだ。
「あ、そうだ……」
ライアンの脳裏にある出来事がフラッシュバックする。
「正義の盾の修復の時、一時的に盾にジャスティスとルシアンの魂が同時に入っていたことがあった……暫くの間なら他人の身体に魂をうつせるんじゃないか?」
生命の玉と自分の胸元を交互に見つめ、意を決したようにライアンは命の宝玉を胸に押し当てた。
「お願い!! ルシアンの魂よ俺の身体に移って!!」
ライアンの願いに生命の宝玉が応えた、以前魂を移したときに比べ限りなく弱々しいが薄紅色の光を放ったのだ。
光はライアンの胸に吸い込まれる様に消えていく。
直後、生命の玉は力尽きた様に真っ二つに割れたのだ。
「ふぅ……危なかった……」
緊張感と力が抜けがっくりと地面に膝をつく。
(ブライアン? これは一体どういう事?)
ライアンの頭の中に女性の声が呼び掛けてきた。
「!! ルシアンかい!? 無事でよかったよ!!」
(うんありがとう、それよりどうして私はあなたの身体の中に居るの?)
「それはね、生命の宝玉が割れそうになったから咄嗟に中に居る君の魂を俺の身体に移したんだよ」
(えっ!? そんな事をしてあなたの身体は大丈夫なの!? 前にもあったじゃない、一つの器に魂は二つ共存できないって!! 最悪どちらかの魂が消えてしまうって!!)
「そうだね、それでも君の魂が消えてしまうなんて俺は到底受け入れる事は出来ない、例え俺の魂の方が消えてしまおうともね」
(ブライアン……ごめんなさい……ううっ……)
ルシアンのすすり泣く声が聞こえる。
「大丈夫、今の状態は応急的な物、何か症状が起こる前に君の新しい身体を見付けられたら何とかなる筈だ……生命の玉が失われて魂を移す方法が今は無くても必ず代わりの方法を見つけ出して見せるさ!!」
(ブライアン……)
「そうと決まれば早く近くの町に行こう、全てはそこからだ!!」
(うん……!!)
ライアンの力強い言葉にルシアンも希望を持つことにしたのであった。
数年後……。
「なあ聞いたか? 新しくこの街に現れた女戦士の話」
「ああ聞いたぜ、物凄く腕が立つ上にかなりの別嬪さんなんだってな、俺の所属ギルドでもその話題で持ちきりよ」
屈強な男たちが酒場のテーブルを囲み酒盛りをしながら噂話に花を咲かせている。
「聞く所によると気配を察するの能力が尋常じゃないらしい、よそ者にデカい顔されてたまるかとその女戦士を闇討ちをしようと彼女をつけたしたけしからん冒険者ギルドの連中が居たらしいんだがかなり離れた所で尾行がバレた上に十数人がかりでも太刀打ちできなかったらしい、隙が無さ過ぎて背中にも目が付いてるんじゃないかって専らの噂だぜ」
「へぇ」
「昨日もソロで紅鎧竜を狩って来たって話だ、おっそろしいねぇ」
「化け物じゃねぇかその女!! いくら別嬪でも近付きたくねぇ!!」
「んでその女戦士、名前は何て言うんだい?」
「ああ、確かその女戦士の名前は確か……」
END
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