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第9話 第三の生きている装備(リビングイクイップ)
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『滅せよ!!』
ガランドゥが鎧内から噴出する黒い霧を手にしたランスに纏わせライアンに向けてもう突進してくる。
「危ない!!」
咄嗟に体を躱すライアンであったが左の脇腹にランスの先が掠ってしまった。
脇腹には横に線の様な傷が付き、そこにはあの黒い霧が燻る様にまとわりついていた。
「いつっ……何だこれ……?」
焼ける様な痛みを感じる、しかし妙だ、前に崖から落ちた時に打った尻の時と違いいつまでも痛みが残っている。
『ライアン!! あいつの攻撃を受けたらダメだべ!! あいつの攻撃には暗黒瘴気が纏わさっとる!!』
「暗黒瘴気!? 何それ!?」
勇気の言った聞き慣れない言葉に戸惑うライアン。
『暗黒瘴気とは闇の魔力や人間の負の感情などマイナス方向に力を発揮する力だべ!! あれを喰らったらいくらおめぇさんが知恵の加護を受けていたとしてもあぶねぇぞ!!』
「そうか、前にウィズダムが言っていた特別な力が込められた攻撃ってこういう事なんだね!! ウィズダム?」
ライアンの呼び掛けに返事をしない知恵。
『ああ……ああ……』
ただうわ言の様に呻くのみだ。
「一体どうしちゃったのよ!? ウィズダム!?」
『ライアン、今はウィズダムに構うな!!』
「えっ? だって……」
『だってもあさってもねぇ!! 今は戦いに集中しろ!!』
「わっ、分かったよもう」
ガキィン!!
ガランドゥの突きを勇気の剣が受け止め受け流す。
『うぐぐっ、重めぇ……!!』
「あぐっ……!!」
ガランドゥのランスは速さだけでは無く威力もあった。
その刺突の強さによりライアンの腕が痺れる。
「どうして? 確かこのビキニアーマーを着ている間は痛みを感じないんじゃなかったの?」
『今のウィズダムを当てにすんな!! おかしくなっちまってるせいで加護が弱まってるだ!!』
「何よそれ!!」
尚を襲い掛かって来る突撃を何とか裁く。
やはり痛みを伴った痺れはライアンの腕に伝わって来る。
遂に耐え切れなくなり地面に倒れ込む。
「きゃっ……!!」
『ハハハッ!! それ見た事か!! やはり紛い物は紛い物だな!! 貴様に出し抜かれて以降碌な事が無かったが魔王ゾンダイク様に仕えて正解だったぜ!! こうして因縁の相手である貴様と巡り会い打ちのめす事が出来るのだからな!!』
「ちょっと何言ってるか分かんないわよ……過去にあんたとウィズダムの間に何があったかなんて知らないけどあたしを巻き込まないでくれる!?」
『ライアン!! オラの力を使え!!』
「分かったわ!! はあああああああっ!!」
ライアンは勇気の剣を両手に持ち、意識を集中し始めた。
眩い輝きを放つ勇気の剣。
知っての通り勇気の剣は勇気と気力を糧に威力が増していく。
『ほう、面白い……』
「やああああああっ!!」
ライアンが一気に踏み込みガランドゥの懐に入った。
そして鳩尾を一突きにした。
「えっ!?」
ライアンには全く手応えが無い。
『忘れたのか? 俺の鎧の中身は空っぽだという事を』
ガランドゥはライアンの頭上で両手を合わせそのままランスの柄の先端を叩きつけた。
「ああっ!!」
鈍い音を立て頭を殴りつけられたライアンは地面に強く倒れ込む。
『もうお終いにしよう、死ね!!』
がランドはくるりとランスを回し先端を下に向けるとライアンを串刺しにすべく振り下ろした。
『避けろ!!』
「くっ!!」
咄嗟に横に転がり何とかランスを回避する。
ライアンの今まで居た場所には深々とランスが突き刺さっていたのだった。
『駄目だライアン!! ここは一旦引くべ!!』
「……うん」
『馬鹿め、逃げられると思っているのか?』
「ふっ……あ……れ?」
後ろに飛び退こうとした時だった、力を入れたつもりが足が動かない。
『どうしただライアン!?』
「足が……足に力が入らない……」
そう言った切りライアンはその場にへたり込んでしまった。
「ハァハァハァ……」
顔色が紅潮し息も上がっている。
『まさか……毒!?』
『惜しいな、似てはいるが別物だよ』
『おめぇガランドゥとか言ったな!? ライアンに何をしただ!?』
脱力しているライアンに握られている勇気の剣だけが勢いよく暴れ回っている。
『聞きたいか? ならば答えてやろう、その女はな、私の暗黒瘴気に中てられたんだよ』
『暗黒瘴気に中てられただぁ!?』
『そう、さっき女は私の突きを腹に掠めただろう? 傷口からランスに纏わせておいた暗黒瘴気が体内に入ったのだ、そして女の体内から身体を蝕んでいったのよ』
『何だとぉ!? おい、ライアンしっかりしろ!!』
「ハァハァ……」
苦しそうに息をするライアンに何もしてやれない勇気。
勇気には剣の強化以外の能力がほぼ無いのだった。
『ほんの少し生きながらえたが今度こそ止めだ』
ランスを持った右手を後ろに引く。
『ライアーーーン!!』
ガランドゥが突きの体勢に入ろうかと言うその瞬間だった。
「させませんよーーーー!!」
テナー調の男性の声がして白い影がライアンとガランドゥの間を通り過ぎる。
するとライアンの姿は跡形もなく消え去っているではないか。
『何ィ!? どうなっている!?』
何が起こったか分からず辺りを見回すがガランドゥがライアンの姿を持着けだす事は出来なかった。
『……まあいいさ、どのみち暗黒瘴気を取り除けなければいずれあの女は死ぬのだからな』
ガランドゥはランスを虚空の中へと放り込みと、踵を返し女たちの監獄のある建物の中へと入って行った。
(……どこだここは……寒い……目も開けられない……身体も動かない……)
寒い以外の感覚が一切感じられない不思議な空間……ライアンは暗闇の中に居た。
(もしかして俺、死んじゃったとか? やっぱり無理だったんだよこんな弱っちい俺が女勇者になって世界を救うなんてどだい無茶な話だったんだ……もういいや、このままここで寝ていよう……)
『……まだ諦めてはいけませんよ、あなたはまだ戦えます……』
(誰?)
今までに聞いた事が無い男の声がする。
声の感じがとても上品で物腰が柔らかそうである。
すると次の瞬間、身体が仄かに暖かくなり、目を瞑っていても明るく感じられた。
(わぁ、暖かいな、まるで草原で木漏れ日に包まれているみたいだ……)
そのお陰ですっかり身体の悪寒が消えたライアン。
『おいライアン!! しっかりするだ!!』
「はっ!?」
勇気の怒鳴り声でガバッと飛び起きる。
「あれっ? ここはどこ?」
「気が付きましたか?」
にっこりと白いローブを着て微笑む男性。
「えーーーと……なっ!! 君はサンファ……ん」
ここまで言いかけてライアンは自らの口を塞いだ。
目の前にはブライアンの元のパーティーに所属していた僧侶サンファンがいた。
しかしブライアンは現在女の姿な訳で、今自分がブライアンであると知り合いに知れると面倒な事になりかねない、と知恵に釘を刺されていた事もあり何とか相手の名前を呼ぶのを抑え込むことに成功する。
『良かったーーー、何とか解毒が効いただな』
「カリッジ、これは一体?」
『この人方が助けてくれただよ!! 本当に命の恩人だべ!!』
「初めまして、わたくし僧侶のサンファンと申します」
うやうやしくお辞儀をするサンファン。
「はっ、初めましてライアンです」
釣られてライアンもお辞儀をする。
『おっと、私を忘れてもらっては困りますね』
「えっ? 一体どこから声が?」
ライアンが辺りを見回すがサンファン以外に人はどこにも居ない。
『ここですよ、こ・こ』
サンファンの纏っている純白のマントが風もないのにひらひらとたなびいている。
「それって……まさか……?」
恐る恐るそのマントを指さす。
『その通り!! 私こそが生きている装備の一つ、リビングクロスの節制と申します、お嬢さん以後お見知り置きを!!』
優男風な爽やかな声で自己紹介する節制。
「……って事はウィズダムやカリッジの?」
『はい!! 同胞ですよ!!』
「そうなんだ……」
(何か聞いていたのと違う)
知恵からは節制は生真面目で神経質と聞いていたが受ける印象は違うものだった。
「さっきのは何だったんだろう、寝ている間に温かいものに包まれた気がしたんだけれど」
『はい、それこそが私の能力の一つでして、私を被せるとどんな毒や瘴気の類でも立ちどころに打ち消してしまう事が出来るのです!!』
サンファンのマントがピン!! と立ち上がる。
きっと顔があったら節制は物凄いドヤ顔を決めていた事だろう。
しかしここでライアンは、いや正確にはブライアンは有る事を思い出す。
(確かサンファンはドグラゴンとの戦闘で酷い大火傷を負ったはずだ……それも生死に関わるほどの……どうやってここまで回復したのだろう?)
「ねぇテンパランス、一つ聞いていい?」
『はい、何でしょう?』
「君、もしかして回復も出来るのかい? 例えば重傷を負った人間を回復するとか」
『はいーーー!! 私の得意分野でございます!!』
「なうほどね……」
これで合点がいった。
サンファンの大火傷は節制が直したのだ。
あれだけの大火傷を治療できるのだから大したものである。
(でもどうして俺の元のパーティーメンバーばかり生きている装備に巡り合っているんだろう? 何か話が出来過ぎている気が……)
『どうしましたかライアン様? 先ほどから暗い顔をして……憂いのある美少女も悪くないとは思うのですがね』
「ううん、何でもないよ……」
『そうだ!!』
「ひゃっ!! どうしたのカリッジ!? 急に大きな声を出して!!」
『ウィズダムだ、ウィズダムの様子がおかしくなっちまっただよ』
「あっ、そうそう!! 一体どうしちゃったの!?」
あの饒舌な知恵が今までの会話に一切口を挟まないのは異様に感じられた。
『見ていましたよ、あなた達と四天王ガランドゥの戦いを……あれは相手が悪かったですね、よりによってあの者が知恵の前に現れるとはねぇ』
『節制、おめぇ何か知ってるだか?』
『はい、実はガランドゥと名乗る彼こそは本来知恵の鎧になるはずだった者です』
「何ですってーーー!?」
『何だってーーー!?』
衝撃の新事実、節制の語った言葉の意味する所とは?
ガランドゥが鎧内から噴出する黒い霧を手にしたランスに纏わせライアンに向けてもう突進してくる。
「危ない!!」
咄嗟に体を躱すライアンであったが左の脇腹にランスの先が掠ってしまった。
脇腹には横に線の様な傷が付き、そこにはあの黒い霧が燻る様にまとわりついていた。
「いつっ……何だこれ……?」
焼ける様な痛みを感じる、しかし妙だ、前に崖から落ちた時に打った尻の時と違いいつまでも痛みが残っている。
『ライアン!! あいつの攻撃を受けたらダメだべ!! あいつの攻撃には暗黒瘴気が纏わさっとる!!』
「暗黒瘴気!? 何それ!?」
勇気の言った聞き慣れない言葉に戸惑うライアン。
『暗黒瘴気とは闇の魔力や人間の負の感情などマイナス方向に力を発揮する力だべ!! あれを喰らったらいくらおめぇさんが知恵の加護を受けていたとしてもあぶねぇぞ!!』
「そうか、前にウィズダムが言っていた特別な力が込められた攻撃ってこういう事なんだね!! ウィズダム?」
ライアンの呼び掛けに返事をしない知恵。
『ああ……ああ……』
ただうわ言の様に呻くのみだ。
「一体どうしちゃったのよ!? ウィズダム!?」
『ライアン、今はウィズダムに構うな!!』
「えっ? だって……」
『だってもあさってもねぇ!! 今は戦いに集中しろ!!』
「わっ、分かったよもう」
ガキィン!!
ガランドゥの突きを勇気の剣が受け止め受け流す。
『うぐぐっ、重めぇ……!!』
「あぐっ……!!」
ガランドゥのランスは速さだけでは無く威力もあった。
その刺突の強さによりライアンの腕が痺れる。
「どうして? 確かこのビキニアーマーを着ている間は痛みを感じないんじゃなかったの?」
『今のウィズダムを当てにすんな!! おかしくなっちまってるせいで加護が弱まってるだ!!』
「何よそれ!!」
尚を襲い掛かって来る突撃を何とか裁く。
やはり痛みを伴った痺れはライアンの腕に伝わって来る。
遂に耐え切れなくなり地面に倒れ込む。
「きゃっ……!!」
『ハハハッ!! それ見た事か!! やはり紛い物は紛い物だな!! 貴様に出し抜かれて以降碌な事が無かったが魔王ゾンダイク様に仕えて正解だったぜ!! こうして因縁の相手である貴様と巡り会い打ちのめす事が出来るのだからな!!』
「ちょっと何言ってるか分かんないわよ……過去にあんたとウィズダムの間に何があったかなんて知らないけどあたしを巻き込まないでくれる!?」
『ライアン!! オラの力を使え!!』
「分かったわ!! はあああああああっ!!」
ライアンは勇気の剣を両手に持ち、意識を集中し始めた。
眩い輝きを放つ勇気の剣。
知っての通り勇気の剣は勇気と気力を糧に威力が増していく。
『ほう、面白い……』
「やああああああっ!!」
ライアンが一気に踏み込みガランドゥの懐に入った。
そして鳩尾を一突きにした。
「えっ!?」
ライアンには全く手応えが無い。
『忘れたのか? 俺の鎧の中身は空っぽだという事を』
ガランドゥはライアンの頭上で両手を合わせそのままランスの柄の先端を叩きつけた。
「ああっ!!」
鈍い音を立て頭を殴りつけられたライアンは地面に強く倒れ込む。
『もうお終いにしよう、死ね!!』
がランドはくるりとランスを回し先端を下に向けるとライアンを串刺しにすべく振り下ろした。
『避けろ!!』
「くっ!!」
咄嗟に横に転がり何とかランスを回避する。
ライアンの今まで居た場所には深々とランスが突き刺さっていたのだった。
『駄目だライアン!! ここは一旦引くべ!!』
「……うん」
『馬鹿め、逃げられると思っているのか?』
「ふっ……あ……れ?」
後ろに飛び退こうとした時だった、力を入れたつもりが足が動かない。
『どうしただライアン!?』
「足が……足に力が入らない……」
そう言った切りライアンはその場にへたり込んでしまった。
「ハァハァハァ……」
顔色が紅潮し息も上がっている。
『まさか……毒!?』
『惜しいな、似てはいるが別物だよ』
『おめぇガランドゥとか言ったな!? ライアンに何をしただ!?』
脱力しているライアンに握られている勇気の剣だけが勢いよく暴れ回っている。
『聞きたいか? ならば答えてやろう、その女はな、私の暗黒瘴気に中てられたんだよ』
『暗黒瘴気に中てられただぁ!?』
『そう、さっき女は私の突きを腹に掠めただろう? 傷口からランスに纏わせておいた暗黒瘴気が体内に入ったのだ、そして女の体内から身体を蝕んでいったのよ』
『何だとぉ!? おい、ライアンしっかりしろ!!』
「ハァハァ……」
苦しそうに息をするライアンに何もしてやれない勇気。
勇気には剣の強化以外の能力がほぼ無いのだった。
『ほんの少し生きながらえたが今度こそ止めだ』
ランスを持った右手を後ろに引く。
『ライアーーーン!!』
ガランドゥが突きの体勢に入ろうかと言うその瞬間だった。
「させませんよーーーー!!」
テナー調の男性の声がして白い影がライアンとガランドゥの間を通り過ぎる。
するとライアンの姿は跡形もなく消え去っているではないか。
『何ィ!? どうなっている!?』
何が起こったか分からず辺りを見回すがガランドゥがライアンの姿を持着けだす事は出来なかった。
『……まあいいさ、どのみち暗黒瘴気を取り除けなければいずれあの女は死ぬのだからな』
ガランドゥはランスを虚空の中へと放り込みと、踵を返し女たちの監獄のある建物の中へと入って行った。
(……どこだここは……寒い……目も開けられない……身体も動かない……)
寒い以外の感覚が一切感じられない不思議な空間……ライアンは暗闇の中に居た。
(もしかして俺、死んじゃったとか? やっぱり無理だったんだよこんな弱っちい俺が女勇者になって世界を救うなんてどだい無茶な話だったんだ……もういいや、このままここで寝ていよう……)
『……まだ諦めてはいけませんよ、あなたはまだ戦えます……』
(誰?)
今までに聞いた事が無い男の声がする。
声の感じがとても上品で物腰が柔らかそうである。
すると次の瞬間、身体が仄かに暖かくなり、目を瞑っていても明るく感じられた。
(わぁ、暖かいな、まるで草原で木漏れ日に包まれているみたいだ……)
そのお陰ですっかり身体の悪寒が消えたライアン。
『おいライアン!! しっかりするだ!!』
「はっ!?」
勇気の怒鳴り声でガバッと飛び起きる。
「あれっ? ここはどこ?」
「気が付きましたか?」
にっこりと白いローブを着て微笑む男性。
「えーーーと……なっ!! 君はサンファ……ん」
ここまで言いかけてライアンは自らの口を塞いだ。
目の前にはブライアンの元のパーティーに所属していた僧侶サンファンがいた。
しかしブライアンは現在女の姿な訳で、今自分がブライアンであると知り合いに知れると面倒な事になりかねない、と知恵に釘を刺されていた事もあり何とか相手の名前を呼ぶのを抑え込むことに成功する。
『良かったーーー、何とか解毒が効いただな』
「カリッジ、これは一体?」
『この人方が助けてくれただよ!! 本当に命の恩人だべ!!』
「初めまして、わたくし僧侶のサンファンと申します」
うやうやしくお辞儀をするサンファン。
「はっ、初めましてライアンです」
釣られてライアンもお辞儀をする。
『おっと、私を忘れてもらっては困りますね』
「えっ? 一体どこから声が?」
ライアンが辺りを見回すがサンファン以外に人はどこにも居ない。
『ここですよ、こ・こ』
サンファンの纏っている純白のマントが風もないのにひらひらとたなびいている。
「それって……まさか……?」
恐る恐るそのマントを指さす。
『その通り!! 私こそが生きている装備の一つ、リビングクロスの節制と申します、お嬢さん以後お見知り置きを!!』
優男風な爽やかな声で自己紹介する節制。
「……って事はウィズダムやカリッジの?」
『はい!! 同胞ですよ!!』
「そうなんだ……」
(何か聞いていたのと違う)
知恵からは節制は生真面目で神経質と聞いていたが受ける印象は違うものだった。
「さっきのは何だったんだろう、寝ている間に温かいものに包まれた気がしたんだけれど」
『はい、それこそが私の能力の一つでして、私を被せるとどんな毒や瘴気の類でも立ちどころに打ち消してしまう事が出来るのです!!』
サンファンのマントがピン!! と立ち上がる。
きっと顔があったら節制は物凄いドヤ顔を決めていた事だろう。
しかしここでライアンは、いや正確にはブライアンは有る事を思い出す。
(確かサンファンはドグラゴンとの戦闘で酷い大火傷を負ったはずだ……それも生死に関わるほどの……どうやってここまで回復したのだろう?)
「ねぇテンパランス、一つ聞いていい?」
『はい、何でしょう?』
「君、もしかして回復も出来るのかい? 例えば重傷を負った人間を回復するとか」
『はいーーー!! 私の得意分野でございます!!』
「なうほどね……」
これで合点がいった。
サンファンの大火傷は節制が直したのだ。
あれだけの大火傷を治療できるのだから大したものである。
(でもどうして俺の元のパーティーメンバーばかり生きている装備に巡り合っているんだろう? 何か話が出来過ぎている気が……)
『どうしましたかライアン様? 先ほどから暗い顔をして……憂いのある美少女も悪くないとは思うのですがね』
「ううん、何でもないよ……」
『そうだ!!』
「ひゃっ!! どうしたのカリッジ!? 急に大きな声を出して!!」
『ウィズダムだ、ウィズダムの様子がおかしくなっちまっただよ』
「あっ、そうそう!! 一体どうしちゃったの!?」
あの饒舌な知恵が今までの会話に一切口を挟まないのは異様に感じられた。
『見ていましたよ、あなた達と四天王ガランドゥの戦いを……あれは相手が悪かったですね、よりによってあの者が知恵の前に現れるとはねぇ』
『節制、おめぇ何か知ってるだか?』
『はい、実はガランドゥと名乗る彼こそは本来知恵の鎧になるはずだった者です』
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