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第12話 見知らぬ協力者
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「お父様、お母様…少しよろしいでしょうか…?」
シャルロットは彼女ら王族の住まいである王宮のリビングを訪れていた。
リビングと言っても相当な広さを有し、ちょっとしたダンスパーティーが開ける程だ。
王や王妃は公務や執務がないプライベートな時間は大抵ここでくつろいでいるのだ。
「おおシャルロットか…そんな所に立っていないでこっちへ来なさい」
「…失礼します」
いつになく妙に落ち着いた雰囲気のシャルロット…娘に甘いシャルル王は違和感に全く気付いていない。
だが母であるエリザベートは違った。
「はぁ…あなたが何を言いたいか分かっていますよ…グロリアの事でしょう…?」
「そうです…さすがお母様、話が早いですわ…」
シャルロットはテーブルを挟んで両親の向かい側のソファに腰を下ろした。
すぐさま傍らに控えていたメイドのシオンが姫の分の紅茶をカップに注ぐ。
シャルロットはおもむろに紅茶を一口含むと深呼吸の後、口を開いた。
「何故グロリアの釈放されないのですか!?
彼女が私の暗殺を企てるなど絶対にありえませんわ!!」
テーブルに勢いよく両手を付き身を乗り出す。
「…落ち着きなさいシャルロット…私とてグロリアがあなたを毒殺しようとしたなどと思っていません」
「では何故!?」
「あなたは人の上に立つ王家の人間なのですよ?その答えに考えが及ばないのですか?」
「何ですって!?」
物凄い剣幕で尚もエリザベートに食って掛かるシャルロット…しかし母はその程度で怯みはしない…逆に毅然とした態度で睨み返す。
「まぁまぁ二人共…そう感情的にならずに…」
「お父様は黙っていてください!!」
「あなたは黙っていて頂戴!!」
「…はいぃ…」
二人の醸し出す殺伐とした空気にシャルルはタジタジだ。
エリザベートも自分が頭に血を登らせていた事を自覚し深呼吸で心を落ち着かせる。
「いいでしょう…分からないと言うなら私が説明してあげます…
まずはあなたが狙われた毒殺未遂事件があった…これは間違いなく事実よね?」
「…はい」
「そしてその容疑者にあなたの友人であり世話係のグロリアがあがった…ここまではよろしくて?」
「ちがっ…はっ…はい…」
一瞬否定しようとしたシャルロットだが事実だけを見るとその通りなので同意する。
その様子にやれやれと首をすくめるエリザベートだが更に続ける。
「あなた…今グロリアを庇おうとしたでしょう…?
事件の容疑者が自分の親友や親しい者だから絶対やっていない…?
それはあなたが決める事ではありません…!
権力や影響力を持ったものが一存で容疑者を解放せよと言って、それが実行されたらどうなるとお思い!?」
「そっ…それは………」
エリザベートの言葉に何も言い返せなくなってしまったシャルロット。
母の言う事は全く持ってその通りなのだ。
自分は王族…願ったり命令すれば大抵の事は叶ってしまう身分…。
しかしこれが平民だったらどうだ…?
仮に身内が無実の罪で連行された時、役所に開放を願って受け入れられるか?
…否である。
シャルロットは親友グロリアが捕まるという未曽有の事態で感情的になるあまり、自分の立場と人間社会の根本的なルールを失念してしまっていたのだ。
「あなたは自分の立場を理解していない様ね…あなたが白い物を黒と言えば黒になってしまう…事実を捻じ曲げることも出来てしまうのよ?
その判断と命令一つで人の命すら危機にさらす事があると言う事を覚えておきなさい!!」
「でも…でも…」
シャルロットの目から大粒の涙が溢れ出る…悔しいだけではない、自分自身の情けなさに憤っているのだ。
遂にいたたまれなくなり走って部屋から飛び出していった。
「おい!!シャルロットや…!!おまえ…何もあそこまで言う事は無いだろう…」
「いえ…いずれは教えなければいけない事です…それに今は一人にしておきましょう…あの子も本当は分かっているのです…これで少しは頭が冷えるでしょう…」
シャルルは心配そうにシャルロットが去っていった開けっ放しの扉を見つめる。
エリザベートはソファに身体を預け深いため息を吐いた。
メイドのシオンはティーセットの乗ったカートごとその扉の方へ向かい、お辞儀をしながら部屋の外に出て外側から扉を閉めた…そしてシャルロットが去っていった方へと廊下を歩いて行った。
「看守さん…いつもお勤めご苦労さまです…あのお願いがあるのですが…一目だけでもグロリアに会わせてもらえないでしょうか…」
シャルロットの上目遣いのお願いに申し出を承諾してしまいそうになる看守の男。
さっきまで泣いていて目元が赤いせいで普段の魅力以上に破壊力は抜群であった。
しかし全力で頭を振るい正気を保つ。
「いけません姫様…グロリアさんには誰も会わせない様にと王妃様からの命令が下っております」
(…お母様の意地悪…会ってお話するくらいいいじゃない…)
内心はそう思ったが先程の事もある…ここは大人しく引き下がるしかなかった。
トボトボと廊下を引き返しているとカートを押したシオンとすれ違う。
シオンはシャルロットに軽く会釈をすると看守の方へと進んで行った。
きっと看守へのお茶の差し入れなのだろうとシャルロットはその時思った。
「こうなったら私が真犯人を見付けてグロリアの無実を証明するしかないわね…」
夜も更け、寝室のベッドの上にお気に入りのピンクのパジャマ姿で腰掛け腕を組む。
「お茶に毒を入れる事が出来る人間となるとやっぱりメイドか使用人の線が濃厚よね…でも誰が…?」
ひとしきり頭を捻っていたが、次第に舟をこぎ出すシャルロット。
はっ…と目を覚ますもやはり目蓋が重くなってくる。
「ふぁ~~~…眠たくなってきたから明日ハインツの見舞いに行った時にでも相談しようかしら…」
おもむろに布団の中に潜り込み彼女が寝息を立てるまでそう時間は掛からなかった。
だがその時…部屋の外、窓から中の様子を窺っていた黒い影が居たのだが彼女は知る由も無かった。
「…うっ…ううっ…うぁっ…」
鉄格子の部屋の中、一人の少女のすすり泣く声がする…赤いメイド服の少女、グロリアだ。
「私じゃない…私はやってないのに…どうして信じてくれないの…?」
木製で板状の手錠を掛けられたグロリアは冷たい石の床に座り込んで顔を伏せ涙を流す。
留置場に入れられてから衛兵が去った後もずっと自身の潔白を呟き続けていた。
「…そうしてずっとこんな所で泣き続けるつもりなのかお前は…」
「…えっ!?誰…!?」
誰も居ない筈のこの場所で不意に声を掛けられ驚きを隠せないグロリア。
顔を上げると鉄格子越しの目の前に紫色の忍者装束を着た人物が立っていた。
胸の膨らみや腰回りから見るにどうやら女性の様だ…属に言う『くのいち』である。
顔は覆面で覆われていて目の部分しか露出しておらず誰かは分からない。
ただその鋭い眼差しをグロリアはどこかで見た気がしていた。
「あなたは一体…!?」
「そうだな…通りすがりの美少女くのいちとでも名乗っておこうか…」
くのいち本人は冗談のつもりで言ったらしいが、自分を美少女と称している時点で若干滑っている事に気付いていない。
「お前に二ついい事を教えてやろう…まずはお前の兄、ハインツだが…何とか命を取り留めた…未だ安静は必要だろうがな…」
「…お兄様…ああ…良かった…」
グロリアはほっと胸を撫で下ろす。
自分が淹れた紅茶を飲み、目の前で倒れたハインツを見た時は生きた心地がしなかったのだから。
「そしてもう一つ…このままお前が牢獄に居ても近い内には出られるだろう…シャルロット姫が暗殺され真犯人が別に居た事が分かるのだからな…」
「ええっ!?それはどう言う事ですか!?」
くのいちが語る余りに衝撃的な内容にグロリアはここが牢獄だと言う事を忘れ、大声を出して驚く。
「犯人は姫様を毒殺できなかった以上、直接命を狙ってくるだろう…それが今夜なのかはたまた明日なのか…」
「そんな…姫様…」
鉄格子にしがみ付きワナワナと震える。
「そこで拙者はお前に聞きたい…お前は…己に降りかかる火の粉を払い、姫様を守る覚悟があるか…?」
「…覚悟…」
シャルロットはこの国の姫で要人の一人…当然城には衛兵が何人も配備されている。
しかしすぐそばで警護に当たっていた兄のハインツが今はいない。
(ここは私がシャル様のお側にいてお守りしなければ…)
「覚悟なら今決めたわ…私の潔白は私が証明する!!そしてシャル様もお守りする!!」
「フッ…いいだろう…ここから出してやる」
力強く言い放つグロリアの決意を見届けると、くのいちは鉄格子の鍵を開け牢内に入り、グロリアの手錠も外された。
「…これを持って行け」
「…これは?」
くのいちがグロリアに差し出した物…それは一振りのレイピアとそれを腰に差す為のベルトであった。
早速柄から刀身を抜いてみる…。
それは今まで鍛錬で使用していた木刀では無く正真正銘の真剣だった。
「これ…本物じゃない…!!」
「当たり前だ…これから賊と一戦交えるかも知れぬのになまくらでは話にならぬ」
真剣を手にして胸の鼓動が早まるのを感じる…これは遊びではないのだと…。
「拙者は拙者でやる事があるから先に行く…看守は睡眠薬で眠っているが長くは持たぬ…ここを出るなら早くしろ」
「うん…ありがとう…通りすがりの美少女くのいちさん」
「フン…縁があったらまた会おう」
そっけない返事を残してくのいちは走り去っていった。
それを追う様にグロリアも牢獄から出る。
廊下を歩いていくと、くのいちが言った通り看守たちが皆廊下に倒れ込み寝息を立てていた。
そこを物音を立てぬように静かに通り抜ける。
(待っててシャル様…グロリアが今、参ります…)
はやる気持ちを抑えながら警備の衛兵に見つからない様に慎重に城内を進みシャルロットの寝室を目指す。
衛兵に見つかってしまったら脱走の罪でますます彼女は窮地に陥る事だろう…それだけは避けねばならない。
グロリアの孤独な戦いが今始まった。
シャルロットは彼女ら王族の住まいである王宮のリビングを訪れていた。
リビングと言っても相当な広さを有し、ちょっとしたダンスパーティーが開ける程だ。
王や王妃は公務や執務がないプライベートな時間は大抵ここでくつろいでいるのだ。
「おおシャルロットか…そんな所に立っていないでこっちへ来なさい」
「…失礼します」
いつになく妙に落ち着いた雰囲気のシャルロット…娘に甘いシャルル王は違和感に全く気付いていない。
だが母であるエリザベートは違った。
「はぁ…あなたが何を言いたいか分かっていますよ…グロリアの事でしょう…?」
「そうです…さすがお母様、話が早いですわ…」
シャルロットはテーブルを挟んで両親の向かい側のソファに腰を下ろした。
すぐさま傍らに控えていたメイドのシオンが姫の分の紅茶をカップに注ぐ。
シャルロットはおもむろに紅茶を一口含むと深呼吸の後、口を開いた。
「何故グロリアの釈放されないのですか!?
彼女が私の暗殺を企てるなど絶対にありえませんわ!!」
テーブルに勢いよく両手を付き身を乗り出す。
「…落ち着きなさいシャルロット…私とてグロリアがあなたを毒殺しようとしたなどと思っていません」
「では何故!?」
「あなたは人の上に立つ王家の人間なのですよ?その答えに考えが及ばないのですか?」
「何ですって!?」
物凄い剣幕で尚もエリザベートに食って掛かるシャルロット…しかし母はその程度で怯みはしない…逆に毅然とした態度で睨み返す。
「まぁまぁ二人共…そう感情的にならずに…」
「お父様は黙っていてください!!」
「あなたは黙っていて頂戴!!」
「…はいぃ…」
二人の醸し出す殺伐とした空気にシャルルはタジタジだ。
エリザベートも自分が頭に血を登らせていた事を自覚し深呼吸で心を落ち着かせる。
「いいでしょう…分からないと言うなら私が説明してあげます…
まずはあなたが狙われた毒殺未遂事件があった…これは間違いなく事実よね?」
「…はい」
「そしてその容疑者にあなたの友人であり世話係のグロリアがあがった…ここまではよろしくて?」
「ちがっ…はっ…はい…」
一瞬否定しようとしたシャルロットだが事実だけを見るとその通りなので同意する。
その様子にやれやれと首をすくめるエリザベートだが更に続ける。
「あなた…今グロリアを庇おうとしたでしょう…?
事件の容疑者が自分の親友や親しい者だから絶対やっていない…?
それはあなたが決める事ではありません…!
権力や影響力を持ったものが一存で容疑者を解放せよと言って、それが実行されたらどうなるとお思い!?」
「そっ…それは………」
エリザベートの言葉に何も言い返せなくなってしまったシャルロット。
母の言う事は全く持ってその通りなのだ。
自分は王族…願ったり命令すれば大抵の事は叶ってしまう身分…。
しかしこれが平民だったらどうだ…?
仮に身内が無実の罪で連行された時、役所に開放を願って受け入れられるか?
…否である。
シャルロットは親友グロリアが捕まるという未曽有の事態で感情的になるあまり、自分の立場と人間社会の根本的なルールを失念してしまっていたのだ。
「あなたは自分の立場を理解していない様ね…あなたが白い物を黒と言えば黒になってしまう…事実を捻じ曲げることも出来てしまうのよ?
その判断と命令一つで人の命すら危機にさらす事があると言う事を覚えておきなさい!!」
「でも…でも…」
シャルロットの目から大粒の涙が溢れ出る…悔しいだけではない、自分自身の情けなさに憤っているのだ。
遂にいたたまれなくなり走って部屋から飛び出していった。
「おい!!シャルロットや…!!おまえ…何もあそこまで言う事は無いだろう…」
「いえ…いずれは教えなければいけない事です…それに今は一人にしておきましょう…あの子も本当は分かっているのです…これで少しは頭が冷えるでしょう…」
シャルルは心配そうにシャルロットが去っていった開けっ放しの扉を見つめる。
エリザベートはソファに身体を預け深いため息を吐いた。
メイドのシオンはティーセットの乗ったカートごとその扉の方へ向かい、お辞儀をしながら部屋の外に出て外側から扉を閉めた…そしてシャルロットが去っていった方へと廊下を歩いて行った。
「看守さん…いつもお勤めご苦労さまです…あのお願いがあるのですが…一目だけでもグロリアに会わせてもらえないでしょうか…」
シャルロットの上目遣いのお願いに申し出を承諾してしまいそうになる看守の男。
さっきまで泣いていて目元が赤いせいで普段の魅力以上に破壊力は抜群であった。
しかし全力で頭を振るい正気を保つ。
「いけません姫様…グロリアさんには誰も会わせない様にと王妃様からの命令が下っております」
(…お母様の意地悪…会ってお話するくらいいいじゃない…)
内心はそう思ったが先程の事もある…ここは大人しく引き下がるしかなかった。
トボトボと廊下を引き返しているとカートを押したシオンとすれ違う。
シオンはシャルロットに軽く会釈をすると看守の方へと進んで行った。
きっと看守へのお茶の差し入れなのだろうとシャルロットはその時思った。
「こうなったら私が真犯人を見付けてグロリアの無実を証明するしかないわね…」
夜も更け、寝室のベッドの上にお気に入りのピンクのパジャマ姿で腰掛け腕を組む。
「お茶に毒を入れる事が出来る人間となるとやっぱりメイドか使用人の線が濃厚よね…でも誰が…?」
ひとしきり頭を捻っていたが、次第に舟をこぎ出すシャルロット。
はっ…と目を覚ますもやはり目蓋が重くなってくる。
「ふぁ~~~…眠たくなってきたから明日ハインツの見舞いに行った時にでも相談しようかしら…」
おもむろに布団の中に潜り込み彼女が寝息を立てるまでそう時間は掛からなかった。
だがその時…部屋の外、窓から中の様子を窺っていた黒い影が居たのだが彼女は知る由も無かった。
「…うっ…ううっ…うぁっ…」
鉄格子の部屋の中、一人の少女のすすり泣く声がする…赤いメイド服の少女、グロリアだ。
「私じゃない…私はやってないのに…どうして信じてくれないの…?」
木製で板状の手錠を掛けられたグロリアは冷たい石の床に座り込んで顔を伏せ涙を流す。
留置場に入れられてから衛兵が去った後もずっと自身の潔白を呟き続けていた。
「…そうしてずっとこんな所で泣き続けるつもりなのかお前は…」
「…えっ!?誰…!?」
誰も居ない筈のこの場所で不意に声を掛けられ驚きを隠せないグロリア。
顔を上げると鉄格子越しの目の前に紫色の忍者装束を着た人物が立っていた。
胸の膨らみや腰回りから見るにどうやら女性の様だ…属に言う『くのいち』である。
顔は覆面で覆われていて目の部分しか露出しておらず誰かは分からない。
ただその鋭い眼差しをグロリアはどこかで見た気がしていた。
「あなたは一体…!?」
「そうだな…通りすがりの美少女くのいちとでも名乗っておこうか…」
くのいち本人は冗談のつもりで言ったらしいが、自分を美少女と称している時点で若干滑っている事に気付いていない。
「お前に二ついい事を教えてやろう…まずはお前の兄、ハインツだが…何とか命を取り留めた…未だ安静は必要だろうがな…」
「…お兄様…ああ…良かった…」
グロリアはほっと胸を撫で下ろす。
自分が淹れた紅茶を飲み、目の前で倒れたハインツを見た時は生きた心地がしなかったのだから。
「そしてもう一つ…このままお前が牢獄に居ても近い内には出られるだろう…シャルロット姫が暗殺され真犯人が別に居た事が分かるのだからな…」
「ええっ!?それはどう言う事ですか!?」
くのいちが語る余りに衝撃的な内容にグロリアはここが牢獄だと言う事を忘れ、大声を出して驚く。
「犯人は姫様を毒殺できなかった以上、直接命を狙ってくるだろう…それが今夜なのかはたまた明日なのか…」
「そんな…姫様…」
鉄格子にしがみ付きワナワナと震える。
「そこで拙者はお前に聞きたい…お前は…己に降りかかる火の粉を払い、姫様を守る覚悟があるか…?」
「…覚悟…」
シャルロットはこの国の姫で要人の一人…当然城には衛兵が何人も配備されている。
しかしすぐそばで警護に当たっていた兄のハインツが今はいない。
(ここは私がシャル様のお側にいてお守りしなければ…)
「覚悟なら今決めたわ…私の潔白は私が証明する!!そしてシャル様もお守りする!!」
「フッ…いいだろう…ここから出してやる」
力強く言い放つグロリアの決意を見届けると、くのいちは鉄格子の鍵を開け牢内に入り、グロリアの手錠も外された。
「…これを持って行け」
「…これは?」
くのいちがグロリアに差し出した物…それは一振りのレイピアとそれを腰に差す為のベルトであった。
早速柄から刀身を抜いてみる…。
それは今まで鍛錬で使用していた木刀では無く正真正銘の真剣だった。
「これ…本物じゃない…!!」
「当たり前だ…これから賊と一戦交えるかも知れぬのになまくらでは話にならぬ」
真剣を手にして胸の鼓動が早まるのを感じる…これは遊びではないのだと…。
「拙者は拙者でやる事があるから先に行く…看守は睡眠薬で眠っているが長くは持たぬ…ここを出るなら早くしろ」
「うん…ありがとう…通りすがりの美少女くのいちさん」
「フン…縁があったらまた会おう」
そっけない返事を残してくのいちは走り去っていった。
それを追う様にグロリアも牢獄から出る。
廊下を歩いていくと、くのいちが言った通り看守たちが皆廊下に倒れ込み寝息を立てていた。
そこを物音を立てぬように静かに通り抜ける。
(待っててシャル様…グロリアが今、参ります…)
はやる気持ちを抑えながら警備の衛兵に見つからない様に慎重に城内を進みシャルロットの寝室を目指す。
衛兵に見つかってしまったら脱走の罪でますます彼女は窮地に陥る事だろう…それだけは避けねばならない。
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