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第88話 隠された真実と二つのミッション
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テントの設営が終わりシャルロットたちは焚火を囲み輪になって座る。
既に日は沈み肌寒くなっている。
エイハブは様子を見に行くと言ってマウイマウイの首都の方角に偵察に出ていた。
「じゃあそろそろ話してくれないかなデネブ……何故君がグロリアの事を知っていて彼女が生きていると言い切れるのかを……」
キャンプ設置中は我慢していたがとうとう居ても立ってもいられず、シャルロットはデネブに詰め寄った。
「宜しい、ではお話ししましょう……儂が『捨てられた世界』からこちらへ来たのは知っとるじゃろう? グロリアとはそこで暫く一緒におったのじゃよ」
「ええっ!?」
驚きを隠せないシャルロット……元の世界の海上で女王イカに襲われた際、もろともに海に沈んだグロリアが生きていた上に『捨てられた世界』に転移していたなどとはにわかには信じられなかった。
しかし経緯はどうあれ彼女が生きていたことでシャルロットの胸に得も言われぬ安堵感が湧き上がってくる。
「それでグロリアはどこに!? もしかしてまだ嘆きの断崖のあの空間の歪みの先に居るのかい!?」
「まあまあ落ち着きなされ姫様、今から順を追って話すよってな……ここからは気をしっかり持って聞いてくだされ」
「えっ!?」
デネブの胸倉を掴んで揺さぶっていたシャルロットの手が止まる。
何やら不穏な空気をデネブの神妙な表情から彼女も感じ取っていた。
「初めにグロリアが『捨てられた世界』に流れ着いた時にはエターニアの関係者だとは思わなんだが、話しを聞いているうちにシャルロット様のお名前が出てな、そこに先ほど姫様の口からグロリアの名前が出たことで確信しましたのじゃ……グロリアが姫様の従者であると……
じゃがグロリアは姫様に随分と後ろめたい事があった様じゃな……『捨てられた世界』から脱出するためにシェイドと言う者に連絡を取る時も乗り気ではなかったからの」
「ちょっと待ってデネブ、いまシェイドって言った?」
シャルロットの表情が徐々に険しくなる。
「ああ、グロリアは彼奴の事を魔王の復活を目論む者と言っておったな……シェイドを『捨てられた世界』に呼び寄せるのには成功したのじゃが、グロリアだけを連れて行ってしまったのじゃ」
「何だって……!?」
「じゃからこれだけは言える、グロリアは元の世界に戻っている筈じゃ」
「そんな……」
愕然とするシャルロット……グロリアが生きていた事は喜ばしい事だが、シェイドに連れていかれたのだとしたらそれは由々しき事態だ。
「今の我らにグロリアをどうこうすることは出来なんだ……酷な様じゃがここは当初の目的達成を考えねばなりませんぞ」
「分かってる、そう何度も感情に振り回される訳にはいかない……元の世界に戻る方法が分からない以上、こちらの世界の魔王を倒す以外に選択肢はないからね」
デネブの叱咤に対して気丈に振舞ってはいるがどこか儚げだ。
横に座っていたベガが無言で優しくシャルロットを抱き寄せる……彼女の頬に一筋の涙が伝った。
「只今戻りました」
「あら、お帰り」
エイハブが偵察から戻ってきて焚火の側に座り手をかざす。
ベガが焚火に掛けてあったポットからカップにお茶を注ぎエイハブに手渡す。
「ありがとうございます、こんな南国なのに夜は冷え込みますね」
「知らないの? 夜更けには南国でも氷点下近くまで気温が下がる事だってあるのよ?」
「へ~~~そうなんですか……あっち!!」
「もう、お茶は熱いんだから気をつけなさいな……ところで偵察の方はどうだったの?」
「はい、こんなに暗いというのに街には灯り一つ灯ってませんでした」
「そう、思った通りね」
ベガは眉を顰める。
「やはり街に行かなくて正解ね、マウイマウイは既に堕ちているわ」
「ベガはこの事態を想定していたのかい?」
「ええシャル様、遠巻きに見た感じは城壁も無事で一見何事も無いように見えるけど恐らく内部は魔王軍の手に落ちていると見て間違いないでしょう」
「他の国や街は分かり安い程直接的に破壊されているのに何故ここだけ?」
「いい質問ね、じゃあ逆に聞くけど何でだと思う?」
「う~~~ん……他の街が破壊されている所に無事な街を見つけたら人々は助けを求めて集まるよね」
「半分正解……これは私たちをおびき寄せる為の罠よ」
「罠?」
シャルロットはきょとんとしている。
「何故って顔をしているわね、私たちはこれまで四天王を二人倒し、三人目にも会ってしまっている訳よね? 要するに存在と顔が割れてしまっているのよ……あのベヒモスとかいうデカ物を倒しきれなかったのは今となっては痛手だわ、きっとあいつからもう一人の四天王に連絡が言っている筈よ」
「君はマウイマウイにその最後の四天王が潜んでいると思っているのかい?」
「恐らくは……仮にそうでなくてもそれに近い手練れが潜んでいるでしょうね」
「だけど行かない選択肢はないよ、あそこには最後の三種の神器『現在の盾』があるんだから」
『私の妹の事もお忘れなきように……』
「そうだねサファイア、そちらも忘れちゃいけない……そうだ、二手に分かれようじゃないか!!
マウイマウイには潜入する関係上少人数の方が都合がいい……『現在の盾』は僕じゃないと動かせないから僕とエイハブとデネブで行こう
黄色い巨人はサファイアとベガで探してくれないか?」
「いいわ、その方が効率がいい様だしそれで行きましょう」
シャルロットの提案にベガがウインクをしながらそれに答える。
「分かりました、このエイハブ僭越ながらお供しましょう!!」
エイハブは胸を張り拳で叩く。
「儂は潜入には向いていないと思うのじゃが……」
確かに老人の身であるデネブには荷が重そうではある。
「何を言っているのパパ、あなたが秘匿魔法でサポートしないとこのそそっかしい二人ならすぐに見つかってしまうわよ?」
「酷いな……」
ベガの失言にエイハブは苦笑いを浮かべる。
「そうと決まれば明日決行だ!! みんな明日に備えて今日はもう寝てくれ!! サファイア、見張りを頼めるかい?」
「はい、仰せのままに」
焚火の傍らにサファイアが立ち、頭からアンテナを出し周囲を警戒する。
『やはり近くにいますねY3……しかし以前より魔力反応が弱まっている……こんなに近くに居るのに正確な場所が特定できないとは……これは急がねばなりません』
サファイアは一刻も早く妹であるY3を探したいところであったが、今はシャルロットの命令を遂行するのが任務……その場を離れる事は無く一晩中周囲の警戒に当たった。
翌日……。
「じゃあ行こう!! みんなよろしくね!!」
「はい!!」
「任せて」
『はい』
「やはり儂もいくのか……」
この期に及んで及び腰のデネブ。
「パパもいい加減観念することね」
ポンと背中をベガに叩かれる。
「さあ、サファイアちゃん案内して頂戴……その妹さんの所へ」
『はい、ベガ様』
ふたりはさっさと先に行ってしまった。
「とほほ……老骨に鞭打つとはこの事じゃ」
デネブも愚痴りつつとはいえシャルロットたちに付いて行くのであった。
既に日は沈み肌寒くなっている。
エイハブは様子を見に行くと言ってマウイマウイの首都の方角に偵察に出ていた。
「じゃあそろそろ話してくれないかなデネブ……何故君がグロリアの事を知っていて彼女が生きていると言い切れるのかを……」
キャンプ設置中は我慢していたがとうとう居ても立ってもいられず、シャルロットはデネブに詰め寄った。
「宜しい、ではお話ししましょう……儂が『捨てられた世界』からこちらへ来たのは知っとるじゃろう? グロリアとはそこで暫く一緒におったのじゃよ」
「ええっ!?」
驚きを隠せないシャルロット……元の世界の海上で女王イカに襲われた際、もろともに海に沈んだグロリアが生きていた上に『捨てられた世界』に転移していたなどとはにわかには信じられなかった。
しかし経緯はどうあれ彼女が生きていたことでシャルロットの胸に得も言われぬ安堵感が湧き上がってくる。
「それでグロリアはどこに!? もしかしてまだ嘆きの断崖のあの空間の歪みの先に居るのかい!?」
「まあまあ落ち着きなされ姫様、今から順を追って話すよってな……ここからは気をしっかり持って聞いてくだされ」
「えっ!?」
デネブの胸倉を掴んで揺さぶっていたシャルロットの手が止まる。
何やら不穏な空気をデネブの神妙な表情から彼女も感じ取っていた。
「初めにグロリアが『捨てられた世界』に流れ着いた時にはエターニアの関係者だとは思わなんだが、話しを聞いているうちにシャルロット様のお名前が出てな、そこに先ほど姫様の口からグロリアの名前が出たことで確信しましたのじゃ……グロリアが姫様の従者であると……
じゃがグロリアは姫様に随分と後ろめたい事があった様じゃな……『捨てられた世界』から脱出するためにシェイドと言う者に連絡を取る時も乗り気ではなかったからの」
「ちょっと待ってデネブ、いまシェイドって言った?」
シャルロットの表情が徐々に険しくなる。
「ああ、グロリアは彼奴の事を魔王の復活を目論む者と言っておったな……シェイドを『捨てられた世界』に呼び寄せるのには成功したのじゃが、グロリアだけを連れて行ってしまったのじゃ」
「何だって……!?」
「じゃからこれだけは言える、グロリアは元の世界に戻っている筈じゃ」
「そんな……」
愕然とするシャルロット……グロリアが生きていた事は喜ばしい事だが、シェイドに連れていかれたのだとしたらそれは由々しき事態だ。
「今の我らにグロリアをどうこうすることは出来なんだ……酷な様じゃがここは当初の目的達成を考えねばなりませんぞ」
「分かってる、そう何度も感情に振り回される訳にはいかない……元の世界に戻る方法が分からない以上、こちらの世界の魔王を倒す以外に選択肢はないからね」
デネブの叱咤に対して気丈に振舞ってはいるがどこか儚げだ。
横に座っていたベガが無言で優しくシャルロットを抱き寄せる……彼女の頬に一筋の涙が伝った。
「只今戻りました」
「あら、お帰り」
エイハブが偵察から戻ってきて焚火の側に座り手をかざす。
ベガが焚火に掛けてあったポットからカップにお茶を注ぎエイハブに手渡す。
「ありがとうございます、こんな南国なのに夜は冷え込みますね」
「知らないの? 夜更けには南国でも氷点下近くまで気温が下がる事だってあるのよ?」
「へ~~~そうなんですか……あっち!!」
「もう、お茶は熱いんだから気をつけなさいな……ところで偵察の方はどうだったの?」
「はい、こんなに暗いというのに街には灯り一つ灯ってませんでした」
「そう、思った通りね」
ベガは眉を顰める。
「やはり街に行かなくて正解ね、マウイマウイは既に堕ちているわ」
「ベガはこの事態を想定していたのかい?」
「ええシャル様、遠巻きに見た感じは城壁も無事で一見何事も無いように見えるけど恐らく内部は魔王軍の手に落ちていると見て間違いないでしょう」
「他の国や街は分かり安い程直接的に破壊されているのに何故ここだけ?」
「いい質問ね、じゃあ逆に聞くけど何でだと思う?」
「う~~~ん……他の街が破壊されている所に無事な街を見つけたら人々は助けを求めて集まるよね」
「半分正解……これは私たちをおびき寄せる為の罠よ」
「罠?」
シャルロットはきょとんとしている。
「何故って顔をしているわね、私たちはこれまで四天王を二人倒し、三人目にも会ってしまっている訳よね? 要するに存在と顔が割れてしまっているのよ……あのベヒモスとかいうデカ物を倒しきれなかったのは今となっては痛手だわ、きっとあいつからもう一人の四天王に連絡が言っている筈よ」
「君はマウイマウイにその最後の四天王が潜んでいると思っているのかい?」
「恐らくは……仮にそうでなくてもそれに近い手練れが潜んでいるでしょうね」
「だけど行かない選択肢はないよ、あそこには最後の三種の神器『現在の盾』があるんだから」
『私の妹の事もお忘れなきように……』
「そうだねサファイア、そちらも忘れちゃいけない……そうだ、二手に分かれようじゃないか!!
マウイマウイには潜入する関係上少人数の方が都合がいい……『現在の盾』は僕じゃないと動かせないから僕とエイハブとデネブで行こう
黄色い巨人はサファイアとベガで探してくれないか?」
「いいわ、その方が効率がいい様だしそれで行きましょう」
シャルロットの提案にベガがウインクをしながらそれに答える。
「分かりました、このエイハブ僭越ながらお供しましょう!!」
エイハブは胸を張り拳で叩く。
「儂は潜入には向いていないと思うのじゃが……」
確かに老人の身であるデネブには荷が重そうではある。
「何を言っているのパパ、あなたが秘匿魔法でサポートしないとこのそそっかしい二人ならすぐに見つかってしまうわよ?」
「酷いな……」
ベガの失言にエイハブは苦笑いを浮かべる。
「そうと決まれば明日決行だ!! みんな明日に備えて今日はもう寝てくれ!! サファイア、見張りを頼めるかい?」
「はい、仰せのままに」
焚火の傍らにサファイアが立ち、頭からアンテナを出し周囲を警戒する。
『やはり近くにいますねY3……しかし以前より魔力反応が弱まっている……こんなに近くに居るのに正確な場所が特定できないとは……これは急がねばなりません』
サファイアは一刻も早く妹であるY3を探したいところであったが、今はシャルロットの命令を遂行するのが任務……その場を離れる事は無く一晩中周囲の警戒に当たった。
翌日……。
「じゃあ行こう!! みんなよろしくね!!」
「はい!!」
「任せて」
『はい』
「やはり儂もいくのか……」
この期に及んで及び腰のデネブ。
「パパもいい加減観念することね」
ポンと背中をベガに叩かれる。
「さあ、サファイアちゃん案内して頂戴……その妹さんの所へ」
『はい、ベガ様』
ふたりはさっさと先に行ってしまった。
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