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第二章 首を突っ込み過ぎた?

第8話 わぁい!男の娘だらけの格闘大会 先鋒戦

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「そちらの提案を飲んだんだからこっちの提案も一つだけ聞いてくれないか?」

僕はイツキに頼んで一つだけ交渉してもらう事にした。

「なあに?言ってごらんなさい?」

「こっちの選手はそっちの選手を見てから決めていいか?」

銀髪赤ビキニは一瞬考える様な素振りをしたがすぐに

「いいわよそれくらい、その程度では私たちの優位性は揺るがないんだから」

何だそんな事と言わんばかりだ、見てろよその油断が命取りになるぞ。

「これで良かったのか?アキラ」

不安そうなイツキ。

「ああそれでいいよ、結構重要なんだ」

何故こんな提案をしたかと言うと、僕から見てこちらの戦力序列は…
イツキ>>ミナミ>ジュン=アイ って感じだ。
そして向うの戦力…見た目と物腰から勝手に僕が決めた戦力序列は…
女騎士>赤ビキニ>チャイナ=くのいち>チア こんな感じか…
あくまで僕の勝手な見立てだ、確証なんてない。
この作戦のキモは、うちのポイントゲッターであるイツキがいかに確実に勝利するかに掛かっている。
イツキが強い相手に負けてしまえばそれまでだし、逆に一発KOしてしまう様な相手だと残りのメンバーの負担が大きい。
だからイツキの対戦相手は弱すぎても駄目だし強すぎても駄目なんだ。
だからこその【後出しジャンケン作戦】だ、信頼性は正直微妙だが何もやらないよりはマシである。

「スミレ組から来ました、審判を務めさせて頂きます宮野ミノリ以下二名です」

紺色の女性用スーツを着た三人の男の娘(と断定しても良いだろう)が挨拶してくる、みんな眼鏡仕様、みんな同じ顔でおかっぱ、三つ子?

「スミレ組なんてのもあるんだな」

「トランスアーツのグループはバラ組とユリ組だけではニャいからな、他にもいくつかあるニャ、ユリ組の奴らがあまりに信用が無いからスミレ組から審判をワシが呼んだニャ!」

そう言って五人組の方を一瞥する、それはそうだ!さっきの件はだまし討ちに近い。

「まあ!人聞きの悪い!」

そう言う赤ビキニだが全く悪びれていない。

「ではルールの確認を行います!」

宮野審判長が大きな声で両チームに語り掛ける。

「両チームの代表者五人ずつで団体戦を行います、先に三勝を挙げたチームが勝利となります、但し統領級の人物の参加は認められません」

カグラとルナは参加できないんだな…それもそうか、レベルが違い過ぎるんだろうから。

「銃火器、刃物、鈍器等武器の類の使用は禁止です」

「サミング(目つぶし)、金的等の行為は反則負けとします」

男の娘に金的って有効なのかな?僕気になります。

「20m×20mのフィールド内での戦闘行為のみ有効です、場外に出た場合も負けになります」

「場外からの他者からの攻撃もその該当人物の属する選手の反則負けとします」

「各試合に制限時間はありません、基本的にノックアウトで勝敗を決めます、以上!」

「いよいよ決着が付くぴょんね!楽しみぴょん!」

いつの間にかユリ組陣営にルナがいた。
本当に神出鬼没だなあのウサギは。
ユリ組の五人が一斉にかしずく。

「よくおいで下さいましたルナ様、本日は完璧な勝利をあなた様に捧げましょう」

赤ビキニがいかにもな口上を述べる。

「ゲストも揃いました、では団体戦を開始しましょう!」

ピ――――ッ

審判がホイッスルを思い切り吹いた!開始の合図だ!

「じゃあ先鋒はチアキ、行ってちょうだい!」

「はいなの~!盛大にぶっ飛ばしてやるの~!」

赤ビキニの指示でチアキと呼ばれたチア男の娘がピョンピョン飛び跳ねながら出て来た。
ツインテールがビュンビュン動く。
胸を見ると膨らみが無い、どうやらまだトランスセクシャル化はしてない様だ、そうなるとこの子はまだトランスアーツを始めて日が浅いと言う事になる、やはり五人の中では一番格下?
よし!まずは予想通り。

「ミナミ!先鋒行ってくれ!」

「えっオイラ?」

すこぶる意外と言う顔をする、何で?

「オイラみたいな実力者をいきなり先鋒で使っちゃっていいのか?後で困らないか?」

コイツ自分で実力者って言いきったよ!
迂闊な事を言ってミナミのメンタルを乱すのも嫌だったのでここは…

「だからだよ!相手が探りで弱いヤツを出して来てるうちに勝っておきたいんだ!お前を信頼してるからこそさ!」

少なくとも間違った事は言ってない…

「お~!そう言う事ならいいぜ!そうか!作戦だったんだな、頭いいなア
キラは」

ちょろい!単純な奴で助かった…

パンパン!

左の掌に右の拳をぶつけながらミナミは試合場のフィールドに出る。

「アキラが信頼してくれた…これはまだ彼氏になってくれる脈があるって事だな?必ず勝つぜ!」

「ブホッ!」

思わず噴き出した!ミナミ何言ってやがる!あ~イツキの視線が痛い…

「ファイト!」

審判の宮野さんが腕をクロスする。
遂に先鋒戦が始まった!
チアチアキ(呼びづらい)はおどける様にフィールド内をポンポンをワサワサ鳴らしながら振り回しピョコピョコ動き回る。
ミナミは常にチアキを正面に捉えようとファイティングポーズを取ったまま動きを合わせていた。
恐らくあの体格だ、チアキもスピードファイターだろう、とは思う物の何かが引っかかる。
あの五人に共通して感じる不気味さ、得体が知れない。
チアキが急に直線的にミナミに突っ込んで来る!かなりのスピード、奇襲だ!ミナミも迎撃態勢に入る!
だがチアキはミナミの1メートル位手前でビタッと止まった!ビクっとミナミもその動きに釣られてしまい上体が起きてしまった!
チアキの急制動で慣性が働きツインテールが前方に飛び出し、鞭の様にミナミに襲い掛かる!

ドスン!

「あうっ!」

ビューンと先端に付いている大きなボンボリがミナミの両肩を左右から挟み込むように容赦なく打ち付ける!
苦痛でうずくまるミナミ。
あのツインテールの先端のボンボリ、きっと何か入ってる!いやそのもの自体に重量があるのか?
しかしチアキはそれ以上攻めて来なかった、折角のチャンスの筈なのに…
ヒットアンドアウェイが信条なのか?

「簡単に倒してしまっては面白くないの!ジワジワと嬲り倒してあげるの~!」

ケタケタ笑いまたピョンピョン飛び跳ねながら距離を取るチアキ、可愛い格好をして物騒な事を言う。
その後も何度かツインテールでの攻撃を繰り返すチアキ、ただ単調に繰り返すのではなく、緩急をつけたりタイミングをずらしてみたり、回転しながら突っ込んで来たりと攻撃パターンがまったく読めない!執拗に肩や腕ばかり攻めている。
あのツインテールは厄介だ、ミナミの片腕のリーチが45センチメートル位ならあちらは120センチメートルはある!
ミナミもなるべくかわすようには動いているのだが、ガードすることも多くどんどん腕にダメージが蓄積していき、とうとう満足にガード姿勢が取れなくなったのだ。

「あははは!これで腕を使った攻撃は使えないの!」

肩で呼吸するミナミ、相当なダメージと疲労だろう、腕はダラ-ンと下がっている。

「たっ…大したことないぜこんなの!空気の抜けたゴム毬をぶつけられてる位にしか感じね~よ!こんなんで音を上げてちゃ男の娘がすたるってもんだ!」

どう見てもやせ我慢に見えるのだがミナミの目はまだ光を失っていない、コイツ何かを狙っているのか?

「その減らず口!利けない様にしてあげるの!」

少しカチンと来たのかチアキはまっすぐミナミに突っ込んで行く!それを見てミナミも負けじと突っ込む。
挑発で相手を怒らせて判断を誤らせるのは勝負事では常套手段だが、どうする気だミナミ?
チアキはまたしてもミナミのアウトレンジで急停止、今度は上から振り下ろす様にツインテールを操る。

「おっと!大体予想していた通りだな!」

そのままミナミはスライディングに移り、間一髪ボンボリが地面にめり込む前にすり抜け、チアキの懐に入った!上手い!
しかしボンボリに殴られ続けたダメージのせいで一瞬攻撃の動作に遅れが生じた!

「甘いの!」

チアキは丁度目の前に現れたミナミの右の向う脛めがけてポンポンを持っている拳を振り下ろす!

ゴツッ!

「うああああ!!!」

とても硬そうな物で殴られたような音が響きミナミが右足を押さえて転げまわる!
まさか!あのポンポンにも仕込みが?

「残念なの!切り札は最後まで取っておく物なの!」

痛みに悶えているミナミを、渾身の力を込めたサッカーボールキックで蹴り上げるチアキ、ミナミは放物線を描いてバラ組陣営側に落下した。
あんな事を言っているチアキだが冷や汗をかき顔が少し引きつっている、正直かなり焦ったのだろう。

「さすがは【初見殺し】の異名を持つチアキ殿でござるな、これで一勝目は貰ったも同然!」

くのいちがほくそ笑みながら言う。

「あのトリッキーな動きには初見ではついて来れまいよ」

女騎士は相変わらずのポーカーフェイスだ。
僕らの目の前で大の字になって倒れているミナミだが、まだ意識を失ってはいない。

「ミナミ!」

「ミナミはん!」

「こんなにもボロボロになって!もういいよ!もう休んでくれ!」

もう見てられない!もう負けでいいだろう?ホントにもう休んでくれ!

「すまねえ…オイラはもう…だめだ…なあアキラ…オイラの…最後の願いを聞いてくれ…」

「何だ!?何でも聞いてやる!行ってみろ!」

「今度…デートしてくれ…」

「分かった分かった!デートでも何でもしてやるよ!」

「本当…だな?」

はっ!?しまった!つい勢いで!言ってしまった~!!

ドクン!

フィールドに横たわったままだがミナミの体からアニマの波動が噴出し柔らかな光を発する!
この感じ…学校の医務室で見たハルカさんのアニマヒーリングの光に似ている…!
徐々にミナミの胸が慎ましやかだが膨らんでいく!遂にトランスセクシャル化したのか!?

「みなぎって来たわ!!」

声が若干可愛らしくなっているような気がする。
ピョンとネックスプリングで飛び起き立ち上がるミナミ、完治とまでは行かないが幾分かはダメージが回復した様だ。

「まさか試合中にトランスセクシャル化を習得するとはニャ!実戦に勝る稽古なしだニャ!」

カグラも驚いている。

「何なの?何なの?チビのくせしてチアキより胸が大きいっていうの~?」

チアキが憤慨している?

「え?あれ?アンタまだトランスセクシャル化して無いんじゃないの?」

ミナミが問いかける。

「失礼なの!チアキは始めからトランスセクシャル全開なの!」

バラ組みんなの視線がチアキの胸に集中する。
ぺたーん…見事なまな板…本当にありがとうございました。

「なっなっなっ…!」

これ以上無いって言うくらい赤面するチアキ、お気の毒に…

「見るななの!恥ずかしいの!」

慌てて体をよじりポンポンで胸を隠すチアキ。

「おバカ!何やってるアル!!」

チャイナが注意するが、恥ずかしさのあまりチアキの耳には届いていない…
こんなチャンスをミナミが見逃すはずが無かった。

「ハイハ~イ!試合中によそ見はダメよ~!」

いつの間にかミナミはチアキの眼前まで迫っていた!さすがアニマ発動直後、身体能力にブーストが掛かっている!

「あっ…なの」

時すでに遅し、両足の間に右足を滑り込ませチアキの左足を思いっきり真横に払う!
チアキは大股開きで尻もちを付いた!

「痛いの~!」

急いでお尻を押さえるチアキ。

「これでアンタはオイラより小さくなったね!うらぁ!」

ゴツン!!

火花が散りそうなミナミの渾身の頭突きがさく裂!!
チアキはまるで相撲の又割りの様な格好で地面に顔面から叩き付けられ、そのままノックアウト!

「そこまで!勝者 バラ組 加賀ミナミ!」

宮野さんに右手を上げられるミナミ、一瞬痛そうな素振りをしたがすぐに笑顔を浮かべた。

「やるじゃないか!ミナミ!」

「よ~やった!お手柄やでミナミはん!」

「信じてましたで~ミナミはん」

大喜びする僕たちバラ組の面々!

「何であんな落ちこぼれに負けるピョン!恥をしりなさいピョン!」

相変わらず辛辣な言葉を投げかけるルナ、しかしチアキは地面に突っ伏したまま痙攣するのみだ。

この一勝は非常に大きい意味のある一勝だ!
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