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第6章
2 実家にて④
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「今年はクリスマスゆーこさんと一緒に過ごせた? あ、もう去年か」
「おかげさまで」
「彼氏ならアリなんだな」
「ぽい。でも特に何もしなかったよ、平日だったし。普段と同じように夜ごはん一緒に食べて、ちょっとイルミネーションとか見に行ってみただけ」
「イルミネーション」
晃輝はニヤニヤしながら視線を向ける。
「ほらもう~。お前すぐそういう顔する! だからあんまり話したくないんだって」
「そういう顔ってどういう顔だよ」
「ものすごい好奇の目」
「晃輝だけに」
「うるさいわ」
「プレゼントは?」
懲りずに前のめりで聞いてくるタフさは、晃輝の心地いい部分でもある。
「プレゼントは、事前に禁止された。お互いナシでって。優子さん、欲しいものは自分で買いたい派なんだって」
「めっちゃラクじゃん。あかりなんて、クリスマスくらい何かサプライズしろってうるさくて大変よ」
「サプライズ……。そう聞くと、そうじゃなくて良かったって思っちゃうな……」
俺としては、多少高いものでもいいから何かねだってくれてもいいのにな……という気持ちがあった。
優子さんに自分がプレゼントしたものを使ってほしいなって思うから。
でも、センスが優子さんの好みに合わなくてガッカリされても気まずいし、プレゼント選びはプレッシャーでもある。
そういうことを初めから全面回避させてもらえたのは、ラッキーなのかもしれない。
「感じのいい人だったなぁ、ゆーこさん」
「でしょ! そうなんだよ、もうなんか、にじみ出てるっていうか……」
「わかる。俺、ひと目見て、この人なら亮弥のいいところちゃんとわかってくれる! って直感したもん」
「俺のいいところって何?」
「う~ん……。顔?」
「顔かよ!! 優子さんじゃなくてもわかるわそんなの」
「お前、その発言けっこうヤバいぞ」
晃輝はそう言って大笑いした。
ただの自慢みたいになってたことに気づいて、俺はちょっとばつが悪くなった。
「俺にとってはコンプレックスなんだよそこは……」
「悪ぃ悪ぃ。まー、真面目な話、あれよ。お前の良いところは、毒吐かないところ」
「毒?」
「文句とか不満とか、全然言わないじゃん。だから一緒にいて不快になることがねーの」
「言わないか? 言う気もするけど」
「言わねーって。言ったとしても言ったうちに入らないくらい。毒がねーの」
「ふーん……。よくわかんねーけど」
「お前、あかりと一日一緒に居てみ? もう、出るわ出るわ文句と不満だらけよ」
「イヤ、戸田さんが絶対ムリなのは、高校の時点でわかってるし。でもお前は好きなんでしょ」
「文句言わない時は可愛いんだけどな~」
晃輝ははぁっとため息をついた。
でも顔を見ると、しょうがねぇよな、って感じで笑っているから、たぶんそこも許容済みではあるのだろう。
「大変だな、夫婦って」
「大変よ。まあでも、子供生まれるし、楽しみも多いけどな」
「そんなもんか」
「お前とゆーこさんは? 子供とかはもう厳しいんかね?」
「まぁなー。でも俺は別に子供欲しいって気持ちもないし、そもそも結婚してもらえるかもわからないし……」
「なんで? すればいいじゃん」
「優子さんには優子さんの生き方があるから、そんな簡単にはいかないよ。俺は優子さんと居られるだけで十分だと思ってるし」
「そんなもんかね」
「二人で過ごせる時間がもっと多ければいいなーとは、思うけどね……」
優子さんに会えるのは隔週末と、平日の夜にごはんを食べるのが月に二・三回。
このままのペースだと、一年で何回会えるんだろうと考えてしまう。
今朝までの三日間みたいに、ずうっと一緒に居られたら、最高に幸せなのに。まぁ、俺も仕事忙しいし、どっちにしてもそんな余裕ないのはわかってるんだけど……。
「あっちのほうはどうよ」
「え?」
「だからー、あ・っ・ち!」
晃輝が言わんとしていることを察知した俺は、踏み込まれる前にビシッと牽制した。
「そういう話はナシ! 絶対言わない!! お前に想像されたくないから!!」
「え~、なんでよ。熟女がどんなカンジか聞いてみたかったのに~」
「熟女?」
俺はその言葉に違和感を覚えて眉をひそめた。
「優子さんを熟女にカウントしないでくれる?」
「え、だって四十くらいだろ?」
「そうだけど、全然熟女って感じじゃないから。お前も見たでしょ、四十近いとは思えないくらいキレイだったでしょ?」
「まあ、顔はたしかに若くて美人だったけど、さすがに体はそれなりだろ」
「それが、全然なんだよ!」
思わず熱を入れて断言してしまった。
晃輝が好奇の目でニヤニヤしたのを見て、ハッと我に返る。
「とにかく、お前には教えらんない! 俺だけの秘密なんだから」
「いいじゃん、減るもんじゃ」
「減る!! つか正直うっかり口滑らせて自慢しそうだから、お前とこの話したくないの!」
「そんなに良かったんだ」
向かいの席でニヤニヤする晃輝を、俺はテーブルの下から何度も蹴った。
言えるわけない。
優子さんの肌が透き通るように綺麗だったことも、もっと弛(たる)んでるかと思ってた体は適度に引き締まって弾力さえあったことも、胸は大きくないけど形が良くてエロかったことも、何より、過去にそれなりの経験があったとは思えないほど反応がいちいち可愛かったことも、そのくせ色気が尋常じゃなかったことも……。
ハッキリ言って俺はやばいくらい優子さんの虜になってしまった。
四十歳くらいってあんなに綺麗で可愛いものなの?
違う気がする。優子さんが特別な気がする。
すっぴんだって、もっと年齢感じるかと思ったのに、シワらしいシワもないし。
シミは、こことこことって教えられたからあるのはわかったけど、全く気にならないし。
あと、本人はくすみとかたるみとかって言ってるけど、正直何のことかよくわからない。
一番気にしてるのはほうれい線らしいけど、それすらも角度によっては消えちゃうレベルの浅いものだ。
優子さんよりくっきりとほうれい線のある若い女子だって、普通にいる。
俺としてはほうれい線に気づくたび、優子さんも完璧じゃないんだと安心するし、むしろ愛おしいくらいだから、もっと年相応でも全然いいのになと思う。
晃輝は俺から少しでも情報を引き出せてそれなりに満足したらしく、戸田さんが待っているからと早めに帰っていった。
子供が生まれたら連絡して、と言ったら、写真送るわ、と嬉しそうな笑顔を見せた。
それとほとんど入れ替わりに両親が帰宅して、ルリちゃんは晃輝のお土産に目を輝かせて喜んでいた。
「おかげさまで」
「彼氏ならアリなんだな」
「ぽい。でも特に何もしなかったよ、平日だったし。普段と同じように夜ごはん一緒に食べて、ちょっとイルミネーションとか見に行ってみただけ」
「イルミネーション」
晃輝はニヤニヤしながら視線を向ける。
「ほらもう~。お前すぐそういう顔する! だからあんまり話したくないんだって」
「そういう顔ってどういう顔だよ」
「ものすごい好奇の目」
「晃輝だけに」
「うるさいわ」
「プレゼントは?」
懲りずに前のめりで聞いてくるタフさは、晃輝の心地いい部分でもある。
「プレゼントは、事前に禁止された。お互いナシでって。優子さん、欲しいものは自分で買いたい派なんだって」
「めっちゃラクじゃん。あかりなんて、クリスマスくらい何かサプライズしろってうるさくて大変よ」
「サプライズ……。そう聞くと、そうじゃなくて良かったって思っちゃうな……」
俺としては、多少高いものでもいいから何かねだってくれてもいいのにな……という気持ちがあった。
優子さんに自分がプレゼントしたものを使ってほしいなって思うから。
でも、センスが優子さんの好みに合わなくてガッカリされても気まずいし、プレゼント選びはプレッシャーでもある。
そういうことを初めから全面回避させてもらえたのは、ラッキーなのかもしれない。
「感じのいい人だったなぁ、ゆーこさん」
「でしょ! そうなんだよ、もうなんか、にじみ出てるっていうか……」
「わかる。俺、ひと目見て、この人なら亮弥のいいところちゃんとわかってくれる! って直感したもん」
「俺のいいところって何?」
「う~ん……。顔?」
「顔かよ!! 優子さんじゃなくてもわかるわそんなの」
「お前、その発言けっこうヤバいぞ」
晃輝はそう言って大笑いした。
ただの自慢みたいになってたことに気づいて、俺はちょっとばつが悪くなった。
「俺にとってはコンプレックスなんだよそこは……」
「悪ぃ悪ぃ。まー、真面目な話、あれよ。お前の良いところは、毒吐かないところ」
「毒?」
「文句とか不満とか、全然言わないじゃん。だから一緒にいて不快になることがねーの」
「言わないか? 言う気もするけど」
「言わねーって。言ったとしても言ったうちに入らないくらい。毒がねーの」
「ふーん……。よくわかんねーけど」
「お前、あかりと一日一緒に居てみ? もう、出るわ出るわ文句と不満だらけよ」
「イヤ、戸田さんが絶対ムリなのは、高校の時点でわかってるし。でもお前は好きなんでしょ」
「文句言わない時は可愛いんだけどな~」
晃輝ははぁっとため息をついた。
でも顔を見ると、しょうがねぇよな、って感じで笑っているから、たぶんそこも許容済みではあるのだろう。
「大変だな、夫婦って」
「大変よ。まあでも、子供生まれるし、楽しみも多いけどな」
「そんなもんか」
「お前とゆーこさんは? 子供とかはもう厳しいんかね?」
「まぁなー。でも俺は別に子供欲しいって気持ちもないし、そもそも結婚してもらえるかもわからないし……」
「なんで? すればいいじゃん」
「優子さんには優子さんの生き方があるから、そんな簡単にはいかないよ。俺は優子さんと居られるだけで十分だと思ってるし」
「そんなもんかね」
「二人で過ごせる時間がもっと多ければいいなーとは、思うけどね……」
優子さんに会えるのは隔週末と、平日の夜にごはんを食べるのが月に二・三回。
このままのペースだと、一年で何回会えるんだろうと考えてしまう。
今朝までの三日間みたいに、ずうっと一緒に居られたら、最高に幸せなのに。まぁ、俺も仕事忙しいし、どっちにしてもそんな余裕ないのはわかってるんだけど……。
「あっちのほうはどうよ」
「え?」
「だからー、あ・っ・ち!」
晃輝が言わんとしていることを察知した俺は、踏み込まれる前にビシッと牽制した。
「そういう話はナシ! 絶対言わない!! お前に想像されたくないから!!」
「え~、なんでよ。熟女がどんなカンジか聞いてみたかったのに~」
「熟女?」
俺はその言葉に違和感を覚えて眉をひそめた。
「優子さんを熟女にカウントしないでくれる?」
「え、だって四十くらいだろ?」
「そうだけど、全然熟女って感じじゃないから。お前も見たでしょ、四十近いとは思えないくらいキレイだったでしょ?」
「まあ、顔はたしかに若くて美人だったけど、さすがに体はそれなりだろ」
「それが、全然なんだよ!」
思わず熱を入れて断言してしまった。
晃輝が好奇の目でニヤニヤしたのを見て、ハッと我に返る。
「とにかく、お前には教えらんない! 俺だけの秘密なんだから」
「いいじゃん、減るもんじゃ」
「減る!! つか正直うっかり口滑らせて自慢しそうだから、お前とこの話したくないの!」
「そんなに良かったんだ」
向かいの席でニヤニヤする晃輝を、俺はテーブルの下から何度も蹴った。
言えるわけない。
優子さんの肌が透き通るように綺麗だったことも、もっと弛(たる)んでるかと思ってた体は適度に引き締まって弾力さえあったことも、胸は大きくないけど形が良くてエロかったことも、何より、過去にそれなりの経験があったとは思えないほど反応がいちいち可愛かったことも、そのくせ色気が尋常じゃなかったことも……。
ハッキリ言って俺はやばいくらい優子さんの虜になってしまった。
四十歳くらいってあんなに綺麗で可愛いものなの?
違う気がする。優子さんが特別な気がする。
すっぴんだって、もっと年齢感じるかと思ったのに、シワらしいシワもないし。
シミは、こことこことって教えられたからあるのはわかったけど、全く気にならないし。
あと、本人はくすみとかたるみとかって言ってるけど、正直何のことかよくわからない。
一番気にしてるのはほうれい線らしいけど、それすらも角度によっては消えちゃうレベルの浅いものだ。
優子さんよりくっきりとほうれい線のある若い女子だって、普通にいる。
俺としてはほうれい線に気づくたび、優子さんも完璧じゃないんだと安心するし、むしろ愛おしいくらいだから、もっと年相応でも全然いいのになと思う。
晃輝は俺から少しでも情報を引き出せてそれなりに満足したらしく、戸田さんが待っているからと早めに帰っていった。
子供が生まれたら連絡して、と言ったら、写真送るわ、と嬉しそうな笑顔を見せた。
それとほとんど入れ替わりに両親が帰宅して、ルリちゃんは晃輝のお土産に目を輝かせて喜んでいた。
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