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第4章
2 情報交換④
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夜、家族団欒や諸々を終えて二階の部屋に戻った。
久しぶりに家族水入らずで、両親は終始ニコニコしていた。
たまには帰ってきてあげないといけないなと思った。
一人暮らしを始める時に大抵の荷物は持っていったので、俺の部屋はほとんど空き部屋に近い状態になっていたが、帰る頻度が減るにつれ、徐々に物置と化しつつある。
俺の物と言えば、ベッドと、子供の頃から集めた大量のコミックスと、その本棚と、ゲーセンで取ってしまったプライズの山くらいだ。
俺はベッドに寝転がって、優子さんにメールをした。
"姉に話しました 最初は信じてくれなかったです"
すると、しばらくして返信が来た。
"信じてくれなかったんだ笑 愛美ちゃん、何て言ってた?"
優子さんなら大歓迎とか、がんばれとか言われたことを伝えるのは、優子さんにとってプレッシャーになるかもしれないと考えた俺は、"ビックリしてました"とだけ返信した。
優子さんは明後日から三日間お盆休みで、真ん中の日に会うことになっていた。何をして過ごすかはまだ決めていなかった。
"十四日どこ行きます?"
"暑いからあんまり外歩きたくないね"
"たしかに"
"夕方くらいから会って、カフェでのんびりする?"
それを読んで俺は焦った。
夕方!? 夕方だったら数時間しか一緒にいられない。
月に一度の大事なデートが、暑いからという理由でそんなミニサイズになるのだけは嫌だ。
"俺はもっと早くから会いたいですけど"
かといって、日差しを避けて昼間からどう過ごせばいいのか、代替案なんて俺にはなかった。
こういう時、優子さんが彼女なら「ウチに来る?」って言えるのに。
しばらく返事が止まった。
俺は内心、「早く会いたい」などと言ってしまってマズかったかとビクビクしていた。
でも、俺が優子さんを好きだというのはもう、当たり前の共通認識なんだから、遠慮ばかりしてたってもったいない。
そう考えて気持ちを奮い立たせながら優子さんの返事を待った。
"じゃあお昼ごはん食べてから、映画か展示でも観て、カフェでのんびりして、日が落ちたらお散歩でもするのはどう?"
さすが優子さん。
それが良い。
良いに決まってんじゃん!
今の間は、プランを考える間だったんだな。良かった!
"ぜひそれでお願いします!"
そう返信すると、"わかりました"と返事があって、メールは終わった。
展示か映画。
せめて何をやってるかくらいは俺も調べて、積極性を見せなきゃな。
そういえば、俺が好きな漫画の実写映画が公開中だから、優子さんが苦手じゃなければそれを観ても良いかもしれない。
あとは……上野でやってる展示で優子さんが好きそうなのを調べておこう。
こんなこと過去の俺は全然しなかった。
いつも全てが彼女任せだった。
やっぱり、自分が相手のことを好きだというのは重要だ。
好きだからこそ、会える時間を大切にしたくなるし、俺といて少しでも楽しんでほしいと思える。
最低なのを承知で言い訳させてもらえるなら、俺が過去の恋愛において、相手を彼女として積極的に大事にできなかったのは、ずっと優子さんのことが好きだったからだ。
心に想っている人がいるのに、他の女性に愛情を注げるほど、俺は器用じゃない。
結果、彼女らに対して不誠実になってしまったのは、本当に申し訳なかったと思うし、そんな事態を引き起こしたのは俺の意志が弱すぎたからで、もう絶対的に俺のせいなんだけど、それでも俺には俺なりに、どうにもできない事情があったのだ。
そのくらい、十八歳以降の俺の人生は、優子さんという一人の存在に囚われ続けてきたし、この先もそれは変わらない。
そして、その優子さんが、今はこんなに近くにいる。
この人を逃したら、俺の人生終わったも同然だ。
そんなことを考えながら、スマホで上野の展示を調べてみたが、どれが優子さんの興味を引くのだか、もう全くわからなかったから、俺やっぱりダメかもしれないと思い、まくらに突っ伏してふて寝した。
久しぶりに家族水入らずで、両親は終始ニコニコしていた。
たまには帰ってきてあげないといけないなと思った。
一人暮らしを始める時に大抵の荷物は持っていったので、俺の部屋はほとんど空き部屋に近い状態になっていたが、帰る頻度が減るにつれ、徐々に物置と化しつつある。
俺の物と言えば、ベッドと、子供の頃から集めた大量のコミックスと、その本棚と、ゲーセンで取ってしまったプライズの山くらいだ。
俺はベッドに寝転がって、優子さんにメールをした。
"姉に話しました 最初は信じてくれなかったです"
すると、しばらくして返信が来た。
"信じてくれなかったんだ笑 愛美ちゃん、何て言ってた?"
優子さんなら大歓迎とか、がんばれとか言われたことを伝えるのは、優子さんにとってプレッシャーになるかもしれないと考えた俺は、"ビックリしてました"とだけ返信した。
優子さんは明後日から三日間お盆休みで、真ん中の日に会うことになっていた。何をして過ごすかはまだ決めていなかった。
"十四日どこ行きます?"
"暑いからあんまり外歩きたくないね"
"たしかに"
"夕方くらいから会って、カフェでのんびりする?"
それを読んで俺は焦った。
夕方!? 夕方だったら数時間しか一緒にいられない。
月に一度の大事なデートが、暑いからという理由でそんなミニサイズになるのだけは嫌だ。
"俺はもっと早くから会いたいですけど"
かといって、日差しを避けて昼間からどう過ごせばいいのか、代替案なんて俺にはなかった。
こういう時、優子さんが彼女なら「ウチに来る?」って言えるのに。
しばらく返事が止まった。
俺は内心、「早く会いたい」などと言ってしまってマズかったかとビクビクしていた。
でも、俺が優子さんを好きだというのはもう、当たり前の共通認識なんだから、遠慮ばかりしてたってもったいない。
そう考えて気持ちを奮い立たせながら優子さんの返事を待った。
"じゃあお昼ごはん食べてから、映画か展示でも観て、カフェでのんびりして、日が落ちたらお散歩でもするのはどう?"
さすが優子さん。
それが良い。
良いに決まってんじゃん!
今の間は、プランを考える間だったんだな。良かった!
"ぜひそれでお願いします!"
そう返信すると、"わかりました"と返事があって、メールは終わった。
展示か映画。
せめて何をやってるかくらいは俺も調べて、積極性を見せなきゃな。
そういえば、俺が好きな漫画の実写映画が公開中だから、優子さんが苦手じゃなければそれを観ても良いかもしれない。
あとは……上野でやってる展示で優子さんが好きそうなのを調べておこう。
こんなこと過去の俺は全然しなかった。
いつも全てが彼女任せだった。
やっぱり、自分が相手のことを好きだというのは重要だ。
好きだからこそ、会える時間を大切にしたくなるし、俺といて少しでも楽しんでほしいと思える。
最低なのを承知で言い訳させてもらえるなら、俺が過去の恋愛において、相手を彼女として積極的に大事にできなかったのは、ずっと優子さんのことが好きだったからだ。
心に想っている人がいるのに、他の女性に愛情を注げるほど、俺は器用じゃない。
結果、彼女らに対して不誠実になってしまったのは、本当に申し訳なかったと思うし、そんな事態を引き起こしたのは俺の意志が弱すぎたからで、もう絶対的に俺のせいなんだけど、それでも俺には俺なりに、どうにもできない事情があったのだ。
そのくらい、十八歳以降の俺の人生は、優子さんという一人の存在に囚われ続けてきたし、この先もそれは変わらない。
そして、その優子さんが、今はこんなに近くにいる。
この人を逃したら、俺の人生終わったも同然だ。
そんなことを考えながら、スマホで上野の展示を調べてみたが、どれが優子さんの興味を引くのだか、もう全くわからなかったから、俺やっぱりダメかもしれないと思い、まくらに突っ伏してふて寝した。
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