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第1章
5 返事①
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「優子さんのこと、好きです―」
と、少し不安気な、でも真っすぐな瞳で亮弥くんは言った。
あっ、またやらかした……。
十八歳のキラキライケメンの告白を受けて、まず浮かんだのがその気持ちだった。
さすがに十二歳も年上の私にそういう気持ちを持つはずはないと思って油断していた。
恐らく私の態度が誤解を与えてしまったんだろう。
「あの、亮弥くん……」
「俺、優子さんに隠してたことがあって……」
「隠してたこと?」
「……今朝、いきなり姉に叩き起こされて、"私の代わりに優子さんとデートしてこい"って言われて、そこは本当なんですけど、でも姉、風邪じゃないんです。ピンピンしてるんです」
「え……」
「実は俺、優子さんに一目惚れしちゃってたんです。それで、姉にそのことを話してたから、気を回したみたいで……。あの、騙したみたいになって、本当にすみませんでした!」
そういうことだったか――。
どうりでおかしいと思った。愛美ちゃんが美術館に一緒に行くと言った時に違和感があったの、あれ当たってたんじゃん。
弟を代わりに行かせるっていうのも、不自然だと思った。
そういうことかぁぁ。
え、それで、亮弥くんが私に一目惚れ?? いやいやいやいや……なんで!?
あっ、そういえばさっき、超綺麗とか言ってた。あれって本気だったの!?
そんなことを考えていて、ふと我に返ると、亮弥くんは頭を下げたままだった。
「あ……、いいよ、謝らなくて。亮弥くんは何も悪くないから、ね」
肩を少し触ると、亮弥くんは目を伏せたまま頭を上げた。
「あの、とりあえず手を放してもらおうかな」
「いやです」
返事が予想外で、つい笑いそうになってしまった。
「は、放して逃げられたくないんでっ」
「あはは、逃げるって何。逃げないよ、子供じゃあるまいし」
「本当ですか……?」
こちらに向けられた不安気な視線に、かわいいなぁ、若いなぁ、今この場で中途半端にされたくなくて必死なんだなぁ、と愛おしさが込み上げてきた。
でも、それは人としての愛情で、胸が疼くような心浮き立つものではなかった。
そしてそんな気持ちのまま、まだ純粋に見えるこの子にキチンと返事を伝えなければいけないと思うと、一抹の絶望が胸を撫でるようによぎった。
亮弥くんは恐る恐る手を放して、黙ったままじっと私を見つめた。
「亮弥くん」
「はい」
「ありがとう、好意的に思ってもらえてすごく嬉しいです」
「え……!」
「でもごめんね、未成年の子と恋愛というのは、ちょっと難しいかなと思います」
「あ、ハイ……」
「私がもっと若かったら良かったんだけどね」
あはは、と笑ったけど、亮弥くんは切なげに眉を下げていた。
「応えられなくて、ごめんなさい」
突っぱねる感じにならないようできるだけソフトに、でも結論だと伝わるようにキッパリとした口調で言った。
悲しそうに目を伏せて、それ以上何も言わなくなった亮弥くんを見て、すっと手を握って慰めてあげたい気持ちになった。そんな顔しないで、大丈夫だよ、と。
でもそんな顔させてる張本人が、それを変えてあげることもできない立場で、中途半端なことをしたらダメだ。
「行こうか」
私はポケットに両手を封印して、駅に向かって歩き始めた。
「あの……!」
再び呼ばれて、足を止めて振り返った。
「もう……会えませんか?」
「……そうなるかもね」
「それじゃ、もう少しだけ……もう少しだけお話できませんか?」
困ったな、という気持ちと、少しホッとした気持ちと、半々だった。
それで亮弥くんが少しでも楽になるなら、そうしよう。
「わかった。それじゃ、カフェに入ろうか」
私はもう一度亮弥くんに背を向けて、駅ビルのカフェへと歩き出した。
と、少し不安気な、でも真っすぐな瞳で亮弥くんは言った。
あっ、またやらかした……。
十八歳のキラキライケメンの告白を受けて、まず浮かんだのがその気持ちだった。
さすがに十二歳も年上の私にそういう気持ちを持つはずはないと思って油断していた。
恐らく私の態度が誤解を与えてしまったんだろう。
「あの、亮弥くん……」
「俺、優子さんに隠してたことがあって……」
「隠してたこと?」
「……今朝、いきなり姉に叩き起こされて、"私の代わりに優子さんとデートしてこい"って言われて、そこは本当なんですけど、でも姉、風邪じゃないんです。ピンピンしてるんです」
「え……」
「実は俺、優子さんに一目惚れしちゃってたんです。それで、姉にそのことを話してたから、気を回したみたいで……。あの、騙したみたいになって、本当にすみませんでした!」
そういうことだったか――。
どうりでおかしいと思った。愛美ちゃんが美術館に一緒に行くと言った時に違和感があったの、あれ当たってたんじゃん。
弟を代わりに行かせるっていうのも、不自然だと思った。
そういうことかぁぁ。
え、それで、亮弥くんが私に一目惚れ?? いやいやいやいや……なんで!?
あっ、そういえばさっき、超綺麗とか言ってた。あれって本気だったの!?
そんなことを考えていて、ふと我に返ると、亮弥くんは頭を下げたままだった。
「あ……、いいよ、謝らなくて。亮弥くんは何も悪くないから、ね」
肩を少し触ると、亮弥くんは目を伏せたまま頭を上げた。
「あの、とりあえず手を放してもらおうかな」
「いやです」
返事が予想外で、つい笑いそうになってしまった。
「は、放して逃げられたくないんでっ」
「あはは、逃げるって何。逃げないよ、子供じゃあるまいし」
「本当ですか……?」
こちらに向けられた不安気な視線に、かわいいなぁ、若いなぁ、今この場で中途半端にされたくなくて必死なんだなぁ、と愛おしさが込み上げてきた。
でも、それは人としての愛情で、胸が疼くような心浮き立つものではなかった。
そしてそんな気持ちのまま、まだ純粋に見えるこの子にキチンと返事を伝えなければいけないと思うと、一抹の絶望が胸を撫でるようによぎった。
亮弥くんは恐る恐る手を放して、黙ったままじっと私を見つめた。
「亮弥くん」
「はい」
「ありがとう、好意的に思ってもらえてすごく嬉しいです」
「え……!」
「でもごめんね、未成年の子と恋愛というのは、ちょっと難しいかなと思います」
「あ、ハイ……」
「私がもっと若かったら良かったんだけどね」
あはは、と笑ったけど、亮弥くんは切なげに眉を下げていた。
「応えられなくて、ごめんなさい」
突っぱねる感じにならないようできるだけソフトに、でも結論だと伝わるようにキッパリとした口調で言った。
悲しそうに目を伏せて、それ以上何も言わなくなった亮弥くんを見て、すっと手を握って慰めてあげたい気持ちになった。そんな顔しないで、大丈夫だよ、と。
でもそんな顔させてる張本人が、それを変えてあげることもできない立場で、中途半端なことをしたらダメだ。
「行こうか」
私はポケットに両手を封印して、駅に向かって歩き始めた。
「あの……!」
再び呼ばれて、足を止めて振り返った。
「もう……会えませんか?」
「……そうなるかもね」
「それじゃ、もう少しだけ……もう少しだけお話できませんか?」
困ったな、という気持ちと、少しホッとした気持ちと、半々だった。
それで亮弥くんが少しでも楽になるなら、そうしよう。
「わかった。それじゃ、カフェに入ろうか」
私はもう一度亮弥くんに背を向けて、駅ビルのカフェへと歩き出した。
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