ヒアラ・キュアー

るろうに

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2章

63話 獣人の歴史

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「ほら、そこに座ってにゃ。とりあえず今の状況を説明するよ」

「はい…お願いします」

リナはヒアラとキュアーを座らせると自分も対面の椅子に腰掛け話し始めた

「まず私達が何者かってところだけど、それは一般の研究者で間違いはないにゃ。ただその研究の内容が、獣人を生み出した人間に対する復讐の方法なんだよね」

「え…ふ、復讐ですか!?それはまた物騒な…」

「他国から獣人の国がどう思われているのか分からないからね。私達を敵に回すことの愚かさを教えてやるんだにゃ」

「その…生み出したっていうのは確か歴史上だと数百年前のはずでは…?」

「そうにゃ。数百年前の復讐を今果たすのにゃ。だから今の人間は関係ないという獣人の平和思想の人達と対立して3年前1度獣人同士での対立があったのにゃ。その戦いは復讐者側の核となる天啓持ちの子を連れ出されたために平和組の勝ちだった。」

「3年前って確か…」

「マホロくんとスズハさん?とアカネって人はその時平和組にいたんだよね」

「…なるほど。色々と繋がったかも」

「じゃあじゃあ!リナさん達は今の人間は獣人の起源には関係ないと分かっているけどその上で攻撃を仕掛けようとしてるってこと?」

「キュアーちゃん…その通りだけどあんまりはっきり言われると流石に罪悪感無いわけじゃないからやめて欲しいかにゃ~…」

リナはどこか少し申し訳なさそうな表情を見せる

「リナさん!やめましょうよこんなこと!今更こんな事しても意味無いって言うのは皆さんがよく分かってるはずでしょ?」

「…ごめんヒアラちゃん。それは無理なお願いにゃ」

「どうして?」

「…それはね、これを見てほしいのにゃ」

リナは向かいの椅子から立ち上がると2人をさらに奥の部屋へと案内した

その部屋は長い1本の通路と、その両端に黒い柱が何本も立ってる異様な部屋だった

「ヒアラ…なんかここ不気味で怖いよ…」

「うん…」

「ここは私達が復讐の糧としてる大事な場所。ラッドさんの先代から継がれてきて私達以外の誰にも見せたことは無かったけど、君達には見せるね」

そう言うとリナは部屋の奥の機械を操作する。

すると次の瞬間、黒い柱と思っていた物はその影が消え研究などで使われるカプセルになった

「!?」

中にはホルマリン漬けになったが全てのカプセルに入っていた

それはどれも人間や獣人でもなく、異形の化け物だった

「なに…これ…」

見るのも恐ろしいようなそれらは子供から大人まで様々なサイズで展示されていた

「これはね、その研究で失敗した被検体だよ。水の入ったカプセルに入ったまま捨てられてたのを回収して保存してるんだにゃ」

「……」

「分かる?ヒアラちゃん、キュアーちゃん。この人達が獣人が生まれた裏側だよ。人の骨や筋肉、内蔵ってさ、急激な身体の変化に適応できるわけ無いんだにゃ。それなのに異種の細胞やホルモンを大量に体に含まされて…アニメや漫画で体が変身する種族がいるけどあんなのは無理な話、これが現実だにゃ。頭蓋骨は変形の過程で砕け、手足の骨は皮膚を突き破り筋繊維は伸縮に耐えられず破壊される。内蔵も骨や筋肉に圧迫されてまともな機能を停止し…最終的には…」

死に至るーー。

「……」

酷い…これが本当に生きてる人間で行われた実験だと思うと腹の底から煮えたぎるような怒りが湧いてくる

「それだよ。その感情だにゃ。結局皆この事実をよく知るか知らないかの差でしかない。私達だって悪者になりたいわけじゃないにゃ。ただ獣人という種族をもっともっと尊重して欲しい。ただそれだけなんだにゃ。それなのに…」

「それなのに何も知らない人間が多いから復讐を…?」

リナはだって俯きながら震えを抑え続けた

「それだけじゃない…人間が生み出した癖にそれを知らない今の人間は私達の見た目を差別し軽蔑する奴らもいる!…なんなんにゃ…私達が何したっていうんにゃ…望んで産まれたわけじゃないのに…」

震えながらリナはさらに奥の部屋へと入っていく。

私とキュアーはそれについて行くと先程と同様の部屋でまた同じようにカプセルが並んでいた。しかしそれは先程のような痛々しい異形の姿ではなく、人間と動物の四肢を合体させたようないびつな存在だった

「これは後天的に細胞やホルモンをいじろうとしてダメだと分かった人間が移した次のフェーズの実験体にゃ…卵子に直接動物の精子を受精させ産まれさせた不完全な獣人…」

それらは顔は人間で体が犬や猫、また胴だけ人間で顔や四肢が鳥になっているなど、その他にも多種多様な組み合わせで異形になっていた。どれも実在する生き物として見るには息が苦しくなるようなキメラ的存在ばかりで自分達と同じように産まれてくるはずだった儚い生命と思えば心が地の底に落ちてしまいそうなほど辛くなった

「もちろん体外受精だけじゃない…哺乳類同士の場合人間の男性が動物のメスに異種姦する事もあったし…その逆も…。どんなに泣き叫び助けを懇願しても逃げられない密室の中でそれが行われていたと考えてみて…それを許せるにゃ?…私には無理。この溢れ出る怒りの感情を少しでも鎮めるには復讐するしかないのにゃ!分かってくれるでしょ?ヒアラちゃん!キュアーちゃん!」

言葉が出なかった。今の自分では何も出来ない巨大な壁を前にするとここまで無力感になるものなのか…

「リナちゃん…獣人達が話すのも辛いくらい酷いことをされてきたのは分かったから、もう話さなくていいよ。落ち着いて?」

キュアーは動揺しながらも興奮するリナを落ち着かせるように宥めようと肩に手を添える

「ありがとう、キュアーちゃん」

「うん、それで…ごめんね?関係なかったらあれなんだけど私達を待ってたみたいなのはなんだったのかな?」

そういえばそんなこと言ってたな。キュアーにしては珍しく鋭いことを聞くな

「そうだね。話さないとだよね…。半年前にね?助言を受けたんだよ」

「…助言?」

「調停者って名乗る謎の人だったんだけど、『今の苦しみから解かれたければ人間と精霊の力を宿す少女の力を借りろ』って言われたの」

人間と精霊の力を宿す少女…?キュアーの事かな?

キュアーの方を見ると、同じことを思ったのか私と目を合わせて小さく頷いた

「それってキュアーのこと?」

リナはしばらく黙っていたがゆっくりと、さらに奥の部屋へと入った

「………?リナさん?」

2人が黙ってついて行くと入った部屋は真っ暗で何も見えなかった

「な、なにここ?リナさん!?」

次の瞬間入ってきた扉が勢いよく閉まり、鍵がかかる音がした

「ひぃぃ!?なになに!?扉しまったけど!ヒアラ!?」

「私は何もしてないから!」

あたりはまるで見えないが、その部屋には物が無いようで2人の声が不気味に響く

「…その調停者が言ったのはキュアーちゃんの事じゃないにゃ」

「リナさん!?どこにいるんですか!電気つけてください!」

ヒアラがたまらず声を上げると勢いよく、それでいて静かに部屋の電気が点く

「眩しっ!!何!?」

眩しさでよく見えない中うっすらと目を開けて目を凝らすとその空間は2人を隔離するようなガラスの部屋で、リナはその向こう側で何やら機械の前に立っていた

!?な、なにこれどういうこと…?

「ごめんね、ヒアラちゃん、キュアーちゃん。調停者から言われたその少女はきっと…」

ーーーーヒアラ・キュアー。

リナが機械のボタンを押したその瞬間、部屋は眩い輝きに包まれた
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