ヒアラ・キュアー

るろうに

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2章

61話 空っぽの世界

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ヒアラとキュアーがマホロ達と合流する少し前…

まずい!2人が何か悪いことに利用されてしまう!何とかマホロさんに連絡を…!

「!?テレパシーが届かない?」

それに…なんだか体が重い?

「ふふふ、良かった…いくら最強のスズハさんでも動揺して感情が揺らぐことはあるんですね」

「おぉ!流石サイミっち!感情が揺らいだ瞬間に全てとは行かなくても催眠で体の自由を奪ったんだね!?」

「能力と身体機能を抑えるのがやっとですがね…少しは大人しくして貰えるでしょうそして面白いのはここからです…よっ!」

サイミは立ち上がり手を上げる

「まさか!」

その瞬間後ろから正面に一瞬で回り込んだノノがスズハに強烈な蹴りを浴びせた

「あぁっ!ぐっ…!ノノさんを利用するなんて…これは獣人の復讐を別にしても性格が悪いですよ!」

「ふふふ…それはどうも…催眠に目覚めた瞬間からどんな時も常に罪悪感とは戦ってきましたからね…もう慣れっこなんですよ!やりなさい!ノノさん!」

操られているとはいえ天啓で速さを増した攻撃は一撃一撃がスズハに大ダメージを与えた

「がはっ…!やめて…ノノさん…」

外に放出する魔法が使えない今出来る限り全力の力で体内の魔力を防御に回しているけれど…それも長くは持たない!

「ノノさん…目を覚まして…ノノさん!」

「………」

しかしスズハの呼び掛けも虚しく光を失った目のノノは無感情で殴り、蹴り続ける

少しでも…ほんの少しでもノノさんに私の魔力を伝えられることが出来れば…触れた瞬間に伝えることが出来るはず…

それなのに…触れる瞬間が速すぎて狙えない…!集中しないと…

「目を覚まして…下さい…ノノ…さん…」

スズハは少しでも集中するために外に向ける意識を遮断した

「…ん?リードさん、スズハさんぐったりしちゃいましたけど、意識失ったんですかね?」

「ありゃ、そうかもね…さすがにやりすぎちゃった?でも私達が攻撃しても貧弱すぎるしこんくらいでいいんじゃない?」

「…そうですね。催眠で体を拘束してるとはいえ倒れる時は崩れ落ちますから、立ってる以上まだ警戒は続けましょう」

リードとサイミは元々戦闘員では無いため万が一術が効かない敵が現れた時はいつもこうして傍観しているのである

ーーーその頃、ノノもまた戦っていた

暗い世界。何も無い、ここは確か…以前も見た精神世界…?

「現実の俺はどうなってるんだ?催眠された瞬間に認知は出来たのにその瞬間気を失って気づいたらここにいた。いや、意識が精神世界に飛ばされたのか?」

「いや、飛ばされた訳じゃなくてノノの防衛本能が無意識に解決策を見出そうとして精神世界に降りてきたんだよ」

聞き覚えのある声…この声のする方を見てみると、いつか見た女の子が立っていた

「久しぶりだね、ノノ。私のこと覚えてる?」

「確か刹那の天啓の…」

「そうそう!まだ使いこなせてないみたいだけどどう?感覚的には慣れてきた?」

「んー、まぁぼちぼち…」

「あはは、そうかそうか!」

少女は久しぶりに顔を見れて嬉しかったのか少しテンションが高かった

「君はもう成仏…的な?感じになったのかと思ってたけどまだいたんだ。なんで俺の中にずっと居るんだよ」

「あーそこはまぁ、心地よかったから?」

「……」

「そんな迷惑そうな目で見ないでよ…あっ!てかさ、あれどうなった?忍者!」

「あー、君に言われたやつか…あれは結論から言うと上手くいかなかったよ。なんだか皆に今更見せるのも恥ずかしいなって」

「ふーん…。そっか、ノノにもそんな仲間が出来たのかぁ。良かったじゃん」

「うん…」

少女は素直な言葉を送ってくれたが、どこかしっくり来なかった

「…?どうしたの?なんかパッとしない顔じゃん。この状況を解決する策でも考えてる?それとも…その悩みはこのと関係があるのかな?」

「!?」

「ふふ、なんだそんなことか!満たされない気持ちってのは怖いよね」

私も分かるよ…死んでからも意思を持ち続けるこの魂の在り処がどこなのか、何が満ちれば私は成仏出来るのか、常に心のどこかに空いた穴が埋まらずに苦しいから

「前の自分らしさの忍者が不正解だったという事はもう自分の意思はあるって事でいいのかな?」

「…それも分からない。感情がうまく説明出来ないんだ」

「なんだよそれ~、めんどくさいやつじゃん!んー、じゃあ!最近女の人と一緒にいた時感じてたあの感情!あれは分かるかな」

「…え?スズハさんの事か?感情?なんの事だ?」

「…はぁ、ほんとに鈍感系主人公ってやつなのか?ダメだこりゃ、恋にすら気づいてない」

少女はなんだか最初に会った時よりもフランクな感じで幽霊のアドバイザー?的な感じより友達に近い感覚に陥る

「なんだそれ、俺はお前と友達にはなったがそこまでフランクに話す仲じゃないぞ」

「もうっ!なんでそんなこと言うかな~」

…ん?なんだこれ、勝手に口から言葉が漏れてくる

俺はこの子をお前って呼ばないし友達になったなんておもってもないぞ

…不思議な感覚だ。まるで物語の中というか、劇の中に入り込んだようなふわふわした感覚

「そういえば君は探索者になりたいって言ってたよね」

「ん?あぁ、まぁそうだな」

「じゃあもうさ、強さを求め続けるしかないんじゃない?そうすれば大事なものも見つかるかもしれないよ」

「強さは当然求めるけど…求め続けるってほどなのか?」

「うん!だって私も探索者になろうと思ってるしね。私を守れるくらい強くなって!それと私も一緒に強くなりたいんだ。だめかな?」

「なるほど。ダメってことは無いがたしかにそれは危険だな。人を守れる強さを手に入れる。か…」

「うん!だからさ、

その瞬間、はっ!と無意識に会話をする自分と分離したような感覚に陥った

「ノノ。記憶思い出した?」

「え…今のは俺の記憶?全然覚えてなかった。じゃああの女の子はハナか…?」

「ハナ…?」

「ん?あぁ、俺の友達のハナだ。前に過去と向き合った時に…って、あれ?あの過去は結局どうなったんだっけ…」

「………」

少女は何か引っかかったようで少し考えたように俯いた

「ん、あれ?どうかした?」

「…え?あぁ、なんでもないよ!気にしないで。この前過去と向き合ったのはノノの力を発揮するためのただのきっかけだったんだよ。だから正確には過去を変えたわけじゃないんだ。だから今のノノの記憶に詳しい事は残ってないと思う。でも確かに上手くいったあの世界にも未来は存在する。今見たのはその未来の記憶なんじゃないかな」

「ん、難しい言い方をするなぁ」

「細かいことはいいの!分かりやすく言えばノノの中に分岐点が生まれて、今のはその時に生まれたパラレルワールド的な存在の記憶ってこと!」

「パラレルワールド…平行世界的なやつか」

「そそ!…で?今度は自分が何をするべきか分かった?」

何をするべきか…それは…

「誰かを守るための強さを手に入れる。…これまでの俺は仲間と居ることに満足してより強さを追求しなかった。でもこれからの戦いではそれじゃダメだよな」

「…スズハさんだけじゃなくて皆を守るための強さだよ。それがノノが生み出された意味だから」

「…生み出された意味?」

少女は思わず聞き返された言葉の意味が最初分からなかったように少し停止していた

「え、あれ?私何言ってるんだろ…」

「…まぁ、言い方としてはその方が使命感あっていいよな。それこそ正義の味方っぽい」

「うん!そうだよノノ!だから頑張って!ノノはもっともっと強くなれる!刹那の天啓もちゃんと使いこなしてね?速さもまだまだ限界はないんだから!」

「うん!…で、どうすればいいんだ?」

「大丈夫、もう迎えが来るよ。あなたを守ろうとしてくれる人、そしてあなたが守らないといけない人が」

「え?」

するとその言葉が聞こえた瞬間真っ暗な精神世界に降り注ぐ天からの光の柱が差し込んだ

「ノ…さん…ノノさ…ん!ノノさん!」

声が聞こえる…スズハさんの声だ。暖かい光、自分より他人に与える心の温かさがここまで暖かくなることってあるんだな

「さぁ、ノノ。手を取って」

少女に言われた通り光に手を伸ばすと光の手が強くノノの手を掴む

「スズハさん!ごめんなさい。今行きます!」

ノノは強く踏み込むと光に向けて大きく飛び上がった

「ノノー!また会おうねー!困ったらいつでも相談においで!」

「うん!ありがとう!…えっと…名前は…」

「私の名前は…」

しかしそのあとの言葉は現世に戻される際の光に包まれて聞こえなかった

「ハナ…か。」

ノノが消えた精神世界の中で1人、少女は呟いた
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