ヒアラ・キュアー

るろうに

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2章

53話 交錯する思惑

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ヒアラとキュアーが特訓を終え宿に帰った頃、ちょうどその頃戦争を2日後に控えたノノとスズハは各国を周り情報を確認していた

「はぁ…なんというか、俺たちが聞けるレベルの話じゃ中身がありませんね」

「そうですねぇ…調べるとは言ったものの私達はただの一般人と同じですから正規の方法じゃ戦争に関わる事や各国の代表に会うことなんて不可能に近いですよね…」

なかなか一筋縄じゃいかない状況が続いていたが、正直な話それはそうなのだ。ノノは当然、スズハも慣れてそうな話をしていたがこんなまともな戦争に関与、ましてや事前偵察みたいなことなんてしたことが無いのだから裏ルートや情報を盗む方法なんて分かるはずがないのだ

「よ~し!こうなったら隠密作戦で行きましょう!ノノさん!今こそ忍者の出番です!」

「ほぅ…それはやるしかないでござるな!」

「…あれ?ござる系じゃないって言ってなかったですか?」

「今のはネタじゃないですか!」

「ふふ、そんなの分からないですよ~」

たわいもないやり取りで少し気持ちを和ませると、スズハは落ち着いて透明化のスキルを使用した

「ノノさん。ここからはお互い離れて行動しましょう。そのために…手を握ってくれませんか?」

「え、えぇ!?手を!?そ、そそそんなことしちゃっていいんですか?」

「…?いや、魔力を繋いでテレパシーが出来るようにするだけですよ?」

「あ、あぁ…そうですよね…」

なんだ…そういう事かと肩を落としつつノノが手を差し出すとスズハは優しく包み込むように両手でぎゅっと握ってくれた

「…はい。これでノノさんの魔力とリンク出来たのでテレパシーが使えるようになったと思います。試しに脳内で私に話しかけてみてください」

え…ど、どうすればいいんだ?頭の中でスズハさんをイメージして話しかけてみればいいのか?

(…スズハさん、聞こえますか?)

(ふふふ、聞こえてますよ。大丈夫そうですね。これはどんなに離れてても聞こえますのでいつでも連絡してくださいね)

(分かりました!俺は速さを活かしてアジア連合の各国に侵入してきます!)

(では私はロシアの方で)

本格的な戦争開戦まであと2日…何とか間に合ってくれたらいいが…

しかし、別れて少ししてアジア圏に侵入したところでノノは何か異変に気づいた

ん?なんだ?軍か…?兵士達が沢山集まってるな

そこには数百人の兵士がずらっと並んでいる景色が広がっていた。大規模な戦争にしては少なすぎるので恐らくほんのひと握りか、先遣隊か何かだろうか?

「…少し様子を見てみるか」

透明化しているため特に隠れることはしなかったが、気配を気取られないよう離れたところから様子を伺ってみると、なんだか現場は異様な雰囲気に包まれていた

兵士1人1人の表情にはどこか生気が無いような不気味な雰囲気だった

「…これは、なんというか…変だな。まぁこのご時世戦争なんてそもそも起きることが無いし兵士もやる気が無いのかな?」

しばらく観察を続けたがとりあえずこの現場に長居しても仕方がないため一旦離れることにした

音速で走るノノがアジア連合の各国を偵察するのに丸一日と時間はかからずに夜には終わったのだが、どこの国も同様の問題が起きていた

「どういう事だ…?戦争の拠点となるであろう基地には国のお偉いさんのような人物も軍の上層だと思われる人物も出入りしていた。なのに大統領や王はその事実を認知していないように思える…」

どこで情報の乖離が発生しているのか…
完全に任せるような案件でもないだろうし…というか、国同士の戦争規模なのに明らかにおかしい事が沢山あるぞ?
まず民間人はこの情報を知らない可能性が高い。SNSやテレビ等はこの戦争のことを全く報道していないし、思っていたより大規模じゃない…軍やその道の関係者しか動いていないように思える…。

「宣戦布告までしたんじゃないのか?大統領とかには伝わるだろ。いや、もし伝わってないとしたら逆になんで獣人達はその情報を掴めたんだ?」

考えることが多くてだんだん頭がおかしくなってきそうだ。とりあえずスズハさんに連絡を入れよう

(スズハさん。ひとまず各国の偵察終わりました。夜になってしまいましたが、情報自体は十分だと思います。あとは整理さえすればって感じです。)

ほんとに届いているか少し心配だったが…スズハからのテレパシーは案外すぐに帰ってきた

(ありがとうございます。ノノさん。私の方もある程度情報を集めて獣人基地に戻っているところです。これから帰って来れますか?ノノさんならそうかからないと思いますが)

(そうですね。今インド北部なので3時間くらいで着くかと!モンゴルとカザフスタンとロシアの境目くらいでしたよね?)

(そうです~!テレパシーで魔力が繋がってるので近くになれば分かるはずですので!待ってますねぇ)

待ってます。か、なんだかソワソワしちゃうや

「さて、速攻で帰りますか!」

ノノは再び音速で帰路についた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…やっと見つけた」

その頃マホロはついにシュリを誘拐した犯人のアジトを突き止めることに成功していた

「この地下洞窟、アニマストみたいに広くないかわりに1度迷い込んだら二度と出れなくなるような巨大迷路だったのか…」

マホロは守る事以外は器用では無いので能力で迷路の正解ルートを探す等の芸当ができなかった。それなので丸々2日もかけて全ての穴という穴を壁で塞ぎながらついにたどり着いたのだ

「…もう20時か。犯人もこんだけの迷路を仕掛けてるんだ。少しは油断すると読んで25時頃に夜襲を仕掛けよう。」

マホロはシュリの魔力を強く感じる扉のすぐ近くの空間に壁を生成し小さな部屋を作って休息をとることにした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しかしその晩、ここ最近ずっと動き続けていたことが原因か、マホロは思わずぐっすりと眠ってしまい、目を覚ました時には次の日の昼になりかけていた

「はっ!」

夢の中でなにかに強く呼びかけられた気がした。なんだ?今どういう状況…

目を覚ましたマホロはあまりにもぐっすり寝過ごしてしまったためすぐ頭が回らなかった

「…ん、シュリっ!?そうだ!早くシュリを…!」

大丈夫、まだ魔力は感じるし安全装置も発動していない!…しかし、身を隠していた壁を隠そうとしたその時、何者かが入り口の方に近づいているのを感じた

「いや~、ほんとに解析するの大変だったにゃ~」

「随分お疲れだな。だがこれでついに私達の悲願が叶う時が来るぞ」

「うん。きっとあの子たちは来る。ヒントも出しといたし、あとはタイミング次第にゃ」

歩いてきたのは2人。どちらも獣人のようだ。…誰だ?男と女なのは間違いないがそれ以上は分からないな…流石に強力な天啓持ちだった場合面倒だ。俺以外はまだアニマストにいるのか?援軍を呼ぶか…

マホロは2人が扉の奥へ入っていくのを確認するとヒアラ達に連絡を取ることにした

『はいはいー!こちらヒアラの携帯ですがキュアーですー!どちら様でしょうか~?』

「…キュアー、みんなは近くにいるか?」

『えっ!?マホロさんじゃん!いやそれがいないんですよ!ちょうど朝スズハさんから連絡があって戦争を止める作戦に参戦しようとしてたところなんですが!』

「…待て待て。情報量が多い。戦争ってなんだ?こっちも急を要する援軍が欲しいんだが…」

『あー、そうですよね把握出来てないですよね!…ってかマホロさんも厄介な事に巻き込まれてるんですか~!?ちょっと待ってくださいね…ヒアラ~、あっ聞こえてた?どうする?』

キュアー…緊張感が無いな。今2人は準備している所なんだろうか、スズハの援護がない以上2人には来てもらいたいのだが…

『あっ!すみませんそっちの用事ってちなみに…』

「シュリ…クナイが誘拐された。今すぐ助けられる位置にいるんだが敵が多そうなので援軍が欲し…」

『行きまーす!どこですか?…あー、魔力追えそうです!…遠すぎませんか!?すぐ行きますね!』

クナイの名前を出した途端食い気味に答えたキュアーはすぐに電話を切った

大丈夫だろうか?せめてスズハにも連絡はしとくか…

(スズハ…戦争ってなんだ?)

マホロとスズハは昔からの付き合いなので既にテレパシーを繋げている。しかし基本マホロはあんまり喋らないので滅多なことがない限りスズハからマホロに繋げることは無いのだ。

(あら、びっくりしましたよ。珍しいですね。マホロさんの方から連絡してくれるなんて。戦争はですね、ロシアとアジア連合がやり合うらしいのですが、もしぶつかってしまうとアニマストに多大な影響を及ぼしてしまうため始まる前に止めようと思ってるんです)

(なるほど、理由とかめんどいことは聞かないけどヒアラとキュアーの援護はこっちが貰っていいか?クナイが誘拐されてそっちを先に終わらせたい。終わったら合流するから)

(クナイさんが…分かりました。先程電話でこちらに呼んでしまったのですけれど、そちらから連絡出来ますか?)

(大丈夫。もうしてる)

(分かりました。では、私達も戦争を明日に控えているのでここらへんで)

(明日には終わらせる)

…難しいことはよく分からないが、戦争なんて面倒事になんですぐ突っ込んでいくんだ

マホロは少し落ち着いてヒアラとキュアーを待ちながら持ち歩いていた携帯食料を食べていた

「…シュリ、もうすぐ行くからな」

しかし、嵐の前の静けさも長くは続かなかった

「っ!!」

ブツっと何かが弾けたような感覚が全身に渡る。これは…

「…安全装置が作動した!?シュリ!」

囲んでいた壁を壊したマホロは目を閉じてシュリの気配を探る

「…ここ!」

マホロが手をかざし力強く握ると次の瞬間洞窟の壁が崩れシュリまでの一直線を作った

「扉を破るのはいつだっていいことないからな…今行くぞ!シュリ!」

シュリの危機に、合流前のマホロだったが1人敵の待つアジトへと乗り込んでいった
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