ヒアラ・キュアー

るろうに

文字の大きさ
上 下
23 / 75
1章

21話 規格外

しおりを挟む
「あれだけの次元龍をたったの一撃で全てだと…!?馬鹿な!!ふざけやがって…!!こうなったら…あいつを出すしかない…俺にも制御出来ないから実戦投入はまだ早いと思ってたが…そんなの知らねぇ!全部破壊してやるぜ!!」

アグナはマホロに閉じ込められた壁の中で静かに詠唱を始めた

「!?なに…?まだ何かあるの?」

「闇夜に禁じられし古代の龍よ…その禁忌を解放し終わりなきこの世界に終焉しゅうえんをもたらせ。…覇王龍!!」

アグナが詠唱を終えると次の瞬間地面に大きな亀裂が発生しだした

「地震!?なにこれやばい!みんな逃げて!!ノノー!」

ヒアラ達4人は巨大な地震と発生する亀裂に危険を感じ大きくその場から離れると、探索者の救助をしていたノノにも逃げるよう呼びかける

「俺はまだ大丈夫!あと2人くらいだからその人達まで助けるよ!」

…最近ノノの事がやっと分かってきた気がする。自分がやると決めた事にはとことんまっすぐ、それこそ徹底的に尽くしてやりきるタイプだ。でもその分ちょっと頑固で…ところどころマイペースなところがあるかも。

「分かった!でも亀裂の広がり方やばいから早く来てねー!!」

「分かってる!」

4人は他の探索者達も避難していた亀裂が届かない位置までなんとか逃げたが…亀裂のあまりの広がり方に正直ドン引きしていた

「これマジ?ヒアラ…あのアグナとかいう男、召喚詠唱してたよね?私でも流石にここから出るレベルは一筋縄じゃいかないかも…」

「私もこのレベルは過去にも見たことないですね~…」

「スズハはそう言うけどいつもゴリ押しするじゃん…」

スズハさんとマホロさんでも初めて見るレベル…この戦い、ほんとに生きて帰れないかも…

「お、おい…もしかしてあの2人って…の2人じゃね?」

「ほんとだ…本物だ!すげぇ!日本が誇る最上位探索者…世界でも最強の矛と呼ばれる魔導のスズハと同じく最強の盾!絶対不壊ふかい、壁のマホロ!生きる伝説と呼ばれていたがまさかこの目で見れる日が来るなんて…!」

4人の後ろから、他に逃げていた探索者達の声が聞こえてきた。最強の矛と盾って呼ばれてるのか…かっこよすぎる!!

「スズハさん!マホロさん!最強って呼ばれてるんですか!?かっこよすぎですよ!」

「最強じゃなくて…の皮肉よ…今の歴が浅い探索者達の間では回り回って最強になってるけれど…元は運が悪くてことごとく襲われる事とか…戦闘になると性格が変わっちゃうこととかが原因でそう呼ばれるようになったのよ。でもその都度ちゃんと戦果をあげていたから最強で最凶…?みたいな感じになってるのかしらねぇ…」

「そ、そうなんですか…すみません…」

「大丈夫よ?文字に起こさなければ最凶も最強も変わらないから、そう思うと悪い気はしないわね!うふふ…」

うーん、最強の矛と言われてみると、確かに会話の節々から脳筋そうな感じが伝わってくる…かも?

「でも…そんなすごい人とこうして仲良くなれたのは私達は運がいい方だよね~!ね?ヒアラ!」

「そうだね…ほんとに富山で会えたのは運が良かったとしか…あ!そういえばカフェ出たあと歩いてた方向って電車に乗るコースじゃなかったですよね?どうやってこんな短時間でここまで来たんですか?」

「移動手段?それは…なんというか、説明が難しいわ…この戦いが終わったら見せてあげるわね?」

「あ、はい!ありがとうございます!」

地面に巨大な亀裂が発生し始めて、早くも約10分が経過した…。亀裂の大きさは一旦広がりが止まったが、現在は広がりだす段階に入っている。アグナは乗っている次元龍ごと穴の中に落ちていったが…おそらく無事だろう

「助けてくれた兄ちゃん…まだ戻ってないって聞いたか?」

「あぁ…俺も怪我したんだがあの兄ちゃんが助けてくれたんだ…早く無事に戻って欲しいところだな」

「ここにいる皆はほとんどあの若いお嬢さんと兄ちゃんに助けられてるよ。すごいな…あの若さで。…皆!祈るんだ!戻ってくれることを!命の恩人を!」

そう、ノノ…お願い…早く戻って!あと2人って言ってたのに…ノノのスピードならすぐだったはずでしょ?

「ノノ…っ!」

「ノノー!!早く戻ってきてー!!」

「ノノさーん!」

キュアーとスズハさんも声を出して祈ってくれる

「ノノって言うのか!皆も呼びかけろ!ノノさーん!!」

「うおお!ノノさーん!!無事で戻ってこーい!」

その場の空気が一体となり、まるで英雄の帰還を待つような時間が続いた。するとしばらくしてキュアーが遠くで何かを見つける

「ねぇ!あれ!ノノじゃない!?」

「…ほんとだ!!ノノー!!ノノ…!?!?な、何あれ!!」

遠くで動いているのは間違いなくノノだった。だが、様子がおかしい

「お、おい!広がった亀裂の中からなんか出てきてないか!?」

周りの探索者達も異常に気づきだす

「なに…あれ…!」

見えたのは、10階建てマンションくらい軽く握りそうな程の…だった。

やばい…最初の次元龍なんて拳程の大きさにしかならないレベルだ…あれは、
世界を壊してしまう!

「ノノ、もしかして2人とも抱えてる上に足を怪我してるかも!助けに行かないと!」

「だめ!キュアー!あんたが着く頃にはあの龍出てきちゃう!」

「じゃあどうすれば…」

2人が狼狽うろたえていると、隣からマホロが前に出る

「見える位置に来れば…」

マホロは静かに遠くのノノに向かって手を向ける。すると急にノノが空中で止まる。

「壁で囲った!?」

本人も何が起こってるか分からない様子でキョロキョロしていたが、そうしているうちにノノを囲った壁はスーっとこちらに向かって飛んでくる。

「良かった…」

しかし、そう思ったのも束の間、亀裂から出てきていた龍がいよいよその全貌を表した。

「やばいやばいやばい!ノノ!!早く!マホロさん!」

「くっ…!」

「なんだよあれ!東京の試験場位のデカさじゃねぇか!!ドームレベルだろ…」

その大きさはあまりにも規格外で、手が見えた頃はまだ余裕があったノノとの距離も目と鼻の先にまで迫っていた

「ノノー!」

「ノノさん…!」

全員が祈る。ただ1人、ノノの無事を。
しかしその思いも届かず、手を伸ばした龍の手によってノノを囲んだ壁は掴まれてしまった

「!!!」

「ぐっ…!大丈夫…。俺の壁は、壊れない…壊させない…っ!」

マホロは目を瞑り神経を集中させながら壁の維持を図る。

「スズハさん!何とか出来ませんか!?」

「あの外殻…おそらく魔法耐性が付いてる…体力を削るならともかく、ダメージを与えるのは出来なそう…」

「そんな…」

キュアーも唇を噛み締めながら悔しそうな顔をしている。おそらくヒアラ・キュアーの力でもあの龍には勝てない…

それは、絶望。ただ1人、最後まで他人の命を思いやり動いたノノを、誰も助けられない。時間が経ち、マホロの壁が破られノノが死ぬのを見ることしか出来ない無力感。

その場の誰も、ノノを救える者はいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...