ヒアラ・キュアー

るろうに

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1章

12話 出逢い?

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「うぅ~!!おはようございますー!」

ボスキノコ戦と夜の祝勝会を終えて迎えた朝はとてもボサボサの髪とは対照的に心地のいい目覚めだった

「ヒアラ!おっはよー!!今日は早いね!?」

「いやぁ、疲れで死んだように寝てたのもだけど、昨日でやること終わって残りのんびりできると考えたら気持ちも自然とスッキリしてくるもんよね~」

リビングにはキュアーだけおり、みかんを食べながらこたつでテレビを見てくつろいでいた

「カレンさんとノノは?」

「んー、カレンさんはまた森の見回りと、畑見てくるってさ。ノノは知らなーい。まだ寝てるんじゃない?」

「そっか。…キュアー、そのみかんまだある?」

「ん。」

キュアーはふところからみかんを取りだして渡してきた

「ありがと…え、今どこから出した?私が言わなかったら独り占めしようとしてた?」

「んーん?知らなーい」

「キュアー!これカレンさんが昨日の夜みんな平等にって置いてたやつでしょ!…待って?あと一つは?ノノの分!」

「んー。ひらないおー(知らないよー)」

「あんた食べたでしょ!こら!出しなさーい!」

「ちょ、れないおー!?(出ないよー)」

沢山頬張って膨れたほっぺたをグリグリしながらキュアーを問いつめているとガラッと音がして後ろからノノが入ってきた

「んん、おあよ。2人とも」

「お、おはよう!ノノ!」

「ん?2人とも何してるの?遊んでた?」

!!ノノは私たちの頭の陰に隠れたみかんの皮に気づいていない!

(キュアー!今隠せばまだバレずに済むかも!)

(さっすがヒアラ!)

2人は瞬時にテレパシーを交わしノノでも見逃してしまう程の速さでみかんの皮を懐に隠した

「…んー?なんかした?」

「い、いや!?何も無いよ!それよりノノもこっちおいでよ!寒いよ?こたつ入ろ?」

「うん…ありがとう。」

ノノは半分も開いてないような目を擦りながらゆっくりとこたつに入ってくる

「ノノ、腕の筋肉痛大丈夫?昨日すんごい動かしてたけど」

「んー?腕?大丈夫だよ?速さの天啓ってあれだよ?自分が動かせる速さを早くするのとはまた別だよ。んじゃなくて、んだよ」

…?

「どういうこと?」

「んー、分かりやすく言うと、等倍の動画を早送りするのは特に本人はなんも労力ないじゃん?けど早送りの動画を真似しようとする人は早く動こうとする。その違いかな。だから俺は普通に走ってる感覚で早くなってるだけ。まぁ実際に早く動いてはいるんだけど、大丈夫なんだよね」

「ふーん。そうか。なら良かったや。」

天啓ってのはすごいなぁ、よく分からないけど使いこなせばなんでも出来そうだ。私の治癒とか魔力も強くなれるかな?

「あー、目が覚めてきた。カレンさんは?」

「森の見回りと畑見てくるってさ」

「なるほどね。じゃあご飯はもう少し先か。昨日貰ったみかんでも食べようかな。…あれ?昨日テーブルに置いてなかった?」

「「・・・・・・」」

「ん?気のせいだったけ?」

「そ、そうだよ!気の所為だよ!あはは~」

「なんだ、そうだったのか。…ってなるかー!誰だ犯人は!」

「逃げろー!」

「待てー!!!」

3人がリビングでわちゃわちゃと遊んでいると玄関からカレンさんが帰ってきた

「こら、他人の家でくつろぐのもいいけどあんまりバタバタしないでくれよ、色々と大事なもんがあったりするんだ」

「カレンさん!ごめんなさい…」

「まぁ、いいんだよ。そのかわり、お仕事を頼まれてもらうけどね!」

「昨日のやつ~?3人でちゃちゃっとやっちゃお~!」

キュアーはやっぱり機嫌がいいのか仕事と言われてもノリノリで楽しそうだ

「とりあえずこれなんだけどね、今畑から色々と食材を取ってきたから町長のところに持って行って欲しいんだ。依頼の報告ついでだしお願いね」

「町長さんの家って遠いです?」

「歩きだとそこそこだね、15分から20分くらいかな?」

「なかなかですね…。」

「でもヒアラ!私がいるからあれできるよ!」

あれ…?なんだっけ。キュアーは色んなバフをかけられるけど荷物運びに役立ちそうなバフなんてあったかな?

「筋力増強っ!ムキーン!!」

「うわぁぁあ!!!!」

筋力増強バフ!!そうだった…キュアーはこんなのも使えたんだった。最悪だ…非常に助かるんだけど実はこれ1回昔使ってて、まだ小さい体だったのに明らかに異常に太くなった腕がキモすぎてやめようってなったんだよね…

「体に対して腕がすごいことになってたやつじゃん…私普通に嫌なんだけど…」

「うーん…ヒアラはやっぱり嫌かぁ、腕のごつさは男の子なら馴染むのかな?」

2人はチラリとノノの方を見る

「…え?俺?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あー、流石に男の子は頼りがいがあるなぁ!」

「ノノ、その腕似合ってるよ?ふふふ」

結局キュアーの筋力増強バフを受けたノノは恥ずかしがりながらも楽々と野菜の詰まった重そうなダンボールを抱えて町長の家までの道のりを歩いていた

「これ…恥ずかしいのは置いといてめちゃくちゃすごいな!こんなの本来絶対持てないのに余裕すぎるぞ!」

「へへへ~、私すごい?」

「うん、すごいよ!これってデメリットとかあるの?」

「ん?デメリット…?あっ。。。」

「えっ?」

キュアーは少し考えた後何かを思い出したようで動きが固まってしまった

「もしかしたら…縮んだ後筋肉痛で2日か3日くらい腕が動かせないかも…?」

「え、ええええ!!?!?」

あぁ…ノノ、どんまいすぎる
2人はノノにお祈りをしながら町長の家まで持ってもらった

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

3人は町長の家に着くと依頼の報告と、カレンからの野菜を無事に渡すことが出来た

「町長さん!ありがとうございました!また何かあれば頼ってくださいね!」

「探索者の皆さん、わざわざありがとうございました。こんな遠くまで来ていただいて…あ、何かあればと言われると、その辺はもうモンスター湧きの周期が来てるのでくれぐれも下手な道に行かないように気を付けてくださいね!英雄様が助けてくれるのも例年通りならまだ少し先ですから。」

「あぁ、モンスターには気をつけますので大丈夫です!それより英雄様?周期で助けてくれるのは女神リフレじゃないんですか?」

「若いもんは女神リフレだと思ってる人が多いんですが、この周期を何度も経験した私達は女神とは別に英雄様がいることを知っています。姿を見た事がないので本当のことはわかりませんが恐らく20年周期で魔王討伐して新しい代に入れ替わってるんだと私は考えてます」

「魔王討伐!?」

またすごいファンタジーな名前が出てきたもんだ。でもなんでもいるこの世界だからそれはそうか、とも思えてしまう。

「ねぇヒアラ!魔王だって!英雄だって!会ってみたいよね?探索者の人なのかな?それとも勇者的な職業があるのかな~?ねぇねぇもし会えたらさ!パーティに勧誘しようよ!」

「えぇ?それって私達も魔王討伐に参加しないと行けないってことじゃん!それはちょっとめんどくさいかも…」

「なんでよ!ノノもいるし!私達ダブルヒーラーだから重宝されると思うんだよねぇ」

キュアーに言われてノノをちらっと見てみると、少し遠くで元に戻った腕を抱えながら苦しみもがいてるのが見えた

「あはっ!ノノ!やっぱり筋肉痛になってるじゃん!面白ーい!触ってもいいー?」

キュアーはノノをからかいたくなったようで町長の話そっちのけで歩いて行ってしまった

「パーティですか。それは新しいかもしれませんね。」

「ん?新しいんですか?これまではパーティじゃなかったんですね」

「はぁ、実際どうなのかは分からないんですけどね、年寄りの記憶には英雄様一行と認識した覚えがないんですよね」

「孤独な勇者…なんですね!」

「はい。かっこいいですよね。ヒアラさんも新人なのに今回の依頼をクリアしてくださったのでもしかしたら英雄の力に匹敵するかも…それこそ1人で依頼等を受けてる人を見かけたら声をかけてみてもいいかもしれませんね!」

英雄率いるパーティか…さしずめ勇者パーティ。それはちょっとかっこいいかもしれない

「分かりました!貴重な話をありがとうございます!」

3人は町長に手を振り別れを告げると帰路に着くことにした

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「あああー、痛い痛いよ痛すぎる…」

帰路に着く3人はスムーズな行きと違って苦しみもがくノノにペースを合わせたため遅くなっていた

「そんなに酷いんだ、キュアーのヒールは効かないの?」

「うん、回復は傷を元の形に戻す力だから、体力とか状態異常、内面的な痛みには効かないんだよね」

「なるほど…ノノ。どんまい!」

「ヒアラ~!何とかしてくれよぉ、ヒアラもヒーラーだろ~?」

「え?私!?」

そういえばそうだった。前回は使えるのか試しただけで、普段使いはキュアーのヒールで間に合うと思っていたから自分が治癒を使うケースを念頭から外していた

「そーいえば治癒だもんね!回復じゃないから治るんじゃない?」

「うーん、ちょっと試してみるか」

3人は少し歩いた先にあった腰掛けられそうな場所に座った。ヒアラはノノの前に立ち以前のように剣に魔力を付与する

「ふぅ…これで切れば治癒できる…のかな?」

「そういえば治癒と回復って具体的に何が違うんだろうね、これで筋肉痛治ったら回復には出来ない体力、状態異常とかもヒール出来るかもしれないね、だいぶ強い気がするけど」

「そうだと存在意義があるよねぇ、よし!ノノ、いくよ!」

「いたたた…頼むっ!」

スっと上腕三頭筋の辺りを斬る。すると…

「おっ、肩の力が少し抜けた気がする!」

「治った!?」

「けど…下の方がまだ痛い~」

「えぇ~!?魔力が少ない分範囲も狭いんだ!どうしよう~もう付与できる分は使い切っちゃったよ!」

渾身の切り札も完全に回復とは行かず困り果てていると…後ろの方から誰かが歩いてきた

「あの~、どうかしましたか?」

声をかけてきた女性はスタイルが良く、すらっとしたワンピースを着ており、綺麗なセミロングの黒髪にカールを掛けた大人の色気がすごい人だった

「えっ、あ、えっと…友達が筋肉痛に苦しんでたので回復しようと…」

「筋肉痛に回復ですか?それは効き目がないので、残念ですが湿布を貼ることをおすすめします。」

「いえ!治癒をしたので少しは効いたんですが…効き目が弱かったんですよ」

「治癒…?ですか?筋肉痛に効く能力?…少し診てもいいでしょうか?」

女性は私に代わりノノ脳での様子を見る

「これは…筋肉痛どころの騒ぎじゃないですね。どんな使い方をしたらこうなるのか…能力の使い方には気をつけないと、めっ!ですよ?」

!?
めっ!ですよなんて初めて聞いたよ!?
相当な母性を持ち合わせている方が子供に向けて言うセリフだと思ってたがまさかこんなところで出逢うとは!!!

「おや?ほんとですね、この上の方に僅かに回復の魔力が残ってます」

その女性は人の魔力を感じ取れるのか、先程切った回復部分を触りながら目を閉じた

「この魔力を全体に伝えてあげればいいかもしれませんね…」

小さな声で独り言?のような事を呟きながらじっと腕を掴むと5秒くらい静止した。

「…よし。これで全体に届いたのではないでしょうか?痛みも楽になったと思いますよ」

「ん?…ん!?おおお!ほんとだ!すごい!まだ若干のだるさはあるけど痛み自体はほぼ無くなってる!」

ノノはさっきまでの痛みがまるで嘘だったかのようにはしゃいでいる

「うふふ、役に立てたようで良かったです」

「すごい!何をしたんですか?」

「…治癒の魔力を全体に広げて伝えてあげたんですよ。私、魔導の天啓なので。」

「魔導の天啓!!すごい!探索者の方ですか?」

「そうよ。あら?あなた達も探索者の方でしたか?」

「そうです!3人でパーティを組んでて、Dランクの依頼をこなしてきたところでした!」

「それはお疲れ様です。Dランクをその若さでこなすなんて、お強いのですね!」

「いえいえ!そんなことは…それよりあなたは?」

「私ですか?…私は…」

そこまで言うと女性は辺りをキョロキョロしながら何かを探すような素振りを見せる

「あっ!いました!お~い!ここですよー!」

誰かを見つけたようで大きく手を振る女性。その先からは少年が走ってくる

「また先に行き過ぎちゃうんですから。はぐれたら探すの大変なんですから気をつけてくださいね?」

「ごめん。でも…スズハ、おそい」

その少年はまだ小学生…?いや、中学生くらいだった。この女性の息子さん…にしては大きすぎる気がするし、かといって弟にしては歳が離れすぎてるようにも見える

「ど、どういったご関係かお聞きしても?」

「え?私達ですか?」

「はい!」

「うふふ、ただのパーティメンバーですよ。この方も探索者なので。」

「え!?子供なのに探索者!?なれるんですか?」

「まぁそこら辺は色々と…ね?」

スズハと呼ばれた女性は人差し指を口に当て内緒のポーズをする

何かワケありな予感!?
私そういうの、理解のある人間です!

「分かりました!そこは詮索しないでおきますね!ただ、探索者の先輩に色々と聞きたいこととかもあって…少しお話聞いてもいいですか?」

「お話?うふふ、大丈夫ですよ!」

「ありがとうございます!」

ふとしたことからドーズ以来初めての探索者に会った3人は、助けられた恩もあるが色々とお話を聞くため近くのカフェへと入った
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