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1章
4話 もしかして私達…世間知らず?
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「そーいえばノノ、天啓って何?」
時刻は12時を回り、ダイニングスペースに移動し誰か分からないけど凄そうな執事さんが運んできた料理を食べていた
「天啓?天啓も知らないのか!じゃあ俺がなんで凱旋されてたとかも知らないのか!あはは!」
ノノはすごく可笑しそうに笑う
「むむむ…鹿児島には探検課がないから探索者の情報なんてないんだよー!そもそもー?なんで日本は全国に探検学科があるのに肝心の探検家適正試験は東京でしか受けられないのさ!」
「まぁまぁヒアラさんや、落ち着きなさいって。色々あるんでしょうよ、大人の事情ってやつさ。」
何故かキュアーは感情的になる私を見てニヤニヤしながらなだめてくる。
「むー。…まぁいいや、それより天啓!結局なんだって?」
「ほんとに昔と変わらないな…お前ら。お前らとなら…」
「ん?なんて?後半聞こえなかった。」
「いや、独り言!えーっと、天啓についてか、天啓ってのはな、分かりやすく言うとその名称の能力について、あなたが世界で一番才能ありますよ。ってやつだ。」
「んー、、ん?」
「そうだな、例えば俺、俺の場合速さの天啓を得た…得たっていうか持ってた訳なんだけど。」
「うん」
「今はまだ実力不足で色んな人に劣ってても、少しの努力で一般人の倍くらい伸びしろがあるとか、最高まで努力すればこの世界の誰よりも早くなれる素質がある。ってこと」
「なるほど…」
何となくわかった。ただその名称の能力という点が気になった。この世界にはそんなに沢山能力者がいるのだろうか
「あ、ちなみに人間のステータスに直接関わる五大天啓は実際勝ち組みたいなもんだけど、能力はほんとに無限にあるからその分天啓も多いし、別にそこまで超絶レア!って訳でもないんだ。」
「んー、でも能力かぁ、そんなにあるの?」
「ほんとに無限だよ、それこそ人間が勝手にイメージで作りだした概念の天啓だってある。物理型の典型はその物体を創造と操ることが出来る。あとはすごく使いこなせるけど基本はそれだけ。世間で勝ち組とされてる天啓ほど、イメージだけで如何様にも広げられる概念なんだ。」
「んー、、ん?」
またややこしい話になってきた。
「ヒアラお嬢様?デジャブですわよ。」
苦しむ私を見てさっきからずっとニヤニヤしてるキュアーが露骨に馬鹿にしてくる
「あら、キュアーお嬢様は理解出来ているのかしら?」
「それはもちろん!物理が弱くて概念が強いってことですわ~!」
こいつの方が馬鹿だ。そんなシンプルな話でもないだろうに
「あはは、まぁ、世間ではそーゆー認識になりつつあるな。分かりやすく言うと剣の天啓を持ってる男と剣技の天啓を持ってる男。どっちが強そうに思う?」
「んー、剣技じゃない?剣だけだとそれこそ剣技もそれなりにあるんだろうけど剣技の天啓には絶対勝てないってことだもんね。」
「その通り。世間ではその認識をされている。だから物理より概念が強いって言われてるんだが…実はほんとに強い人たちからするとここの間に圧倒的な差ってのは無いんだよ。」
「ふむ、なるほど?」
「結局はイメージ力とそれを具現化させる、実現させる実力だ。例えば剣の天啓の人は、すごくアニメを見ており攻撃の幅が広かった!無限の剣を辺り一面に生み出しファンネルみたいに飛ばすことも出来たりする。対して剣技の方は剣道の知識しかなくて基本の動作を極めたレベル。こう聞くとどう?どっちが強く聞こえる?」
「…剣かなぁ、生み出せたり、そのものを自由に操れるって遠隔で飛ばしたりもできるんだ…それにある程度の剣技もあれば強すぎると思うな。」
「そーゆー事。まぁ実際は近接型の天啓は魔力を持てないからそんな単純じゃないんだけどね。」
「んん?なに?じゃあ実際は飛ばせないってこと?もう訳が分からないよー!」
「あはは!!キュアーは分かる?」
「…プシュー」
「どっちも撃沈しとるな…」
気づけば食卓に並んだ食べ物も完食しており、ちょうど執事さんが回収に来た
「よし、頭を使うのも疲れたしあんまりのんびりしてたら時間なくなるから先に探検家適正試験受けに行こうか。」
「うん…そうする…。」
もしかして私達って常識を知らない?
探索者はみんなこれ常識で知ってるの!?
「先が思いやられます…キュアー。頑張ろ。」
「うん。」
いつも元気はつらつなキュアーも少ししおれていた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お?、昨日の嬢ちゃん達じゃねぇか!」
「あ!!世紀末おじさんだ!やっほー!」
ノノと一緒に3人で探検課に来ると昨日の世紀末おじさんがまた来ていた。キュアーはすっかり世紀末おじさんという名前が気に入ったようで勝手に呼んでいる
「おいおい嬢ちゃん、世紀末おじさんってのは酷いぜ、勘弁してくれよ!これでも俺はまだ34なんだぜ?」
「34?おじさんじゃないの?」
!!!!!!言いやがったこいつ!!
「はぅあ!!!!ガーーーン……」
露骨にショックを受けた世紀末おじさんはとぼとぼとフロアの角に歩いていき体育座りで座った
「そうだよな…もう俺もおじさんだよなぁ…こんなに鍛えて…強そうな装備も揃えたのに…もう若くねぇんだなぁ…」
肩に付いたトゲトゲの装備品を撫でながらしょげている
「ごめんごめん!ごめんておじさん!世紀末おじさんって語呂が良かっただけで本当はそんなふうに思ってないよっ!」
「…ほんと?」
「ほんとほんと!ねっ!だから元気だして!私達もこれから探索者になるから仲間でしょ?」
「うん…そうだな。…あれ、でもさっき年齢聞いてからおじさんっt」
「よぉーし!!仲直り!!ね!?うんうん!仲直りの握手ー!」
話題は意地でも戻さない。それがキュアーのやり方らしい
「よし!じゃあ嬢ちゃん達も早く適正試験やってきな!何かあれば俺が教えてやるからよ!」
「ほんと!?ありがとう!!」
世紀末おじさんに元気よく挨拶をしてきたキュアーを迎えて窓口に向かう
「こんにちわ!ようこそ探検課へ!本日は如何されましたか?」
受付の女性は昨日倒れていた課長のような年配ではなく20代?位の可愛らしい方だった
「えっと…探索者になりたくて…」
「探索者志望ですね!探索者は国のために働く仕事で大変です。基本的に自分のペースで仕事をこなすことが出来ますが、いざと言う時は国家公務員という扱いになるので自衛隊の方々と同様に国のために動いてもらいます。それと仕事の報酬は難易度に沿って完全出来高制となっておりますのでご注意下さい。なお、収入とは別に福利厚生や全国の宿泊施設が無料で利用出来るようになっております。ただ問題を起こすと出禁になることもあるので、その点は注意してください!……大丈夫そうですか?」
…な、なんか思ってたよりかなりガッツリ仕事なんだな~…。まぁでも高卒で就職する形になる訳だし…宿泊無料もちゃんとあったし、なんとかなるか!
「はい…!大丈夫…だと思います。…多分。」
「かしこまりました。では探索者になるにあたって実力を見るための探検家適正試験というものを行います。説明が必要ですか?」
「いえ!大丈夫です。試験官の人と戦うんですよね?」
「そうですね!採点基準をクリア、それと審査員が3人いますので全員の点数次第で合否と、最初の探索者ランクが振り分けられます。」
なるほど…そこまでは知らなかった
「採点基準って公表されてますか?」
「いえ、採点基準はその方の能力値や武器などによって異なる設定をするため公開出来なくなっております。」
毎回変えてるのか…なかなか見られてそうなので気合を入れていこう
「では、適正試験を行うにあたり、こちらに個人情報の記入をお願いします。免許証は持ってますか?」
「いえ、持ってません。」
「かしこまりました。ではスキルや能力で特殊な移動手段がありますか?」
「…へ?スキル…特殊な?」
「ちょっと!ヒアラ!スキルはそれぞれが身につけられる技だよ!いつも使ってるやつ!」
「あ、あぁ!技のことか!あれスキルっていうの?知らなかった~。」
「…スキルをご存知無いですか?」
「あ…えっと、あれですよね?オーラ纏ったりビーム打ったり斬撃飛ばしたり的な…」
「そうですね!基本的にその人の能力や努力レベルによって身につけられる特殊能力です。これを使うことで普段は魔力を持たない近距離型の能力の方でも技を飛ばしたり物体を動かしたり出来ます。」
あ~、さっきノノが言ってたのはこのことか。結局説明してもらえたからよかった
「あとは上位探索者の中でも天啓を極めた人同士でしか使えない共鳴スキルもあったりしますね。ただこれはそもそも天啓を極めてる人が世界でも極わずかなので2人揃うこと自体が難しく、伝説みたいな扱いになってますね。」
「あー、すみませんちょっと頭が痛くなってきたのでもういいです…また聞かせてください。」
天啓、スキル、共鳴?昨日今日で初めて聞く事が多すぎる…頭の整理ができない…ほんとに先が思いやられる。。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「書類、書けましたか?」
「はい。」
「ありがとうございます。では次回の適正試験の日程は明日の朝10時からですが…あれ?参加者はお1人ですか?」
書類を見た女受付嬢の方は3人と思ってたらしく質問してきた
「あ、すみません俺は一昨日受けたので大丈夫です…」
「あ、そうだったんですね!一昨日…あれ?もしかしてノノさんですか!?」
受付嬢の方はノノと気づくとテンションが爆上がりして大声で叫んだ
その名を聞いた瞬間フロアがザワつく。探検課スペースにいたみんながノノに注目する
「おい!マジかよあいつが噂の?」
「間違いねぇ!赤い目は五大天啓の証だ!足にも国から与えられる装飾品をつけてるぞ!」
やはり五大天啓というのは相当凄いらしい。世紀末おじさんも驚いている
「ノノ様!すごい!握手してください!」
いやいや…受付嬢さんすっかりノノのファンになってるじゃん。ノノ様て…神か何かなのかね?
「あはは、ありがとうございます。ただみなさん落ち着いて下さい。話の途中でしたよね?」
「は!すみません取り乱しました…。はい。えっと…あ、そうだ、ノノ様は分かりました。ただそのお隣の女性の方は試験のためのお名前を…」
「あ、私はなれないので!受ける必要が無いんですよ。」
「えっとー、すみません。ならない、ということでよろしいですか?」
「いえ!確か探索者って人間しかなれませんよね?なので資格が無いんですよ。」
受付嬢の方は一瞬止まった。分かりやすく思考停止してらっしゃる
「…どういうことですか?あなた人間ですよね?」
「あんまり大声で言わないでくださいね…。ここだけの話。私、精霊なんです!」
「…え、ええええええええ!?!?せ、精霊!?」
キュアーの前置きも虚しく受付嬢はさっきと同じ…いやさっきよりも大きな声で叫んだ。今度は探検課スペースだけでなく他の部署も含めてフロア全体がザワついた。全員の視線がキュアーに向く
「精霊!?精霊ってあの精霊ですか?聞き間違いじゃないですよね!?」
「あ、あの、すみませんちょっと声を抑えて…」
テンションが限界突破した受付嬢はもう誰にも止められなかった…だが
「おいおい!聞いたか!?精霊だってよ!見に行こうぜ!」
「本物ならやばいぜ!」
「でも精霊?あの見た目でか?」
「確かに…あんな普通の人間タイプは見た事ねぇな」
「精霊ってそもそも人里に降りてこないで山奥に住んでるって聞いたことあるぞ!」
「羽が生えてないしヒラヒラみたいな感じもないしなぁ…正直嘘くさいだろ。」
「そうだな…五大天啓のノノに嫉妬して注目を集めようとしたんだろ」
周りは先程のノノの時とは別に、疑心暗鬼な声があがっていた。
キュアーが明らかにただの人間に見えるのは確かにそうだがここまで露骨に信じられないとは思わなかった
「…キュアー。なんか、嫌な感じだけど信じてる人は少ないっぽいし、広がらないならこのままでいいんじゃないかな?」
「ぐぬぬ…それはそれで気に食わない!」
周りの状況を見兼ねて冷静さを取り戻した受付嬢は申し訳なさそうに小声で話を続けた。
「えーっと、じゃあ一旦分かりました。その点については明日の試験の際に証明して貰ってもいいですか?それが無ければ書類に書いてもらいますね。」
「分かりました…。あの…明日の試験官の方はどの方でしょうか…挨拶をしておきたくて」
「あぁ、試験官なら…」
「嬢ちゃん。」
間髪入れずに背後から聞こえてきたその声に驚き振り向くと世紀末おじさんが立っていた
「さっきの話。精霊ってのは本当か?」
「…そうだよ。」
「そうか…。分かった。アカネさん。明日の試験、この嬢ちゃん達の相手は俺にやらせてくれ」
「ドーズさん…。分かりました。なら明日はあなたに任せます。」
えっと、色々と話が進んだけどそんなことより受付嬢がアカネさん。世紀末おじさんがドーズさんっていう名前発覚した方がびっくりだった
「世紀末おじさん!明日は私達の相手してくれるの?」
なんだか熱そうな展開にノリノリのキュアー
「あぁ、俺は嬢ちゃんを信じたい。だが信じられない話なのも確かだ。だから俺に直接確めさせてくれ。俺はここのフロアの中では3本の指に入る程度には強いから油断しない方がいいぜ」
「分かった!じゃあ明日。おじさん。後悔しても知らないからね!」
「えっと、よろしくお願いします!」
謎の因縁感を出すキュアーに置いていかれないようにとりあえず便乗したが、空気的には完全に置いていかれた。
そのままその場は解散し、ノノも明日の試験でまた来てくれるとの事だったのでお別れした。
思いのほか中身の濃い1日だった…。
キュアーが風呂に入ってる間にホテルのベッドに寝転がり一日を振り返る。
凱旋の人の波。殺人犯との戦い。そして天啓、スキル、共鳴…。分からないことばかりだ。それにどんな能力も使い方次第でかなり強くなるんだとしたら…これから先どんな敵が待ってるんだろう。
「あーあ、私達ってほんと、世間知らずだったんだなぁ…」
見上げたホテルの天井は低いはずなのに遥か高くまで続いているように感じた。
時刻は12時を回り、ダイニングスペースに移動し誰か分からないけど凄そうな執事さんが運んできた料理を食べていた
「天啓?天啓も知らないのか!じゃあ俺がなんで凱旋されてたとかも知らないのか!あはは!」
ノノはすごく可笑しそうに笑う
「むむむ…鹿児島には探検課がないから探索者の情報なんてないんだよー!そもそもー?なんで日本は全国に探検学科があるのに肝心の探検家適正試験は東京でしか受けられないのさ!」
「まぁまぁヒアラさんや、落ち着きなさいって。色々あるんでしょうよ、大人の事情ってやつさ。」
何故かキュアーは感情的になる私を見てニヤニヤしながらなだめてくる。
「むー。…まぁいいや、それより天啓!結局なんだって?」
「ほんとに昔と変わらないな…お前ら。お前らとなら…」
「ん?なんて?後半聞こえなかった。」
「いや、独り言!えーっと、天啓についてか、天啓ってのはな、分かりやすく言うとその名称の能力について、あなたが世界で一番才能ありますよ。ってやつだ。」
「んー、、ん?」
「そうだな、例えば俺、俺の場合速さの天啓を得た…得たっていうか持ってた訳なんだけど。」
「うん」
「今はまだ実力不足で色んな人に劣ってても、少しの努力で一般人の倍くらい伸びしろがあるとか、最高まで努力すればこの世界の誰よりも早くなれる素質がある。ってこと」
「なるほど…」
何となくわかった。ただその名称の能力という点が気になった。この世界にはそんなに沢山能力者がいるのだろうか
「あ、ちなみに人間のステータスに直接関わる五大天啓は実際勝ち組みたいなもんだけど、能力はほんとに無限にあるからその分天啓も多いし、別にそこまで超絶レア!って訳でもないんだ。」
「んー、でも能力かぁ、そんなにあるの?」
「ほんとに無限だよ、それこそ人間が勝手にイメージで作りだした概念の天啓だってある。物理型の典型はその物体を創造と操ることが出来る。あとはすごく使いこなせるけど基本はそれだけ。世間で勝ち組とされてる天啓ほど、イメージだけで如何様にも広げられる概念なんだ。」
「んー、、ん?」
またややこしい話になってきた。
「ヒアラお嬢様?デジャブですわよ。」
苦しむ私を見てさっきからずっとニヤニヤしてるキュアーが露骨に馬鹿にしてくる
「あら、キュアーお嬢様は理解出来ているのかしら?」
「それはもちろん!物理が弱くて概念が強いってことですわ~!」
こいつの方が馬鹿だ。そんなシンプルな話でもないだろうに
「あはは、まぁ、世間ではそーゆー認識になりつつあるな。分かりやすく言うと剣の天啓を持ってる男と剣技の天啓を持ってる男。どっちが強そうに思う?」
「んー、剣技じゃない?剣だけだとそれこそ剣技もそれなりにあるんだろうけど剣技の天啓には絶対勝てないってことだもんね。」
「その通り。世間ではその認識をされている。だから物理より概念が強いって言われてるんだが…実はほんとに強い人たちからするとここの間に圧倒的な差ってのは無いんだよ。」
「ふむ、なるほど?」
「結局はイメージ力とそれを具現化させる、実現させる実力だ。例えば剣の天啓の人は、すごくアニメを見ており攻撃の幅が広かった!無限の剣を辺り一面に生み出しファンネルみたいに飛ばすことも出来たりする。対して剣技の方は剣道の知識しかなくて基本の動作を極めたレベル。こう聞くとどう?どっちが強く聞こえる?」
「…剣かなぁ、生み出せたり、そのものを自由に操れるって遠隔で飛ばしたりもできるんだ…それにある程度の剣技もあれば強すぎると思うな。」
「そーゆー事。まぁ実際は近接型の天啓は魔力を持てないからそんな単純じゃないんだけどね。」
「んん?なに?じゃあ実際は飛ばせないってこと?もう訳が分からないよー!」
「あはは!!キュアーは分かる?」
「…プシュー」
「どっちも撃沈しとるな…」
気づけば食卓に並んだ食べ物も完食しており、ちょうど執事さんが回収に来た
「よし、頭を使うのも疲れたしあんまりのんびりしてたら時間なくなるから先に探検家適正試験受けに行こうか。」
「うん…そうする…。」
もしかして私達って常識を知らない?
探索者はみんなこれ常識で知ってるの!?
「先が思いやられます…キュアー。頑張ろ。」
「うん。」
いつも元気はつらつなキュアーも少ししおれていた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お?、昨日の嬢ちゃん達じゃねぇか!」
「あ!!世紀末おじさんだ!やっほー!」
ノノと一緒に3人で探検課に来ると昨日の世紀末おじさんがまた来ていた。キュアーはすっかり世紀末おじさんという名前が気に入ったようで勝手に呼んでいる
「おいおい嬢ちゃん、世紀末おじさんってのは酷いぜ、勘弁してくれよ!これでも俺はまだ34なんだぜ?」
「34?おじさんじゃないの?」
!!!!!!言いやがったこいつ!!
「はぅあ!!!!ガーーーン……」
露骨にショックを受けた世紀末おじさんはとぼとぼとフロアの角に歩いていき体育座りで座った
「そうだよな…もう俺もおじさんだよなぁ…こんなに鍛えて…強そうな装備も揃えたのに…もう若くねぇんだなぁ…」
肩に付いたトゲトゲの装備品を撫でながらしょげている
「ごめんごめん!ごめんておじさん!世紀末おじさんって語呂が良かっただけで本当はそんなふうに思ってないよっ!」
「…ほんと?」
「ほんとほんと!ねっ!だから元気だして!私達もこれから探索者になるから仲間でしょ?」
「うん…そうだな。…あれ、でもさっき年齢聞いてからおじさんっt」
「よぉーし!!仲直り!!ね!?うんうん!仲直りの握手ー!」
話題は意地でも戻さない。それがキュアーのやり方らしい
「よし!じゃあ嬢ちゃん達も早く適正試験やってきな!何かあれば俺が教えてやるからよ!」
「ほんと!?ありがとう!!」
世紀末おじさんに元気よく挨拶をしてきたキュアーを迎えて窓口に向かう
「こんにちわ!ようこそ探検課へ!本日は如何されましたか?」
受付の女性は昨日倒れていた課長のような年配ではなく20代?位の可愛らしい方だった
「えっと…探索者になりたくて…」
「探索者志望ですね!探索者は国のために働く仕事で大変です。基本的に自分のペースで仕事をこなすことが出来ますが、いざと言う時は国家公務員という扱いになるので自衛隊の方々と同様に国のために動いてもらいます。それと仕事の報酬は難易度に沿って完全出来高制となっておりますのでご注意下さい。なお、収入とは別に福利厚生や全国の宿泊施設が無料で利用出来るようになっております。ただ問題を起こすと出禁になることもあるので、その点は注意してください!……大丈夫そうですか?」
…な、なんか思ってたよりかなりガッツリ仕事なんだな~…。まぁでも高卒で就職する形になる訳だし…宿泊無料もちゃんとあったし、なんとかなるか!
「はい…!大丈夫…だと思います。…多分。」
「かしこまりました。では探索者になるにあたって実力を見るための探検家適正試験というものを行います。説明が必要ですか?」
「いえ!大丈夫です。試験官の人と戦うんですよね?」
「そうですね!採点基準をクリア、それと審査員が3人いますので全員の点数次第で合否と、最初の探索者ランクが振り分けられます。」
なるほど…そこまでは知らなかった
「採点基準って公表されてますか?」
「いえ、採点基準はその方の能力値や武器などによって異なる設定をするため公開出来なくなっております。」
毎回変えてるのか…なかなか見られてそうなので気合を入れていこう
「では、適正試験を行うにあたり、こちらに個人情報の記入をお願いします。免許証は持ってますか?」
「いえ、持ってません。」
「かしこまりました。ではスキルや能力で特殊な移動手段がありますか?」
「…へ?スキル…特殊な?」
「ちょっと!ヒアラ!スキルはそれぞれが身につけられる技だよ!いつも使ってるやつ!」
「あ、あぁ!技のことか!あれスキルっていうの?知らなかった~。」
「…スキルをご存知無いですか?」
「あ…えっと、あれですよね?オーラ纏ったりビーム打ったり斬撃飛ばしたり的な…」
「そうですね!基本的にその人の能力や努力レベルによって身につけられる特殊能力です。これを使うことで普段は魔力を持たない近距離型の能力の方でも技を飛ばしたり物体を動かしたり出来ます。」
あ~、さっきノノが言ってたのはこのことか。結局説明してもらえたからよかった
「あとは上位探索者の中でも天啓を極めた人同士でしか使えない共鳴スキルもあったりしますね。ただこれはそもそも天啓を極めてる人が世界でも極わずかなので2人揃うこと自体が難しく、伝説みたいな扱いになってますね。」
「あー、すみませんちょっと頭が痛くなってきたのでもういいです…また聞かせてください。」
天啓、スキル、共鳴?昨日今日で初めて聞く事が多すぎる…頭の整理ができない…ほんとに先が思いやられる。。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「書類、書けましたか?」
「はい。」
「ありがとうございます。では次回の適正試験の日程は明日の朝10時からですが…あれ?参加者はお1人ですか?」
書類を見た女受付嬢の方は3人と思ってたらしく質問してきた
「あ、すみません俺は一昨日受けたので大丈夫です…」
「あ、そうだったんですね!一昨日…あれ?もしかしてノノさんですか!?」
受付嬢の方はノノと気づくとテンションが爆上がりして大声で叫んだ
その名を聞いた瞬間フロアがザワつく。探検課スペースにいたみんながノノに注目する
「おい!マジかよあいつが噂の?」
「間違いねぇ!赤い目は五大天啓の証だ!足にも国から与えられる装飾品をつけてるぞ!」
やはり五大天啓というのは相当凄いらしい。世紀末おじさんも驚いている
「ノノ様!すごい!握手してください!」
いやいや…受付嬢さんすっかりノノのファンになってるじゃん。ノノ様て…神か何かなのかね?
「あはは、ありがとうございます。ただみなさん落ち着いて下さい。話の途中でしたよね?」
「は!すみません取り乱しました…。はい。えっと…あ、そうだ、ノノ様は分かりました。ただそのお隣の女性の方は試験のためのお名前を…」
「あ、私はなれないので!受ける必要が無いんですよ。」
「えっとー、すみません。ならない、ということでよろしいですか?」
「いえ!確か探索者って人間しかなれませんよね?なので資格が無いんですよ。」
受付嬢の方は一瞬止まった。分かりやすく思考停止してらっしゃる
「…どういうことですか?あなた人間ですよね?」
「あんまり大声で言わないでくださいね…。ここだけの話。私、精霊なんです!」
「…え、ええええええええ!?!?せ、精霊!?」
キュアーの前置きも虚しく受付嬢はさっきと同じ…いやさっきよりも大きな声で叫んだ。今度は探検課スペースだけでなく他の部署も含めてフロア全体がザワついた。全員の視線がキュアーに向く
「精霊!?精霊ってあの精霊ですか?聞き間違いじゃないですよね!?」
「あ、あの、すみませんちょっと声を抑えて…」
テンションが限界突破した受付嬢はもう誰にも止められなかった…だが
「おいおい!聞いたか!?精霊だってよ!見に行こうぜ!」
「本物ならやばいぜ!」
「でも精霊?あの見た目でか?」
「確かに…あんな普通の人間タイプは見た事ねぇな」
「精霊ってそもそも人里に降りてこないで山奥に住んでるって聞いたことあるぞ!」
「羽が生えてないしヒラヒラみたいな感じもないしなぁ…正直嘘くさいだろ。」
「そうだな…五大天啓のノノに嫉妬して注目を集めようとしたんだろ」
周りは先程のノノの時とは別に、疑心暗鬼な声があがっていた。
キュアーが明らかにただの人間に見えるのは確かにそうだがここまで露骨に信じられないとは思わなかった
「…キュアー。なんか、嫌な感じだけど信じてる人は少ないっぽいし、広がらないならこのままでいいんじゃないかな?」
「ぐぬぬ…それはそれで気に食わない!」
周りの状況を見兼ねて冷静さを取り戻した受付嬢は申し訳なさそうに小声で話を続けた。
「えーっと、じゃあ一旦分かりました。その点については明日の試験の際に証明して貰ってもいいですか?それが無ければ書類に書いてもらいますね。」
「分かりました…。あの…明日の試験官の方はどの方でしょうか…挨拶をしておきたくて」
「あぁ、試験官なら…」
「嬢ちゃん。」
間髪入れずに背後から聞こえてきたその声に驚き振り向くと世紀末おじさんが立っていた
「さっきの話。精霊ってのは本当か?」
「…そうだよ。」
「そうか…。分かった。アカネさん。明日の試験、この嬢ちゃん達の相手は俺にやらせてくれ」
「ドーズさん…。分かりました。なら明日はあなたに任せます。」
えっと、色々と話が進んだけどそんなことより受付嬢がアカネさん。世紀末おじさんがドーズさんっていう名前発覚した方がびっくりだった
「世紀末おじさん!明日は私達の相手してくれるの?」
なんだか熱そうな展開にノリノリのキュアー
「あぁ、俺は嬢ちゃんを信じたい。だが信じられない話なのも確かだ。だから俺に直接確めさせてくれ。俺はここのフロアの中では3本の指に入る程度には強いから油断しない方がいいぜ」
「分かった!じゃあ明日。おじさん。後悔しても知らないからね!」
「えっと、よろしくお願いします!」
謎の因縁感を出すキュアーに置いていかれないようにとりあえず便乗したが、空気的には完全に置いていかれた。
そのままその場は解散し、ノノも明日の試験でまた来てくれるとの事だったのでお別れした。
思いのほか中身の濃い1日だった…。
キュアーが風呂に入ってる間にホテルのベッドに寝転がり一日を振り返る。
凱旋の人の波。殺人犯との戦い。そして天啓、スキル、共鳴…。分からないことばかりだ。それにどんな能力も使い方次第でかなり強くなるんだとしたら…これから先どんな敵が待ってるんだろう。
「あーあ、私達ってほんと、世間知らずだったんだなぁ…」
見上げたホテルの天井は低いはずなのに遥か高くまで続いているように感じた。
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