大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

戦闘と衝撃

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「『剛砕』ッ!」
自分の剣が横に振られ、飛び込んできたポチの両方の前足にぶつかると、ギャリリリンという耳障りな音と共にポチの前足が上に弾かれる。
なんだ、たしか犬への命令の『お手』とか『お座り』とかみたいな感じで『チンチン』ってあった気がするが、あんな感じだ。これで通じるか?
とにかく、後ろ足だけで立っているポチの後ろ足に素早く接近する二つの影。
ラウクムくんとナタリさんだ。
「『砕』!」「『クラッシュ・インパクト』!」
真っ赤な拳と、対照的な真っ青な戦鎚がポチのそれぞれの後ろ足にマトモに入る。この訓練が始まって最初の有効打が入った。
ナタリさんの拳が当たった所からは爆音がし、ありえない方向に足が曲がってる。おお怖。
ラウクムくんの槌が当たった所は…あれ?なんともなってない?
おい!戦技アーツの不発とか聞いたことないぞ!
と思った瞬間、後ろ足だけで立っていたポチの前足が上から降ってきた。そりゃあ上がったものは落ちてくるわな。
打ち上げる形の戦技アーツは大剣では自分、持ってないから避けるしかない。
いや、素でぶん殴って持ち上げるほど自分、腕力ないからね?
あっぶな。制服というか、下に着てるコートの端が爪に引っかかって持ってかれたよ。…これ、ホントにフィールドの効果効いてるんだよな?
「!?」
上半身が地面に着いた途端、ポチが声にならない驚きの声が上がった。
サッとポチの後ろ足の方に視線を走らせると、両足が折れてる…?
何?時間差がつく戦技アーツとか?そんなの、かなり珍しいな。
何はともあれチャンスだぞ!
「アーネぇ!」
「あと五秒!」
遅せぇよ!カッコ悪すぎるだろ!
後ろを向いたのが不味かったかもしれない。
前足だけの力で飛び、ぐわっとポチが口を広げて目の前の自分に噛み付いて来た。
確実にフィールドが無ければ死んでたな。
ポチの牙はガッツリ自分の胴体に噛み付いてる。
なんだこの感覚。気持ち悪い気持ちわるい気もちわるいきもちわるいキモチワルイ!
小刻みでありながら強い衝撃が体の外と内から、揺さぶってくる!
時間としてはほんの一、二秒だったんだろうけど、一時間ぐらいやられてた気分だった。
自分を助けてくれたのは、クアイちゃん。
細い例のナイフを飛ばして、二本は目、一本は舌を切ったらしい。
一瞬だけ緩んだタイミングで無我夢中で飛び出した。
「……ェァッ」
あの感触が忘れられず、思わず手をついて吐いた。
「汚いですわね」
何か言い返す気力もないけど、視線を上に上げると《荒野》と戦った時よりも数は少ないけど、明らかにデカイ矢があった。
オーバーキルじゃねぇか?これ?
そう思ったが、アーネが発射と一言いうと同時に矢が飛んでいった。
ポチの結末?
んなもん、ほんの少しの焦げた肉片を残して消えたよ。
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