大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

底なし戦闘とチャレンジャー

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自分は大剣。先輩は、何も持ってないように見えたけど、いつの間にか自分と同じような大剣が握られてた。
…デカくて、厳つい先輩が大剣持ってたら、非常に絵になる一方、自分が持つと非常にアンバランスに見えるらしい。これ昔、故郷の友人に言われて結構ヘコんだ…。
先輩は、走り込みながら上段に剣を構え、振り下ろしてくる。
見えて、目で追えるなら、自分に避けれない攻撃なんてない。
先輩の剣が地面を打ち、それと同時に先輩の剣の腹を踏む。
手元で剣の柄が回転したため、多分落としかけたのだろう。
慌てて強く柄を握り直したのが剣を伝い、自分の足に伝い、自分にも伝わる。
それを狙ってた。
剣を踏んだまま、自分の剣を振り下ろす。
先輩の剣に。
力はあまり込めず、狙うは剣の腹、そのド真ん中。
肩に担ぐように剣を構え、刀身が淡く赤色に光ったのを確認。
力を抜いた状態から、一気に力を爆発させるようにして振り抜く!
「『破ァ、断』ッ!」
大剣は結構硬いので、一撃かつ、確実に仕留めるために戦技アーツを使用した。
自分の大剣が速く、鋭く剣を打つ。
ギャリリリン!と、表現しにくい音が周りに響くと、自分の視線がガクンと落ちた。
剣が折れたために足が地面に着いたからだ。
「一発で仕留めないと、時間と体力が無駄だからな。悪いね!先輩!」
哀れ、先輩はいいところを見せ、自分から鍵を奪うどころか、スキルも戦技アーツも見せれず、おまけに剣も折られ、最初の風格はどこへやら。萎んだ風船のようになっている。
「あ、あぁ」
放心状態のようだ。
最初に何も無いところから出たところを見ると、多分、形状変化系の能力、あるいは引き寄せの能力でもあったのかもしれない。
どちらもメチャクチャレアかつ高価なので、心も折ってしまったかもしれない。
「挑戦したいやつは名乗りはいらない!次々こい!」
「次は私が行くわ!」
薙刀を構えた女子が言った途端に走り込んでくる。
さぁ、早くも次の戦いだ!
名乗り合いなどは無用、先手必勝と言わんばかりに薙刀を繰り出してくる女子。
さっき、先輩が先手必勝をした後、見事にやられたのを見てなかったのかね?
軽く剣先(穂先?わからん)をいなして、先ほどと同じく踏もうとしたが、そのまま本人が回転してよけられた。
ならばと自分も回転。
女子の薙刀と自分の大剣が交差する。
「ぐっ!」
というくぐもった声がしたのは女子の方から。
薙刀の刃の部分が、綺麗に取れ、フィールドの壁に突き刺さる。
決着がついた途端、死角から何かが突っ込んできた。
まずい。剣を振り抜いた直後。体が伸びきった状態で、すぐには反応できない!
けど、問題ない。
自分のスキルは、『自分の体を自分の思った通り、自由に動かす』能力だ。
流石に、伸びきっている体をさらに動かせないが、体でまだフリーになっているところがあるだろう?
自分の自慢の髪の毛だ。
そもそも、ただ巻いてあるだけなのに、これだけ動いてもバラけたりほどけたりしないあたりで誰か気づいて欲しいもんだ。
ちなみに、数十本の髪の毛が常にセンサーのように周りに触れているから、運がよければ当たって気づける。
今回は運が良かった形だな。
その巻いてある髪が、一気に解け、自分の足元に届く。
そのまま、三本目の足のように地面を支え、さらに『跳躍』させた。
上空で体を捻り、そのまま再び剣を肩に担ぐ。
相手は顔を真っ青にして、今から起きることを察したようだ。
しかし、すぐに切り替え、手にしていた、分厚いナイフをコンパクトに構え、戦技アーツを使う前兆である、発光現象を見せる。
打ち合う気か!
そう思ったが、違うみたいだな。見た感じ、突きの構えか?
ということは、自分の『破断』を避けた後、突きの戦技アーツを打ち込むつもりか?
ならばっ…!
肩に担いだ剣を寝かせる。
縦に振るうのが『破断』、そして、横に振るうのが!
「『剛砕』!」
縦か横かの差だが、こっちの方が突きに合せやすいし、相手も避けにくい。
つまり、自分が剛砕で狙ったのは、相手ではなく、戦技アーツ発動直前の相手のナイフ。
それに気づいたのか、ナイフの彼が、戦技アーツを放ってきた。
「『ペイン・スタッブ』!」
本来、戦技アーツがぶつかる事など考えられていない、突きの戦技アーツが自分の戦技アーツとぶつかった。
やはりというか、それとも、驚くべきか。
地面という踏ん張る所のある相手の方が、押し上げていく。
本来ありえない、ナイフが大剣を押し上げるという図が出来上がる。
しかし、まだ足りないな。
自分の剣の能力を上乗せする。
その能力は、自分のスキルみたいに裏があるわけでも、伏線のようなものがあるわけでもない。
単純明快に、『剣の自重を自分には限りなく軽く、相手には限りなく重くする』というもの。
これは、どちらか片方だけ発動でもいいが、軽くの方は、柄を必ず握らなければいけない。
だから、入試のときは非常にキツかったのだが、それはそれ。過ぎたことだよな。
今重要なのは、相手にとって、どんな事が起きるかということ。
結果は、急激に重くなった剣に驚いた相手のナイフをたたき落とし、そのまま相手を叩き斬った。
おっと、一応血は流れてるが、大噴出とか、そういうのにはなってない。
自分のコレ、刃のほとんどは潰してあるからね。
それでもほぼ鈍器だけど。
さぁ、次々とかかってこい!
…体力持たないから…。
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