大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

覚醒と現在地

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────────。
「今何時でここどこだ!?」
「きゃうっ!?」
がばっ!と起き上がろうとしたらうつ伏せだった。それでも即座にはね起き、意識が戻った瞬間半ば反射めいた勢いで、ロクに周りを確認せず叫んだ言葉がそれだった。
「いってぇ!?」
そして次の瞬間に叫んだのはこれ。背中に筆舌に尽くし難い激痛が俺の頭へ一気に押し寄せた。
うぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!と一人悶絶し、涙を堪える。心情的には地面を転がり回りたいが、そんなことをすれば背中が地面とぶつかって尚更痛い目を見るのは当然だろう。ちなみに、後から痛覚切りゃ良かったと思った。
それはともかくとして、身をよじって痛みの波が過ぎるのを待ち、随分マシになってから目の前のアーネに気づく。
「………大丈夫だったか?」
「大丈夫ではありませんでしたわ。結界を抜ければ貴方は居ませんでしたし、魔族と会って攫われて、また訳の分からない魔法に使われそうになりましたし。けれど、今は大丈夫ですの」
「そうか、良かった」
「今は貴方がいますもの」
少し紅潮した頬、潤んだ瞳、荒く吐く吐息。
「別に俺じゃなくてもよかったろ。ラウクムとかさ」
「いいえ、貴方でなければダメでしたわ」
──まさか、とは思うが。
アーネは何か《勇者》について知ってる…のか?今の発言はそうとしか思えないが…こいつが気づくか?背中の《勇者紋》を知ってるだけで?
まぁ、今は保留にしておこう。
「そうか、っと」
髪の中からマキナが取り返してくれた袋を出し、中からタイマーを取り出す。まぁ、外が既に明るいから大体どのぐらいかは分かるのだが。
「残り……十八時間か。結構寝てたな」
周りは草木一本すら生えない荒野。落ちた後、着地して一歩も動いてないんだろう。魔族の追撃が無かったのは助かった。まぁ、普通は落ちたら地面と激しいキッスの後に死亡だからな、諦めたのかもしれない。
アーネがマキナを拾って返してくれたぐらいだし、多分マキナも魔力がほとんど枯れて、そのまま力尽きるように眠っているのだろう。
魔法の塊であるマキナに眠っているという表現はあっているのかどうか知らんが。
「貴方が寝ている間に少しでもその背中を治せたら良かったんですけれど…魔力も回復力も消耗していて、回復魔法すら使えませんわ。貴方には少し悪いのですけれど、しばらく我慢してもらうより他ありませんの」
「しゃーねーよ。あんま気にすんな。俺も回復薬作ってこなかったし。一本ぐらい作っときゃよかった」
それでも一応、応急手当ぐらいはしてあるようだ。感謝感謝。
親指を軽く噛み、滲んだ血を待機状態のマキナに塗りつつ言葉を発する。
「マキナ、ここから結界の南端までどの方角へどのぐらい走ればいい?」
『南西へ約百二キロ・です』
百キロ越えか……休まず走り続けてギリギリ間に合うかどうか。しかも俺なら、だ。アーネが俺と同じぐらい体力があるとは思いにくいし、消耗しきった直後だ、なおさら無理だろう。
どうするか…
もう一度親指を噛み、少し多目に血をマキナにつける。
「マキナ、メッセージだ。相手は……」
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