大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

炎と追走

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辛うじて避けた爆炎、髪や服、ついでに肌も多少焦げたりはしたが、大した怪我でもないし、アーネも無事そうだ。意識はまだ戻ってないが、少し休ませれば大丈夫だろう…多分。
だがまさか。
「なんだありゃ!!」
『ケケケケケケケケ!!』
甲高い笑いを撒き散らし、明らかに鉱物や煉瓦のような土塊で出来た壁を燃やしながら俺を追い掛けてくる人型の炎。
姿は腰から下の足がくっついて、胴がずっと伸びているような姿。もう一度言おう、それが壁を焦がすのではなく、燃やしながら、それも金剣を握った俺を大した苦もなく追いかけてくるのだ。ついでに笑いながら。
怖いなんてモンじゃない。
もしも少しでも足を止めれば、即座にこいつは俺に抱きつき、骨まで焼き殺すだろう。
あの爆炎がまさか魔獣の一種だとは思ってもいなかった。
レイヴァーの嘘つきが!!
『どうにか対処出来んのか?』
「無理無理無理!!緋眼で見りゃ一発で分かるぞ!核が無ぇ!」
この手の実体が無い魔獣は、ウィル・オ・ウィスプやフレイムマンなどのように核があるはずなのだが、この炎人にはそれが無い。
核がないなら安定せず、すぐに崩れ始めたりすぐに消滅したり、後は暴発したりするんだが──
暴発?
「シャル!」
『あぁ、ぶくぶくボコボコと気色悪い勢いで膨らみ始めたな』
大当たりかよクソッタレ!!
『ケヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!』
ばん、ともぼん、ともつかない音がした。
「っ、ぐぅ!!」
吹き荒れる爆炎と爆風。咄嗟にアーネを庇ったが、そのせいで背中が焼ける。いや、燃える。
「糞!!」
転がって炎を消そうとするが、中々消えない。こんな事をしている場合じゃないのに…こんなに騒いでいると、異変を感じ取った使用人の魔族や、最悪産獣師本人が飛んで来かねな──
『ケケケッ』
そんな笑い声が背中から聞こえた。
まさか。
『背中に……へばりついてるぞ』
「クソッタレが…!!」
どうする、服を脱いでいる暇はない。水も無ければ氷もない。実体の無いこいつを叩き落とすのも無理だ。
どうやってこの炎を消せば──
『膨らみ始めたぞ!!』
「っ」
最悪。方法は一つ思い当たったが…成功するかどうかはかなり賭けだろう。
だがやるしかない。
背中をピタリと壁につけ、背中の筋肉や骨を少し弄って逆ドーム型にする。
耐えろよ……俺の身体。
直後爆発。当然俺の背中は、見なくともとんでもないことになっているだろう。
だが炎は──
『消えたか。どうやった?』
「…爆発で炎を消した」
ざっくりとした説明をし、背中の感触にゾッとして静かに感覚を切る。だがこのままだと、貧血でぶっ倒れるな。元々あまり綺麗とは言えない背中だったが、これは治るのだろうか。
『安心しろ、勇者紋は火傷で爛れていようが背中の肉が削げ落ちてようが、そのうち浮かんで来る』
嬉しくない情報どうもありがとうよシャル。
『それと、爆発を聞きつけて何人か来てるな』
本当に嬉しくない情報をどうもありがとう!
『マスター』
「マキナ?」
ひとまずここから離れよう。そう思って走りはじめた所で報告が入った。
『マスターの・袋が見つかりました』
「どこだ?」
『回収済みです』
マキナ超有能。トラップを見過ごしたのはこれでチャラだ。
「じゃ、俺の身体ももたないし、逃げるとするか」
運良く部屋には窓が。と言う事は外へ通じてる訳で。
金剣を支えに回し蹴りを繰り出し、壁を大破させて逃走する。
目的地は……あぁ、そうだな。
外縁だな。
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