大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不快感と転送

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来た道を全力で引き返し、地上に出てすぐに怪しい青色の箱を発見。
だが、言われた通りそこに飛び込んだはいいものの、すぐに後悔する事となった。理由は二つ。
一つは箱の中が思った以上に狭く、不快だった事。その原因はただ箱が狭かっただけではなく──
「おい《勇者》、貴様もう少し端へ寄らぬか。余のか弱い身体が今にも押しつぶされそうであるぞ」
「黙れクソ神。お前が無理矢理入ったせいでぎゅうっぎゅうになったんだろうが」
……とまぁそういう事。システナが強引に割り込んで来たせいで、ただでさえ狭い箱の中が蟻ですら入る隙間がない程狭くなってしまった。
「仕方ないであろう?そこまで遠出するのであれば、余がついて行かねば貴様が逃げてしまう可能性があるであろうが。当然、余としても不本意だっ」
ついでに言うと箱は既に蓋がされてしまい、出る事も出来ない。普通なら窒息しそうなもんだが、どういう技術か呼吸に支障はない。それがせめてもの救いか。
もう一つは、穴の中の男魔族が言っていた事。
つまりは疲れる。乗り心地が最悪。
上下左右不規則に揺れる、たまにフワッと浮く、常に小刻みに震えている、謎のキンキン音が絶えずなり続ける、あとなんか微妙に生臭い。
そんな感じ。
「あー、ダメだこれ。ちょっと待って、なんかキてる。頭がぐらぐらして胸が気持ち悪い……うっぷ…」
「おい貴様!こんな密閉密着空間で嘔吐するでないぞ!?余はあらゆる攻撃を防げても、汚物を防ぐことは出来ぬからな!?」
俺だって自分のゲロに塗れて臭くなるなんてごめん被る。
必死に堪えていると、突然揺れ、浮遊感、その他諸々が急にふっと消える。
「む、着いたか?ほれ、出ぬか」
「俺の上に乗ってるやつが言うセリフかよ……ちょっと待ってくれ、五分でいいから休ませてくれ。今落ち着かせるから。あー……吐きそ」
「むぅ、仕方ない。五分だけだぞ」
つーか、なんでこいつが急かすのか。
「……ん?」
「どうかしたか?《勇者》」
「いや、今声が……」
した。確かに。
「む?どれどれ…んがっ!?」
「馬鹿、女神、少し黙れ」
箱を内側から開け、不用意に顔を出そうとしたシステナの手足と口を髪で縛り、箱の中にもう一度倒し込む。
その際、ガタッと音がした。
『…うん?』
『おい、どうした?』
『いや、今なにか音が……』
不味った。バレたか?
声からしているのは二人か。会話をしながら近付いてくる。
『は?返却用の転送箱に何か入ってる訳が無いだろ。下からしたら一欠片も無駄に出来ない貴重な物資だし』
『けど確かに今このへんから……』
足音が近付いてくる。少しずつ、けど確実に。
『ないない。それに、青はナマモノも生物も厳禁だろ?残ってることも無いだろうよ』
『うーん、そうなんだけどねー…?ま、いっか』
どうやら疑っているヤツも諦めたらしい。きゅっ、と踵を返す音がして──俺達の入っている箱を蹴飛ばした。
『おいおい、転送箱は高いぞ。それで壊すなよ?』
『…あれ?今この箱、やたらと重かった気が』
げっ。
『試しに開けてみようよ。中に何か入ってたら貰ってもバレないし、試しにあけてみようよ』
その言葉と同時に、箱の蓋が開かれた。
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