大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔獣と乱戦

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緩い傾斜を駆け下り、右手で胸の上で跳ねている金剣に触れ、それを勢いよく首から引きちぎる。
具現化した金剣は夕焼けを反射し、燃え上がるように輝く。それを右手で握りながらさらに加速──
『さっきの狙撃手スナイパーは!?』
『大猿の親玉みたいなやつ。ああほら、今振りかぶって──』
どいつだ?
ざっと見渡すと…いた。
視界の太ったオランウータンのような外見の巨大な猿。首周りからは直に生えているのだろうか、鉄塊がいくつもなっていた。
『見つけた!!』
超高速で投げられた鉄塊をワンステップで回避、勢いを殺すことなく、むしろさらに加速して──
──そして跳躍。
ドゴンッ!!と砂を散らし、一直線に大猿の所目掛けて矢の如く跳ぶ。
『ゴガアアアアアアアアアアアアアア!!』
大猿が首の周りにブドウのようになっていた鉄塊を一つもぎ取り、投石機のように勢いをつけて投げる。
『銀、剣!』
金剣を持ったまま銀剣を左手に握り、真っ向から鉄塊を叩き砕くように破壊。
さらに回転を加え、大猿の上に着地すると同時に顔面へ銀剣を叩き込む。
ぶごじゅっ、と手応えが伝わる。肉と骨、さらに脳が一緒くたに叩き潰される手応えだ。
まずは一匹。だが──団体様のド真ん中に着地したのだ。狙われない訳がない。
今はまだ戸惑っているらしく、魔獣から何かをしてくることは無いが、四方八方を魔獣に囲まれて何もされない訳が無い。今のうちに──
『血界は!?』
『偶数番だけ解禁な。つっても実質《血呪》だけだが』
『そんだけありゃ充分だ!!』
背中が熱を持ち、ざわめき、脈打つ。
『第二血界《血呪》、血海併用、全開放だ!!』
たった今死んだ猿の魔獣からも血を吸い上げ、身体に《血呪》の紋様を刻み始める。
『無茶はするなよ』
ズルズルと黒い紋様が身体の表面を這いずり回る。やがて、自我を持っているかのようなそれらは自分が気に入った場所を各々見つけたのか、そこに定着する。
それが全身に回った瞬間──爆発でも起こったような雄叫びが上がる。
『遅ぇ!!』
金剣と全力血呪を併用している今。
俺より早い存在はこの場にいない。
戦技アーツは不要。使う手間すら惜しい。
『オ──オォッ!!』
金剣の横薙ぎで鹿を狩り、一歩踏み込んで背後の蟹の一撃を回避、真上に跳躍して膝を巨人の顎に叩き込み、後頭部を掴んで半回転。首をへし折りながら着地。それと同時に金剣の能力をもう一度引き出す。
真横に飛び退き、左から迫る小さな象の魔獣の額に銀剣の切っ先を突き入れる。
『後ろ蜂。右から熊』
『正面!』
象から剣を引き抜き、逆手に握って前に突っ込む。
『ゴオオオガアアアアアアアア!!』
正面から両手を組んでハンマーのように振り下ろすオーガの一撃を、銀剣で少しだけ逸らしてステップ。
金剣が大した抵抗も許さずにオーガの首を切り裂き、ころりと落ちた首を後ろから迫ってきていた一メートル越えの蜂に蹴飛ばして当て、怯んだ所を真っ二つにする。
日が沈み、夜がやってこようとも。
俺は戦い続けた。
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