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本編
女神と勇者
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何か微妙に噛み合わないと思っていたが、こいつの今の一言でピンと来た。
そうか、こいつの中じゃまだ戦争の真っ只中なのか。後から誤解を解いとかないとな。今はしないけど。
『……なぁ今代の。もしよかったら俺の質問をシステナに聞いてくれないか?』
ん?構わんが。
『じゃあ……』
「さぁどうした?早く余を案内せぬか。おっと、その前にその怪我を治してやろう。さぞ痛むであろう?」
余裕たっぷりと言った風にして俺に話しかけてくる女神システナ。まぁ、実際は尋常じゃない鋭さを持った刃物で切り裂かれたようなその傷口は、それほど痛みを訴える事はないのだが。
だが、治してもらえるのなら治してもらおうか。
「ほれ、近くに寄らぬか。でなければ治せぬぞ」
『一応、警戒は解くなよ。下手したら気まぐれにゼロ距離から魔法とか魔術撃ち込んで来るからな。それも笑顔で』
何それ怖い。
『…頼む』
「…むぅ、見るからに警戒しているではないか。飼い主に捨てられた犬猫でももう少し心を開いておるぞ。余は貴様を取って食ったりはせんぞ?」
心外だと言わんばかりに眉を寄せる神サマ。その表情は存外可愛らしかったが、その程度で隙を見せたりはしない。
『なあ神サマよ』
「なんだ?《勇者》よ」
『俺の頭ン中の同居人からの質問なんだが…あぁ、まぁ俺からの質問でもあったんだが』
「まどろっこしいな。それがどうした?」
痛っ。なんか今、クッソ痛い静電気みたいなのが傷口で跳ねたんだが。まぁ、それも込みで治されているようだし、別にいいか。
『なんで聖女の能力が使える?どこまで使える?』
「そんなことか。先の問いが貴様自身のもので、次が過去の勇者のものだな?」
その通り。口には出さないが。
「まぁよい。先に過去の勇者の問いに答えると、少なくとも聖女より巧く使えるであろうよ。出力的には知らぬがな」
サラっとそんなことを言うが、これってとんでもないんじゃないか?いや、それも「神様だから」の一言で済まされそうだけどさ。
「と言うよりもだな、そもそも余の力が結界なのだ。聖女は余から力を取ったに過ぎぬ。これで両方の問いに答えたことになったか?」
『……え?』
「だから言ったであろう?余の力のほとんどを兄に奪われたと。兄グルーマルが余から力を根こそぎ奪い、余の力を全てつぎ込んで製造したユニット。それが《聖女》だ」
ほれ、終わったぞ。そう言って俺の肩から手を離すシステナ。肩の怪我は確かに治ったようだったが、今聞いた話がかなり衝撃的でそれどころではない。
「なんだ?そんなに驚く話か?それならもう一つついでに教えてやろう。と言っても、勘の良い者なら気づいてもおかしくはないのだがな」
俺が答える前に、笑いながらシステナが話し始める。
「貴様…《勇者》の元は大兄ヴェナムだぞ?それも余のように僅かに残されたりはしておらぬ。大兄ヴェナムが死に、代りに産み出された存在、それが《勇者》だ」
そうか、こいつの中じゃまだ戦争の真っ只中なのか。後から誤解を解いとかないとな。今はしないけど。
『……なぁ今代の。もしよかったら俺の質問をシステナに聞いてくれないか?』
ん?構わんが。
『じゃあ……』
「さぁどうした?早く余を案内せぬか。おっと、その前にその怪我を治してやろう。さぞ痛むであろう?」
余裕たっぷりと言った風にして俺に話しかけてくる女神システナ。まぁ、実際は尋常じゃない鋭さを持った刃物で切り裂かれたようなその傷口は、それほど痛みを訴える事はないのだが。
だが、治してもらえるのなら治してもらおうか。
「ほれ、近くに寄らぬか。でなければ治せぬぞ」
『一応、警戒は解くなよ。下手したら気まぐれにゼロ距離から魔法とか魔術撃ち込んで来るからな。それも笑顔で』
何それ怖い。
『…頼む』
「…むぅ、見るからに警戒しているではないか。飼い主に捨てられた犬猫でももう少し心を開いておるぞ。余は貴様を取って食ったりはせんぞ?」
心外だと言わんばかりに眉を寄せる神サマ。その表情は存外可愛らしかったが、その程度で隙を見せたりはしない。
『なあ神サマよ』
「なんだ?《勇者》よ」
『俺の頭ン中の同居人からの質問なんだが…あぁ、まぁ俺からの質問でもあったんだが』
「まどろっこしいな。それがどうした?」
痛っ。なんか今、クッソ痛い静電気みたいなのが傷口で跳ねたんだが。まぁ、それも込みで治されているようだし、別にいいか。
『なんで聖女の能力が使える?どこまで使える?』
「そんなことか。先の問いが貴様自身のもので、次が過去の勇者のものだな?」
その通り。口には出さないが。
「まぁよい。先に過去の勇者の問いに答えると、少なくとも聖女より巧く使えるであろうよ。出力的には知らぬがな」
サラっとそんなことを言うが、これってとんでもないんじゃないか?いや、それも「神様だから」の一言で済まされそうだけどさ。
「と言うよりもだな、そもそも余の力が結界なのだ。聖女は余から力を取ったに過ぎぬ。これで両方の問いに答えたことになったか?」
『……え?』
「だから言ったであろう?余の力のほとんどを兄に奪われたと。兄グルーマルが余から力を根こそぎ奪い、余の力を全てつぎ込んで製造したユニット。それが《聖女》だ」
ほれ、終わったぞ。そう言って俺の肩から手を離すシステナ。肩の怪我は確かに治ったようだったが、今聞いた話がかなり衝撃的でそれどころではない。
「なんだ?そんなに驚く話か?それならもう一つついでに教えてやろう。と言っても、勘の良い者なら気づいてもおかしくはないのだがな」
俺が答える前に、笑いながらシステナが話し始める。
「貴様…《勇者》の元は大兄ヴェナムだぞ?それも余のように僅かに残されたりはしておらぬ。大兄ヴェナムが死に、代りに産み出された存在、それが《勇者》だ」
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