981 / 2,022
本編
念押しと因縁
しおりを挟む
「いいか、絶対だぞ?これは俺がやる。だからお前は絶対に手を出すなよ?」
『わ、わかりました。わかりましたから。リーザ・ヒラムさん、ですね?一年の。なるほど…わかりました。覚えておくだけにしておきます。神の名に誓って』
「頼む」
一応元は絶ったというか、解呪させたが、それをさせたのもその本人だからな。過去にコントロールされたかどうかは分からないが、長い間同じ魔族の支配下にあったのだ。可能性は他の生徒より高いのはほぼ確実だろう。
とりあえず、あの日の事を軽く《黒法師》に話はしておいた。
『他は……何かありますか?』
「何かって言われてもな……」
俺が出くわした魔族絡みの事件って言ったら……直近だとモンスターパレードの時の腐屍者達。そこから巻き戻っていくと聖学祭の襲撃、その前はゼランバか?その前はリーザの…あれ?リーザの話が先だっけ?まぁいい、その前は……
『………どうやら随分とあるようですね』
「非常に不幸な話だが、俺は魔族とかなり深い因縁があるからな」
『親族の誰かが殺されたのですか?』
「ンなこと、結界に守られたこの時代にそうあるかよ。魔族を見たことないヤツの方が多いだろうし」
『そうですか。私の父は魔族に殺されましたが』
こともなげに《黒法師》がそう返す。
表情を伺ってみるが、その顔にこれと言った表情は浮かんでいない。
それが押し殺したものなのか、既に乗り越えたものなのか、それとも擦り切れて無くなってしまったものなのか。
分からないが、落ち着いた手つきで『気にしないでください』と綴る《黒法師》。
「………そうか、俺はそう言うのとはまた少し違うんだが…あぁ、でも、あながち間違っちゃないな。俺も家族を魔族に殺されたよ」
初めて魔族と会った時、紅の森。
色々とあったし、シャルもいるから。
「まぁ、それとはまた別の因縁だ。それに、その時の魔族は既に倒した──」
そう言えば。
南下した時、アーネが攫われた時、あの時に結界の内側に魔族を招きこんだ犯人もまだ見つかっていない。
《黒法師》が怪しいと睨んでいる奴らの中にソイツがいるかもしれないが、それ以外の可能性も……いや、そんなことを言っていてはキリがないか。
『どうかしましたか?』
「いや、何でもない。もう終わった話だし、今言ってもどうしようもない話でもある」
『それでも、そのどうしようもない話を言う事は大切だと思いますよ?告白するだけで救われる事もあります』
随分と実感のこもった言い方。多分こいつはそれで救われたんだろう。ついでに言うと、俺の殺された家族の話の続きだと思ってるな。
俺は別に救いだのなんだのを求めている訳じゃないが──
「それで救われる奴は最初から救われてる奴だよ。本当に救われない奴はどういう奴か知ってるか?」
『…?』
「救われたいと思ってない奴だよ」
歴代《勇者》達みたいに、とは言わないが。
と、そこでコンコン、と。
控えめなノックがされた。
《黒法師》が慌てて戸の方へ向かう。どうやら負傷者が来たらしい。
ま、今日一日ぐらいは…ゆっくり寝て過ごしますかね。
『わ、わかりました。わかりましたから。リーザ・ヒラムさん、ですね?一年の。なるほど…わかりました。覚えておくだけにしておきます。神の名に誓って』
「頼む」
一応元は絶ったというか、解呪させたが、それをさせたのもその本人だからな。過去にコントロールされたかどうかは分からないが、長い間同じ魔族の支配下にあったのだ。可能性は他の生徒より高いのはほぼ確実だろう。
とりあえず、あの日の事を軽く《黒法師》に話はしておいた。
『他は……何かありますか?』
「何かって言われてもな……」
俺が出くわした魔族絡みの事件って言ったら……直近だとモンスターパレードの時の腐屍者達。そこから巻き戻っていくと聖学祭の襲撃、その前はゼランバか?その前はリーザの…あれ?リーザの話が先だっけ?まぁいい、その前は……
『………どうやら随分とあるようですね』
「非常に不幸な話だが、俺は魔族とかなり深い因縁があるからな」
『親族の誰かが殺されたのですか?』
「ンなこと、結界に守られたこの時代にそうあるかよ。魔族を見たことないヤツの方が多いだろうし」
『そうですか。私の父は魔族に殺されましたが』
こともなげに《黒法師》がそう返す。
表情を伺ってみるが、その顔にこれと言った表情は浮かんでいない。
それが押し殺したものなのか、既に乗り越えたものなのか、それとも擦り切れて無くなってしまったものなのか。
分からないが、落ち着いた手つきで『気にしないでください』と綴る《黒法師》。
「………そうか、俺はそう言うのとはまた少し違うんだが…あぁ、でも、あながち間違っちゃないな。俺も家族を魔族に殺されたよ」
初めて魔族と会った時、紅の森。
色々とあったし、シャルもいるから。
「まぁ、それとはまた別の因縁だ。それに、その時の魔族は既に倒した──」
そう言えば。
南下した時、アーネが攫われた時、あの時に結界の内側に魔族を招きこんだ犯人もまだ見つかっていない。
《黒法師》が怪しいと睨んでいる奴らの中にソイツがいるかもしれないが、それ以外の可能性も……いや、そんなことを言っていてはキリがないか。
『どうかしましたか?』
「いや、何でもない。もう終わった話だし、今言ってもどうしようもない話でもある」
『それでも、そのどうしようもない話を言う事は大切だと思いますよ?告白するだけで救われる事もあります』
随分と実感のこもった言い方。多分こいつはそれで救われたんだろう。ついでに言うと、俺の殺された家族の話の続きだと思ってるな。
俺は別に救いだのなんだのを求めている訳じゃないが──
「それで救われる奴は最初から救われてる奴だよ。本当に救われない奴はどういう奴か知ってるか?」
『…?』
「救われたいと思ってない奴だよ」
歴代《勇者》達みたいに、とは言わないが。
と、そこでコンコン、と。
控えめなノックがされた。
《黒法師》が慌てて戸の方へ向かう。どうやら負傷者が来たらしい。
ま、今日一日ぐらいは…ゆっくり寝て過ごしますかね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる