大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

光とスキル

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どこの生徒も、それなりに夜遅くまで一人、あるいは二人ぐらいで訓練だの練習をしているようだ。
それに気づくまで少し時間がかかったが。
『ん?』
どうした、シャル。
『いや、窓の外が光って』
窓?
シャルに言われてそちらに視線を向けると、間髪入れずにユーリアの剣が素早く俺の首元を撫でる。
「危なっ」
「よそ見をする方が悪い!!」
そう言いながらさらに追撃を重ねるユーリア。まぁ、ユーリアの言う通り一対一の勝負中によそ見する俺が悪いのだが。
『お前も他人に教える方法がこれしかないってのもまた効率悪いよな…』
悪かったな。教えられた事なんか無かったんで教えようにも教えられねぇんだよ。
『ん、また光って──』
えっ、マジ?
「だからよそ見をするなと──」
「あらよっと」
ユーリアから目を離した瞬間、素早く髪をユーリアに絡ませ、動きを奪う。
「えっ、これちょっ」
髪から逃げるために身をよじるが、その度に動きが鈍くなる。捕まりそうになった獲物がどう逃げるかを考えて、少しずつ追い込んでいけば、ほら簡単に。
「むぐぅ…レィア、これは卑怯ではないか?」
「それなりの制限があるにしたって、三十秒間も一方的に相手を攻撃できるスキルを持っていて何を言うか」
手足を背面の方でひとまとめに縛り上げ、前後に揺れるしか出来なくなった彼女を見下ろしながらそう言い返す。
「それはその通りなのだが…私のスキルは一対一の状況では生きにくいのは知っているだろう…意地悪め。あぁ全く、私はどんな場面でも生きる君のスキルが羨ましいぞ」
なんだ、つい最近も聞いたような話をまたされている。
「言っとくが、俺のスキルはそこまで便利な物じゃないぞ?」
「そこまで汎用性があるのにか?」
「確かに俺のスキルは汎用性が高いが、ほとんどは極端な話、誰でも出来るんだよ」
外の光を睨み、戦技アーツの光らしいと結論を付ける。大した話じゃなかったな。
髪を解き、ユーリアが手足を擦りながら立ち上がって愚痴にも似た質問を続ける。
「本当にそうなのか?私からしたら、怪我をした時に骨を意識してズラしたり固定するような技、とても出来るように思えないのだが」
「ありゃ比較的簡単な部類だ。骨と内臓の位置をしっかり把握して、特定の筋肉を使って固定するだけで誰でも出来る。俺は骨の方にも働きかけて楽にしてるがな」
そう言うと、ユーリアが「出来るわけない」と言いたげな顔をする。
「ま、そう思いたいならそう思え。だが、出来ない訳じゃないって事は覚えとけ。俺のスキルは端的に言えば、『度を越して器用』って事だからな」
「とは言ってもそれが文字通り度を越しているから私には真似出来そうもないんだが。特に連戦技アーツ・コネクトとかいうのは出来る気がしない」
「当たり前だ馬鹿。そうそう真似されてたまるか」
俺の連戦技アーツ・コネクトを習得して欲しいとは言ったものの、だからと簡単に真似られてしまうと、こっちがへこむ。
『でもお前は大体の戦技アーツを真似られるだろう?』
「でも君は簡単に戦技アーツを会得していくじゃないか」
「まぁな」
二人から突っ込まれるとは思っていなかったが。
「ま、流石にお前みたいな特殊な戦技アーツは真似られんがな。でも──」
たしかこうだったか?剣を正面に構えて──
「《ブレイクスラッシュ》」
青い彼女程早くも鋭くもない、平凡な戦技アーツが繰り出される。
「とまぁこんな感じか。手本があったからやりやすかったな」
「では私にももう一度見せてくれないか?その連戦技アーツ・コネクトとやらを」
「あん?別にいいんだが…正直あんまり参考にはならんぞ?」
「それでも見たいんだ」
「んー、別にいいけど…」
こうして夜は更けていく。
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