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本編
第六夜と猛攻
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日が落ち、大した休息も挟めずに第六夜が始まった。
明るい陽の光が消えると同時に再開された魔獣達の驀進は昨晩よりも激しく、質もぐっと高くなっていた。
たとえば──
「っざけんな!!スライムとか倒せるか!剣じゃ斬れねぇだろうが!!」
強力な酸を撒き散らすタイプや身体が燃え上がるタイプ、毒を精製するタイプなど、その他にも様々なタイプがいるが、今回来たのは普通のオーソドックスなスライム。
もっとも、それだって気管に滑り込んで窒息死とか普通にできるのだが。
『対処法は?』
「こいつは焼くか魔力を詰め込んで破裂させる!!」
けど火もなければ余った魔力もない今はどうすることも──
「馬鹿!お前なら《血腕》があるだろ!今すぐ握りつぶせ!!早くやらないと、お前も私もスライムの腹の中になるぞ!」
そうだ、俺には魔法より便利な物があるじゃないか。
辺りにいくらでも出来ている魔獣達の屍の山、それから流れる血の河と身体の末端をつなげる感覚。《血海》だ。
「第五血界《血腕》展開!!」
直後、無数の手で編まれた巨大な腕が複数のスライムを一度に握る。
ぐちゅっ、と泥を握りつぶしたような音がした後、スライムが跡形もなく消滅していく。
「よくやった!次が来るぞ!」
「くそ、次から次へと!」
走り出そうと、足を一歩強く踏み込んだ瞬間、腹が痛みを伴った熱を持つ。
「ぐっ!!」
「大丈夫か!?」
「…大丈夫、だ!」
一瞬迷ったが、腹部及び内臓の痛覚を切断。さらに血呪を起動。これにより身体もより動くようになる。
踏み込んだ足をそのまま軸足に、強烈な回し蹴りを双頭の大鬼の腹へ叩き込む。
内臓を痛めないよう最大限注意を払いつつ黒剣を素早く振り抜く。
しかし手応えは肉を切り裂く感覚ではなく、硬い筋肉に弾かれる感覚。
クソ、やっぱり一撃じゃ抜けないか……
「変われ!」
「!」
素早く地面を蹴って後ろに下がると同時に、俺の頭上を飛び越えてヤツキが前に出る。
「死ね」
ヤツキの持つ黒の長剣が翻り、紙を裂くようにして大鬼の皮膚を裂き、肉を斬り、骨を断つ。
素早く手足を刎ね、腰を全力で捻った横薙ぎの一撃が大鬼の太い喉を引き裂き、返した切っ先が心臓を貫く。
「お前は無茶すんな!本当に死ぬぞ!!」
「悪い!」
と──
「…なんの音だ?」
『この音…虫の羽ばたく音だな』
俺の疑問にシャルが短く答える。
「……まさか!?早すぎる!まだ第六夜だぞ!?」
「…ヤツキ?何か知ってるのか?」
「ヤバい、剣を構えろ。死ぬ気で生き残れ」
ヤツキがいつにない真剣な顔をしてそう言う。
「アバドンが来る」
明るい陽の光が消えると同時に再開された魔獣達の驀進は昨晩よりも激しく、質もぐっと高くなっていた。
たとえば──
「っざけんな!!スライムとか倒せるか!剣じゃ斬れねぇだろうが!!」
強力な酸を撒き散らすタイプや身体が燃え上がるタイプ、毒を精製するタイプなど、その他にも様々なタイプがいるが、今回来たのは普通のオーソドックスなスライム。
もっとも、それだって気管に滑り込んで窒息死とか普通にできるのだが。
『対処法は?』
「こいつは焼くか魔力を詰め込んで破裂させる!!」
けど火もなければ余った魔力もない今はどうすることも──
「馬鹿!お前なら《血腕》があるだろ!今すぐ握りつぶせ!!早くやらないと、お前も私もスライムの腹の中になるぞ!」
そうだ、俺には魔法より便利な物があるじゃないか。
辺りにいくらでも出来ている魔獣達の屍の山、それから流れる血の河と身体の末端をつなげる感覚。《血海》だ。
「第五血界《血腕》展開!!」
直後、無数の手で編まれた巨大な腕が複数のスライムを一度に握る。
ぐちゅっ、と泥を握りつぶしたような音がした後、スライムが跡形もなく消滅していく。
「よくやった!次が来るぞ!」
「くそ、次から次へと!」
走り出そうと、足を一歩強く踏み込んだ瞬間、腹が痛みを伴った熱を持つ。
「ぐっ!!」
「大丈夫か!?」
「…大丈夫、だ!」
一瞬迷ったが、腹部及び内臓の痛覚を切断。さらに血呪を起動。これにより身体もより動くようになる。
踏み込んだ足をそのまま軸足に、強烈な回し蹴りを双頭の大鬼の腹へ叩き込む。
内臓を痛めないよう最大限注意を払いつつ黒剣を素早く振り抜く。
しかし手応えは肉を切り裂く感覚ではなく、硬い筋肉に弾かれる感覚。
クソ、やっぱり一撃じゃ抜けないか……
「変われ!」
「!」
素早く地面を蹴って後ろに下がると同時に、俺の頭上を飛び越えてヤツキが前に出る。
「死ね」
ヤツキの持つ黒の長剣が翻り、紙を裂くようにして大鬼の皮膚を裂き、肉を斬り、骨を断つ。
素早く手足を刎ね、腰を全力で捻った横薙ぎの一撃が大鬼の太い喉を引き裂き、返した切っ先が心臓を貫く。
「お前は無茶すんな!本当に死ぬぞ!!」
「悪い!」
と──
「…なんの音だ?」
『この音…虫の羽ばたく音だな』
俺の疑問にシャルが短く答える。
「……まさか!?早すぎる!まだ第六夜だぞ!?」
「…ヤツキ?何か知ってるのか?」
「ヤバい、剣を構えろ。死ぬ気で生き残れ」
ヤツキがいつにない真剣な顔をしてそう言う。
「アバドンが来る」
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