大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
832 / 2,022
本編

狼と臨界点

しおりを挟む
「我輩はのう?学校長の秘密を握っておる。これがある限りは学校長は我輩に手出しは出来んのじゃ」
「ふーん。で?それがどうした?」
《臨界点》がそんな秘密を握っているからといって、第三派閥がどうにかなるような話ではあるまい。加えてその手の秘密というのは誰も知っていないからこそ秘密の人質として意味を発揮する。多数に教えると効力を失い、不利になる。
「そしてお主が《フェンリル》に入れば、数の上ではバランスを取れる。パワーバランスは数の上では同一になるのじゃ。なんの問題もないぞ?」
「あ?パワーバランスが同じだぁ…?」
何を言って──と言いかけて止まる。
「お前、移籍する気か?」
「勿論じゃ」
そんな事を《シェパード》が許すだろうか?それに、抜けることが出来たとして、学校側の情報を握っているであろう《臨界点》を《キャット・シー》が逃がすだろうか?
「………。」
「それならば勝機はあろう?学校は我輩達に手出しは出来ぬし、《猫》の方も戦力としてはやや心許ないから攻めることも出来ぬ。《フェンリル》が成立する可能性……我輩は九割を超えると予想しておるぞ?」
そう言って手を差し伸べてくる《臨界点》。手を取れば俺は《フェンリル》に入ったことになるのだろう。
でも。
「断る」
その手をぴしゃりと叩き落とし、俺はそう言い切る。
「…何故じゃ?」
「別にお前達が《フェンリル》を作るなら作れ。自由にやればいい。出来るもんなら四つでも五つでも新しい派閥を作ればいいさ。でもな、お前達は俺を一度嵌めようとした。だから断る」
「…そんな理由でかの?」
「信頼出来るかどうか、って事は重要だと思うぜ?あとは単純に…気に食わないからだな」
「何がじゃ?何が不服なのじゃ!?」
「テメェの態度だよ」
鋭く俺がそう言う。
「テメェの言い方は終始『自分が相手より上にいる』事を前提にした言い方だ。それが気に食わねぇ。だから断る」
「お主こそ上から目線ではないか…」
「それでもお前は文句を言わないだろ?許容できるか出来ないかってのはそういう話だ」
さて。
「俺は絶対に《フェンリル》には入らない。何度でも言おう。その上で俺はお前に聞く。さぁ、どうするんだ?」
《臨界点》の描いていた第三派閥はパワーバランスという点では明らかに他の二派閥より低い。《シェパード》にやられるとしたら当然潰されるし、《キャット・シー》にもおそらく負ける。
「それでも我輩は──」
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:666

処理中です...