大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
828 / 2,022
本編

メッセージと帰り

しおりを挟む
事態が唐突に好転したのは次の日。
夕飯も終わって、アーネとシエルが風呂に入る中、俺は一人でベッドに寝転がりながらどうすべきか考えていると、にわかに風呂場がドタバタと騒がしくなる。
『…何事だ?』
「…さぁ?」
シャンプーでも切れたか?ちなみにその辺の消耗品はアーネの実家から定期便で送られてくるのだが…もしかしてあいつ、片付けたまんま忘れてたのか?
そう思っていたら、騒々しい音と共に脱衣場の戸が開け放たれる。
赤い髪は濡れて頬に張り付き、慌ててバスタオルを身体に巻いたためにかなり大胆な格好になったアーネが飛び出てくる。
「シャンプーか?それとも石鹸か?」
「メッセージですわ!!」
はぁん?メッセージ……?
あぁ、マキナがまだ少し調子悪いから、アーネからベルにメッセージを送ってもらってたんだった。
「長距離メッセージは暫く残るんだろ?別に今こんなに慌てて風呂から飛び出る必要は無かったんじゃあ…」
「鎧の件じゃなくて派閥の方の関係ですわ!!」
「…?誰からだ?」
はて。俺がメッセージが使えないと知っているヤツなんてそんなにいないはず──。
「ルルシェル先輩ですわ」
「伝言は?」
いたわ、そういや。でも鎧とメッセージが繋がってるって言ってはないんだけどな…まぁ、俺とアーネはよく一緒にいるからダメ元だったのかもな。
「仕込んでる人を捕まえたので、明日貴方の前に引っ張ってくるとの事ですわ」
「マジか」
『おぉ?一気にいい方向に転がりそうだな』
だな。
「他は?」
「特にない…ですわね」
「そうか…」
……そいつから足はつくだろうか。
『どうだろうな。この手のヤツはだいたい捕まるって向こうも分かってるだろうからな…何も知らない可能性は充分ある』
「…あの、どうかしたんですの?」
「ん?」
ひたひたと、濡れたままアーネが近づいてくる。
「あぁ。お前が気にすることじゃない。大した事でもないしな」
「そうですの?………そうですわ、貴方、冬季休暇はシエルと一緒に私の家へまた──」
「ん、あぁ悪い。冬は一度紅の森の方に戻る。シエルは…後から本人に聞く」
「そう…でしたの。私の両親も楽しみにしてましたのよ?」
とすっ、と軽い音を立てて俺のすぐ隣に座る。上気した頬が、僅かに傾いたベッドのお陰で互いが触れそうな程に近づく。
「森の方に少し用事があるからな。アーネの親には…悪いがそう言っといてくれ」
そう言ったところで風呂場の方からシエルがアーネを呼ぶ声が。
「ほら、湯冷めする前に入り直してこい。また風邪引くぞ」
「…そうですわね。派閥の件、早く決着がつくといいですわね」
「あぁ」
風呂に戻っていくアーネを見ながら、あの一言のためだけに風呂場を飛び出すほど驚いたのだろうか…などと思っていた。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:666

処理中です...