大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

決着と鎧

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すれ違いざまに、血が跳ねた。
ぱっ、と散るようにして跳ねたそれは、まるで桜の花弁のように。
「痛ってぇなオイ」
「────!?」
《剣姫》が飛ばした剣と、戦技アーツ唯一の一アイン》はギリギリで俺を避けて通過。特に戦技アーツの方は真正面から突っ込んで来たが……なんというか、辛うじて避けられないことも無い程度だった。
そして後ろから迫ってくる剣達もそれは同様。
手足に細い引っ掻き傷のような怪我をする程ギリギリだったが、逆に言うとそれだけ。当然大怪我という訳では無い。
そして俺の剣は──。
「これで俺の勝ち、それでいいな?」
「い、一体何を言って!!まだ勝ち負けはついていな………な…?」
ちょいちょい、と俺が自分の首を人差し指で触れる。
訳が分からないと言った顔をしながら《剣姫》が首を何気なく触ると────ぱくっ。と。
「なっ!?」
薄く斬ってあった皮膚が今ので開き、血がつぅ──と流れていく。
その感覚と手についたものを見て瞠目する《剣姫》に、確認も込めてこう言う。
「これで俺の勝ち、でいいか?実戦ならこれがどうなっていたか…なんて、言うまでもないと思うが」
「参り……ました」
「よし」
さて、これで懸案事項はひとまずケリがつくだろう。
金剣を回収しながらそう考える。
《フェンリル》は実在しないと《剣姫》が言い、仮に問題が起きても彼女がどうにかするだろうし、そうすれば学校長は俺が前と同じフリーの二つ名だと認識して敵視することは無くなるだろう。
そうなれば前と同じ、平和な学校生活が戻ってくる。
まぁ、派閥抗争は激化するかもしれないが、無所属の俺には関係の無いことだ。自由にやっててくれ。
精々が俺の所に依頼という形で傭兵の真似事があるようになるかもしれないが…その時はその時だ。
「あのねぇ…レイくん…」
「ん?なんだ?」
いつの間にか戦闘モードが解け、元のゆったりとした喋り方に戻っている《剣姫》の方へ振り返る。
「一つ聞きたいんだけどぉ…あの《千変》とか言う鎧ぃ…どうして使わなかったのぉ…?」
「あぁ、あれか。あれは今ちょっと…壊れた」
そう言うと、《剣姫》が目を丸くする。
何となく目をそらして頬を掻きながら答えていく。
「少し前に、ギガースとか言う魔獣を訓練で倒したんだが…その時に少しばかり酷使し過ぎたらしい」
「確かあれぇ…噂だと槌人種ドワーフ製のぉ…それも唯一無二の武具オリジン・ウェポンなんでしょぉ…?大丈夫なのぉ…?」
「今大至急、その製作者にどうすりゃいいかメッセージを飛ばしてるよ」
さて、ひとまずこれで事態は終息──
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