大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

超巨人と激戦

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私が行こう、俺が行こうなんて言葉は誰の口からも出ない。
しかしそこに静寂はない。ヒトのカタチを模した、あまりにも大きすぎる化け物が大きな声で叫び散らすからだ。
「──俺が行く」
キン、と金剣と銀剣を取り出しながら言う。
「フィールド開けろ。三秒だけな」
「分かりました」
フィールドの前に立ち、素早く走れるように構える。
「シィルさん、あなたに伝える事があります」
「ん?」
そっ、とクードラル先生が俺の耳元に口を寄せ、草木に囁きかけるような小さな声で俺に話しかける。
「──────────。以上です」
「………。」
「それではフィールドを一瞬開けます!入る気が無いなら離れていてください!」
シャル、聞こえたか?
『あぁもちろん。お前の答えは?』
ンなモン決まってる。
「クソくらえ、だ」
あぁ全く。
気に入らない。
「行きます!」
その声と同時に駆け出す俺。
視界に入るのは気色の悪い魔獣一匹のみ。
「起きろ!!《千変》!!」
俺の声に反応してマキナが鎧を構築、一秒とかからずに身を包む。
『ッッッ!ラァァァアア!!』
ドッ、と地面を蹴り、走る勢いのまま宙を飛ぶ。
思いっきり上体を反らせ、身体のバネを蓄える。狙いは──心臓のド真ん中。
右手を振り下ろしながら身体のバネも解放、稲妻のように振り降ろされた銀剣が、狙いを外さずにギガースの胸に中程まで突き立つ。
──中程、だと?
『オォォオォォォオオォオォォォォォ!!』
再び咆哮、思わず耳を塞ぎたくなるような、それと同時に逃げたくなるような、本能を直に揺さぶる叫び。
化物は、その巨大な手のひらで小蠅でも叩き落とすようにして俺を殺しにかかる。
動きは──思った以上に早い!
『──オォッ!!』
即座に銀剣を放棄。それどころか銀剣を足場にし、肩に飛び移る。
ギガースの手は空を切り、俺の身体はその肩の上。
そして担いだ金剣には戦技アーツの赤い輝き。
『《剛砕》!!』
ビッ、と真横に振り抜いた金剣は確かにギガースの首を斬りつけ、その赤い血を派手に撒き散らした。
──だが、それだけ。
『グヴルゥゥゥオオォオオォオ……』
斬りつけた傷は浅く、血も飛びはしたものの、ギガースそのものがデカすぎるため、結果的に多く飛んだだけ。こいつにとってはかすり傷だろう。
それに──。
『こいつっ…』
硬い。
皮膚がただ硬いだけではない。
硬い皮膚の下、まるで鉄の棒を束ねて編み上げた様な強靭な筋肉。
それが鍛え上げられた鎧の如く身を包み、ほとんどの攻撃が通らなくなっている。
これは──不味い。
『テメェらすっこんでろ!!絶対にこっち来んなよ!!』
絶対的な隙、戦技アーツ発動直後の隙。
そこをギガースが、埃を払うような動作で俺を叩き殺しにかかる。
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