大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

夜と風

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午後も例によって例のごとく、雑用をしていたらいつの間にか日が落ちていた。
まぁ、冬だから落ちるのが早いってのは分かっているんだが、それでもびっくりするぐらい早かった。
六時前だが日はすっかり落ちていて冷え始めている。少し早めだが、夕飯が出来はじめる頃だし、そろそろ二人をアーネとシエルを誘って食堂に行こうか、なんて思いながら今さっき戦闘の終わった訓練所を抜け出し、寮の方へと向けて歩き出す。
ちなみに俺が見ていたのは基本的にルーシェの戦いばかりで、リザとかユーリアの戦闘は見ていない。
と言うより、見ている暇がないと言う方が正しいか。
今回の二つ名争奪戦は二つ名持ち七人と監視役の先生三人が三人の候補をチェックする体制なのだが、それでも人数がやや足りない。
特にリザの所が熾烈というか苛烈を極めているようで、そちらに五人回され、残った五人で二人を見張っている状況になった。
さらに、ルーシェの方よりユーリアの方が激戦らしく、ユーリアの方へ多めに人員を割くと…ほら、一人、あるいは二人でルーシェを見張る事になった。
そんな訳であちこち走り回ったりメッセージ飛ばしたり壁や床、場合によっては天井の修理などもしていると時間があっという間に過ぎたのだ。
「腹ァ…減ったな…」
特に意味もなくそう呟き、ポケットに両手を突っ込んで空の月を眺める。
そう言えば、あの月を見たシエルは、なんて言ったっけ。確か目がどうのこうのって言ってたような気がするが……?
俺の記憶が正しければ、月が目に見えるような魔獣はいないんだけどな。
ま、いいか。
ひゅう、と少し強めの風が吹き、その寒さに身体を震わせてからコートの襟を立てる。
『体調崩すなよ?』
「風邪なんか引いたことねぇから安心しろ」
『ふーん。ところで馬鹿は風邪を引かねぇらしいぞ』
「んじゃ残念ながら引いちまうな。早いとこ寮の食堂であったまるとしよう」
大した距離でも無かったが、少し急ごうと早足になった所で足を止めた。
「こんばんわぁ…レイくん」
「…よぉ先輩。こんなクソ寒いところで何してんだ?」
俺の前に立ち、そう声をかけてきたのは今回の二つ名候補の一人、ルルシェル・ガウヴラン。
おっかしいな。この先輩、ついさっきまで訓練所にいただろ。
まさか俺を追い抜いてわざわざ立ってたの?このクソ寒い中?
「きみとお話ぃ…したかったんだぁ…」
「へぇ、そりゃまた」
ゆっくりとルーシェはそう言う。
じっくりと間を開け、口を開き──。
「…へくちっ」
………。
「とりあえず、寮の方に行くか」
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