大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

品物と跳躍

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「…これで揃ったか?」
『完璧です・マスター・量も指示された以上です』
学級委員長の緊急メッセージから約三十分。
俺とシエルは手分けして都市の中を走り回った。
量も数もそれなりに多かったため、シエルを送り出してから大丈夫かと、少し不安にもなったが、要らぬ心配だったらしい。
流石魔族の血が流れているだけあって、腕力パワー体力スタミナも桁違いだった彼女は、ぶっちゃけ俺よりよく走って品物を買ってきてくれていた。
あと、小さい子のおつかいか何かだと思われていたらしく(あながち間違いではないが)、割引きも少しされていたらしい。
いや、割引きというか…オマケか。
そのため、学級委員長から言われた量よりも幾分多くなってしまったが…まぁ、問題あるまい。
「早く終わったが……それでも結構時間を食ったな。仕方ない」
開店時間は過ぎているため、大急ぎで向かわねばならない。
しかし、既に王都の中に入っている上、聖学祭最終日ということもあってか、道は人でごった返している。
ならば俺達が取れる行動はそう多くはない。
大量の食材を入れた袋を髪が持ち、空いた両手で。
「ほらシエル、おいで」
「………!うん…!」
シエルを抱っこする。
どこぞの巨女をお姫様抱っこした時は重かったり挙動不審だったりと面倒だったが、シエルはそんな事は一切なく、むしろ自ら進んで抱きつく。
こっちの方が個人的には楽だし、そうしてくれたらどこぞの赤髪の女も楽だったんだが…あぁダメだ。あいつは胸が暑苦しい。
「よっと」
そんな事を考えながら、足に銀髪を絡める。
《血呪》は…要らないか。というか、こんな事で使わせて貰えるわけがない。
「シエル、振り落とされないように気を付けろよ?」
「………うん!」
小さな手を精一杯俺に回しながら俺にしがみつくシエル。ちなみに今回はお姫様抱っこではなく、抱きついたまま抱き上げたような形で抱き上げている。
シエルは小さいからお姫様抱っこしにくいんだよな。
それはさておき。
「いくぞっ!」
シエルがぎゅうっ、と拳を握りしめるのを背中で感じつつ、いつもの大跳躍。
一息で屋根に飛び乗り、そのまま走り出す。
『マスター』
「あ?」
ずっと耳に入れっ放しにしていたマキナが急に口を開く。
『メッセージです』
「学級委員長?」
『はい・どうしますか』
「今そっちに向かってるから多分大丈夫だろ…うん、マキナ。俺の真似して適当に受け答えしといてくれるか?」
『了解しました』
おぉ、言ってみるもんだな。
俺達はそのまま、シエルの楽しそうな声と一緒に店まで一気に走り抜けた。
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