大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

話と緊迫

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「…なんと。それは本当か?」
「え?あぁうん、ホントホント。防衛戦二日目ん時に来た。…ん?なら四日前か。まぁそんな感じ」
「そいつの目的は分かるかの?」
「いんや知らね。なんかよく分からんが、俺に色んな事喋って魔法ぶちかまして逃げやがった」
お陰で大火傷を負っちまった。ついでに言うならアーネに大目玉も貰った。
「ほう…一体どんな話を聞いたんじゃ?」
「んー?なんか…あー…どう言やいいんだ?えーっと…」
シャル、おいシャル。
『…なんだ?』
どこまで話す?この前の魔族の件。
『あ?全部話しちまっていい──訳じゃねぇな。狭間の子の事は絶対守秘だ。あとは…好きにしろ』
そういやその事聞くの忘れてたな。今度こそあとから話を聞くぞ。
「…どうかしたのか?」
「あーいや、どうも嘘くせぇ事も言われたから、どこまで話しゃいいか迷ってた」
「何、その嘘も含めて儂に話してくれて構わんぞ」
にこやかに笑いながらそう言うヴァルクスの爺さん。じゃあ全部(狭間の云々以外)言っちゃうか。
「ゼランバの聖女アンチの話、それを魔族が裏で糸ひいてたって話、あとは──」
頭をカチ割らんばかりの警告音。
直感にも近いそれは速やかに俺の二つ名の由来である緋色の目を呼び起こし、視界がそれを辛うじて追いかけようとする。
それは《緋眼》という《勇者》専用の能力を使ってですら捉えきることの出来ない──深紅の影。
それが俺の喉元へと一直線へと伸び、同時に英雄が俺の後ろに回り込む。
「君……」
俺の耳元で深刻な声で《神剣》が話しかける。
「それは…どこまで聞いたんじゃ?」
「…あぁ…うん、スキルがなんか抜かれてどうのこうのって話はそいつから聞いたんだけど…まさか本当マジ?」
何が起きたか分からない。いや、何が起きたかは分かっている。《神剣》が剣を抜き放ち、俺の喉元に突きつけた。それだけだ。
問題は、どうしてこうなっているのか。
チャキッ、と音が鳴って紅より深い深紅の剣が俺の首元へとさらに寄せられる。
余程の業物なのだろう、俺の首に触れただけで首の皮が薄く斬れる。
「──!!おい、止せ」
「悪いが、君はそう言える立場では──」
「バカ違ぇ!!今すぐ止めろ!!」
俺がそう命令したが、一瞬だけ間に合わなかった。
スカートの内側に隠してあった《千変》が静かに、しかし素早く伸び、正確に俺の首元に当てられた深紅の剣を持つ手を貫かんと迫る。
その先は下手な刃物より鋭く、確実に英雄の手を貫くかと思われた。
しかしそれを英雄は手首を捻るだけで解決。
全てを弾ききる。
怪我をするかも、などとは露ほども思っていなかったが、ここまで鮮やかな手を見せられるとは思わなかった。
「……悪いが、儂は手加減が苦手での。出来るだけ早く吐いてしまう方が得策じゃと──」
「れ、レムナント様!」
そこで聖女サマが声を上げる。
顔色は薄暗い部屋の中でも分かるほど真っ青だった。
「今すぐやめてください!そして席について!」
「しかしお嬢…」
「これは命令です!」
そう言われて渋々座る《神剣》。
先ほどとは違ってその目は険しい。
あー…今すぐ帰りたい。
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