693 / 2,022
本編
役割と流れ
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二つ名達の出し物としての正式名称は何だったか。
よく覚えてないが、たしか『観客が主役の劇』みたいな事を書いて提出した記憶がある。
内容…というかシナリオは至極簡単。
どこぞの駄竜──もちろん本人には言わない──をあの爽やかな《勇者》が倒すシナリオ。
…どこかで聞いたような話だが、これを通さないとどこかの雷様に居合切りされてしまうため、このままの使用だ。
ただ、竜を倒すまでに観客も一緒に戦ってもらう。
流れとしては、簡単な導入をした後、竜状態のルト先輩が登場、《勇者》が竜を倒すためにエネルギーを蓄えるための時間稼ぎとしてこちらが貸し出した武器(もちろん本物ではない)を手に持った観客が巨大な竜と戦い、一定時間ウィルをルト先輩から守り切れば《勇者》がトドメの一撃を竜に叩き込んでめでたしめでたしで終わる。
役割は《臨界点》が語り手、俺と《雷光》が盛り上げ役、《逆鱗》が悪役で《勇者》が主人公。《不動荒野》は魔法の維持。
え?どこに魔法が必要な要素があったかって?
普通に考えて、魔獣の竜種なんて王都に連れてくることは出来ない。
そこで《竜転》で竜となったルト先輩が選ばれた訳だが。
当然《竜転》を使えるのは龍人種しかいない訳で、龍人種は大貴族しかいない。
平民が大貴族に本物ではないとはいえ剣を向け、あまつさえそれで叩こうと言うのだ。
そんな事をすれば即刻死罪なのだとか。
そういう訳で、俺達がとった対策は二つ。
一つ、ルト先輩の巨体にか幻惑系の魔法をかけ、竜種ではなく多頭竜に見せるようにした。
二つ、興奮の魔法。これを観客にかけることで、普段ならヒュドラが大貴族だと勘づく人がいるかもしれないが、この魔法で冷静さを欠かせ、その可能性を低くすることにした。
この二つの魔法によって、初日は非常に楽しんでもらえたらしい。
で、今。
盛り上げ役として欠けていた俺達が入ったことによって、確実に昨日以上の盛り上がりとなっている。
「くっそ…結局かよ…」
幕の内側から一瞬だけ顔を出すと凄まじい歓声が鳴り響いていた。即座に顔を引っ込めたが、何人かは俺に気づいていたようだ。
「なんだ、いいじゃないか。似合ってるぞ」
「だから悪いんだろうが」
最終的に俺が着させられたのは《雷光》が用意した服装。
一番の理由は、店の制服では戦闘向きではなく、《雷光》が寄越した服は戦闘が可能だった点か。
流石にウェイトレス姿で戦っている最中に服が破けるなんてアクシデントはご遠慮願いたい。
だからと言ってもこれもまた屈辱的な服装だが…背に腹は変えられん。
「武器は持ってるな?」
既にウィルは表へ出、ナレーターの声が魔法によって変声、拡大されて伝わる。
《雷光》が最後の確認を俺にとる。
「一応な…起きろ、マキナ」
『はい・マスター・起動します』
「鎧じゃなくて剣だ。刃は潰せ。数は二」
『了解しました』
腰に吊してある《千変》がするすると伸び、黒剣のような形の剣が二振り生成される。
「さて」
幕の外ではルト先輩が登場したのだろう、凄まじい歓声──いや、絶叫が俺達の耳を叩く。
「行くか」
「あぁ」
よく覚えてないが、たしか『観客が主役の劇』みたいな事を書いて提出した記憶がある。
内容…というかシナリオは至極簡単。
どこぞの駄竜──もちろん本人には言わない──をあの爽やかな《勇者》が倒すシナリオ。
…どこかで聞いたような話だが、これを通さないとどこかの雷様に居合切りされてしまうため、このままの使用だ。
ただ、竜を倒すまでに観客も一緒に戦ってもらう。
流れとしては、簡単な導入をした後、竜状態のルト先輩が登場、《勇者》が竜を倒すためにエネルギーを蓄えるための時間稼ぎとしてこちらが貸し出した武器(もちろん本物ではない)を手に持った観客が巨大な竜と戦い、一定時間ウィルをルト先輩から守り切れば《勇者》がトドメの一撃を竜に叩き込んでめでたしめでたしで終わる。
役割は《臨界点》が語り手、俺と《雷光》が盛り上げ役、《逆鱗》が悪役で《勇者》が主人公。《不動荒野》は魔法の維持。
え?どこに魔法が必要な要素があったかって?
普通に考えて、魔獣の竜種なんて王都に連れてくることは出来ない。
そこで《竜転》で竜となったルト先輩が選ばれた訳だが。
当然《竜転》を使えるのは龍人種しかいない訳で、龍人種は大貴族しかいない。
平民が大貴族に本物ではないとはいえ剣を向け、あまつさえそれで叩こうと言うのだ。
そんな事をすれば即刻死罪なのだとか。
そういう訳で、俺達がとった対策は二つ。
一つ、ルト先輩の巨体にか幻惑系の魔法をかけ、竜種ではなく多頭竜に見せるようにした。
二つ、興奮の魔法。これを観客にかけることで、普段ならヒュドラが大貴族だと勘づく人がいるかもしれないが、この魔法で冷静さを欠かせ、その可能性を低くすることにした。
この二つの魔法によって、初日は非常に楽しんでもらえたらしい。
で、今。
盛り上げ役として欠けていた俺達が入ったことによって、確実に昨日以上の盛り上がりとなっている。
「くっそ…結局かよ…」
幕の内側から一瞬だけ顔を出すと凄まじい歓声が鳴り響いていた。即座に顔を引っ込めたが、何人かは俺に気づいていたようだ。
「なんだ、いいじゃないか。似合ってるぞ」
「だから悪いんだろうが」
最終的に俺が着させられたのは《雷光》が用意した服装。
一番の理由は、店の制服では戦闘向きではなく、《雷光》が寄越した服は戦闘が可能だった点か。
流石にウェイトレス姿で戦っている最中に服が破けるなんてアクシデントはご遠慮願いたい。
だからと言ってもこれもまた屈辱的な服装だが…背に腹は変えられん。
「武器は持ってるな?」
既にウィルは表へ出、ナレーターの声が魔法によって変声、拡大されて伝わる。
《雷光》が最後の確認を俺にとる。
「一応な…起きろ、マキナ」
『はい・マスター・起動します』
「鎧じゃなくて剣だ。刃は潰せ。数は二」
『了解しました』
腰に吊してある《千変》がするすると伸び、黒剣のような形の剣が二振り生成される。
「さて」
幕の外ではルト先輩が登場したのだろう、凄まじい歓声──いや、絶叫が俺達の耳を叩く。
「行くか」
「あぁ」
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