大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

傷と縫合

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とんでもない衝撃を顔に受け、驚きと顔の──具体的に言うと頬に受けた痛みではね起きた。
「いった!?何事──」
驚きと痛みではね起きた直後、次は背中や胸の痛みで声も出ない程にのたうち回る。
「~~~~~~~~~~!?」
「お、やっと起きたか《緋眼騎士》」
俺が寝かされているベッドのすぐ傍、姿勢を低く覗き込むようにしている《雷光》が。
ちらりと見た感じ、頭に包帯が巻いてあったり、頬に何か貼ってあったりと、いかにも怪我人と言った風体だが、それなりに元気そう──というか。
「クッソ《雷光》テメェ!!ビンタ一発にどんな威力込めてやがんだ!!」
最初の衝撃と痛みの原因はこいつだろう。理由はビンタした直後の腕の形で止まってやがるから。
「む、やはり加減が難しいな…貴様が早く起きなかったのが悪いのだぞ。揺すっても抓っても起きなかった」
「なんつー暴論。で、怪我人を文字通り叩き起した理由は?」
「あぁ、体調はどうか聞きたかったのでな」
それは普通怪我人が自力で起きてから聞くもんだ。
馬鹿じゃなかろうかコイツ。
「ざけんな。テメェが起こすまですこぶる良かったよ」
ひとまず身体を起こすと、胸と背中が特に痛んだ。しかし手当はしてあるようで、ヤバイ感じはしない。
…手当?
「おい、誰が俺の怪我を治したんだ?」
誰かが俺の背中を見たら──そう思った途端、冷や汗が吹き出る。
「普通はここはどこだ、とかあの後どうなったのか、とか今は何時だ、とか聞くべきではないのか…?」
「あぁそれも重要だが、手当してくれた奴に礼でも言っとかなきゃな」
適当にそんなことを言うと《雷光》がそっと俺の腰を指さす。
「あ?」
「その鎚が勝手に治した…と言うか傷口を塞いでいた。胸の傷を見た感じ私が縫うよりもよっぽどマシだったので私達は何もしていない。その鎚…いや鎧か?どちらにせよ、それに感謝するんだな」
マジか。
ガバッ!と既にボロ切れになりかけていた服を勢いそのまま引き裂き、胸のあたりを覗き込むと、そこには鋭い刃物で抉られたような傷が。
そしてそれを塞ぐように規則正しく往復する銀の糸──恐らく糸状に変化した《千変》だろう。
「…マジか」
「…いきなり室内で男子が上の服を破いて上半身裸になられたか弱い女子の気持ちが分かるか?」
「そういう事を心配する女子は魔獣を倒したりするモンじゃねぇし、何十人と囲ってる包囲網を一撃で抜けたりしねぇよ」
まぁ、とりあえずの心配事は回避された。
なら次はこっち。
「じゃ、少しばかり遅れたが……ここはどこで、あの後どうなって、今は何時だ?」
あと──と、まだ続ける。
「メッセージの魔法使える?使えるなら大至急一年新クラスのアーネ・ケイナズに連絡とって来てもらいたいんだが」
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