大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

結論付けと解散

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突如現れた《臨界点》が、その場を荒らして話をまとめ、奪い去った。
起こった話としてはあまり正確ではないが、俺の印象はそう言う印象だった。
この場の空気を全てぶち壊し、ひっくり返し、呆気に取られている間に何もかもを持っていく。
手を貸すと宣言してからの《臨界点》の行動は非常に早かった。
あっという間に学校長の魔法を破壊してアーネを自由にし、そのままクアイを囲っていた光のハコも、絡まっていた糸を解くようにスルスルと解除させる。
「あ……?あなた、は?」
「では一日。きっかり二十四時間だけ、この少女の身柄は借りるぞ」
と言って、小柄な身体で自分とほぼ同じサイズののクアイを担いで颯爽と学長室から出ていく《臨界点》。出ていかれてからハッと我に返った学校長が魔本に手を伸ばし、しかし即座にその手を下ろす。
「……こうなってしまった以上は仕方ありません。一度は譲りましょう。ですが、もし不味いと判断した時はすぐにでも、どこからでもあの少女を処理出来る。そう思っておいてください」
「おっかねぇ。脅迫か?」
「単なる事実です」
それを脅迫っつぅんだよ。
ともかく一度学長室を出、どこかへと行ってしまった《臨界点》を探す所から始めねばなるまい。
と、思っていたのだが。
「なんで俺達の部屋に居やがる」
とりあえずアーネと話をしようと思い、二人で部屋に向かっていたのだが、部屋の中から声がすると、シャルとマキナが口を揃えて言う。
誰かと思って警戒しながら入ると、そこには血まみれのクアイと《臨界点》が。
「何、大したことでは無い。この部屋の合鍵程度なら持っておると言うだけの事じゃ」
他人が自室の合鍵を持っているという事実が大したことだと思うのだが。
寄越せと言ってもどうせはぐらかされる。いやそれより、とため息をついて無理矢理切りかえる。
「クアイ、怪我はどうだ」
「あ、その、一応塞がって……」
「大したモンじゃ。服こそ血まみれじゃが、傷自体は回復魔法で穴を埋めてある。少々不格好じゃが、これが無ければ死んでおったかもしれんの。今は寝ておけ」
小さな手のひらでクアイの瞼を上からそっと押え、トン、トン、トン。と三度クアイの額を指の腹で優しく叩く。
「さて、これで良かろう」
と言って《臨界点》が手を退けると、クアイは既に可愛らしい寝息を立てて眠っていた。
「話は粗方聞いた。此奴に繋げられた《腐死者》のパスを追って逆に奴の居場所を探るのじゃな?」
「あぁ。あんな啖呵を切っといてなんだが、俺は魔法がからきしダメでな。アーネとお前に頼ることになると思う。代わりにだが、俺が出来ることなら可能な限り手伝おう」
それを聞くと、《臨界点》は少々嫌そうに口元を歪めた。
「ふむ、分かった。それと、魔法が出来ぬのなら、こんなことを言うのではないぞ」
分かってる。けど、手を出さずにはいられなかったのだか。
「では後でな」
と言って《臨界点》が部屋を出ていこうとする。
「ちょ、どうすんだ」
「どうもせぬわ。幾らなんでも用意はいるじゃろう。今晩十時。その時になれば我輩は戻ってくる。なんせそこそこ大きい魔法になるじゃろうしな。《緋翼》も準備を怠るでないぞ」
「分かってますわよ」
と言い残し、《臨界点》が出て行った。
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