1,913 / 2,022
本編
始眼と線
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授業を終えたアーネと昼食に行き、そういや先生怒ってた?という風に雑談をしてゆっくりとしていると、マキナがメッセージが来たと告げる。
「悪い、ちょっとメッセージが入った」
とアーネに軽く謝りつつ、誰かとは聞かずに「繋げ」と言うと、即座にメッセージが繋がる。
『体調はどうかしら?』
「良くなったよ。で、メッセージとばしたってことは」
『えぇ、その通りよ。あらかた結果が出たわ。今すぐ聞きたい?』
「そりゃもちろん。けど、そっちに行かなくていいのか?」
『いいわよ別に。説明するだけだし』
ラピュセが一つ咳払いをし、説明を始める。
『まず、先に言っておかなければならないのは、あの鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬るのは不可能よ。間違いなく剣がアダマンタイトに耐えきれず折れるわ』
「けど、そうはならなかった」
『……えぇ、そうね。調べた研究員によると、切り口は恐ろしく滑らかで、これが金属とは思えない程だったそうよ』
「そりゃ嬉しい反応だ。で、他は?」
『アダマンタイトに僅かに着いていた金属片と、回収した鋼鉄の剣に着いていた金属。それぞれが互いの金属であり、どちらも真新しいもの。貴方が鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬った事は状況からして確定ね。加えて魔力観測機に反応はなかったから、魔法やそれに類する何かは無い。さらに映像記録でも変な挙動や物は見つからなかった。結論として、《緋眼騎士》が鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬った、という事は状況的に確定ね』
「どうやって斬ったかは?」
『普通によ。研究員の見る限りは。左の剣で横に一閃。その後、その勢いのまま右の剣で縦に一閃。どうやって明らかに剣の刃より長い範囲斬ったかは映像を撮ってた機材の位置が悪くて分からなかったそうよ。まさか斬って痕を残すんじゃなくて、普通に切り落とすなんて思う訳が無いじゃない』
あの時のアダマンタイトのサイズは一メートルの立方体。対する鋼鉄の剣は刃渡りざっと七十センチと言ったところだったはず。冷静に考えれば、明らかに刃の長さが足りないのだ。
やはり。まさかとは思っていたが、荒唐無稽だった俺の仮説が急に現実味を帯びてきた。
「……他に何かあるか?」
『んー、特にないわね。で、どうやってアダマンタイトを斬ったの?』
「そいつは秘密だ……と言いたいが、無茶に付き合ってもらった礼だ。ヒントぐらいなら教えてやる。ありゃタネを言うと戦技だよ」
『戦技?そんな』
「じゃあな。あ、その結果、後で部屋に送っといてくれ」
『ちょっと!』
ラピュセの言葉を無視し、適当にメッセージを切る。
「何の話でしたの?」
「あー、俺の戦技についての話だ。そんな気にしなくていい」
不可能を可能にした切断。
加えて斬ったのは間違いなく、本来斬れない範囲まで斬ってみせた。
最初、始眼を求めた時のコンセプトは、全ての挙動が戦技になるような戦技。無形でありながら、効果だけは残す連戦技のような戦技を目指していた。
だから不思議だったのだ。切断する線が見える戦技など、俺が求めていたものとは随分違うなと。
違った。始眼は俺の求めていた戦技と同じだった──いやむしろ、その性能は求めていたものよりかなり上となった。
始眼が発動し、線が見えた時点で、対象は切断が確定する。
きっとこの戦技はそういうモノだ。
逆に言うなら、線さえ見えれば、斬れなくとも、斬る事が出来る。
始眼は、その線を強引に見出す眼でもあるのだ。
「悪い、ちょっとメッセージが入った」
とアーネに軽く謝りつつ、誰かとは聞かずに「繋げ」と言うと、即座にメッセージが繋がる。
『体調はどうかしら?』
「良くなったよ。で、メッセージとばしたってことは」
『えぇ、その通りよ。あらかた結果が出たわ。今すぐ聞きたい?』
「そりゃもちろん。けど、そっちに行かなくていいのか?」
『いいわよ別に。説明するだけだし』
ラピュセが一つ咳払いをし、説明を始める。
『まず、先に言っておかなければならないのは、あの鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬るのは不可能よ。間違いなく剣がアダマンタイトに耐えきれず折れるわ』
「けど、そうはならなかった」
『……えぇ、そうね。調べた研究員によると、切り口は恐ろしく滑らかで、これが金属とは思えない程だったそうよ』
「そりゃ嬉しい反応だ。で、他は?」
『アダマンタイトに僅かに着いていた金属片と、回収した鋼鉄の剣に着いていた金属。それぞれが互いの金属であり、どちらも真新しいもの。貴方が鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬った事は状況からして確定ね。加えて魔力観測機に反応はなかったから、魔法やそれに類する何かは無い。さらに映像記録でも変な挙動や物は見つからなかった。結論として、《緋眼騎士》が鋼鉄の剣で超化アダマンタイト合金を斬った、という事は状況的に確定ね』
「どうやって斬ったかは?」
『普通によ。研究員の見る限りは。左の剣で横に一閃。その後、その勢いのまま右の剣で縦に一閃。どうやって明らかに剣の刃より長い範囲斬ったかは映像を撮ってた機材の位置が悪くて分からなかったそうよ。まさか斬って痕を残すんじゃなくて、普通に切り落とすなんて思う訳が無いじゃない』
あの時のアダマンタイトのサイズは一メートルの立方体。対する鋼鉄の剣は刃渡りざっと七十センチと言ったところだったはず。冷静に考えれば、明らかに刃の長さが足りないのだ。
やはり。まさかとは思っていたが、荒唐無稽だった俺の仮説が急に現実味を帯びてきた。
「……他に何かあるか?」
『んー、特にないわね。で、どうやってアダマンタイトを斬ったの?』
「そいつは秘密だ……と言いたいが、無茶に付き合ってもらった礼だ。ヒントぐらいなら教えてやる。ありゃタネを言うと戦技だよ」
『戦技?そんな』
「じゃあな。あ、その結果、後で部屋に送っといてくれ」
『ちょっと!』
ラピュセの言葉を無視し、適当にメッセージを切る。
「何の話でしたの?」
「あー、俺の戦技についての話だ。そんな気にしなくていい」
不可能を可能にした切断。
加えて斬ったのは間違いなく、本来斬れない範囲まで斬ってみせた。
最初、始眼を求めた時のコンセプトは、全ての挙動が戦技になるような戦技。無形でありながら、効果だけは残す連戦技のような戦技を目指していた。
だから不思議だったのだ。切断する線が見える戦技など、俺が求めていたものとは随分違うなと。
違った。始眼は俺の求めていた戦技と同じだった──いやむしろ、その性能は求めていたものよりかなり上となった。
始眼が発動し、線が見えた時点で、対象は切断が確定する。
きっとこの戦技はそういうモノだ。
逆に言うなら、線さえ見えれば、斬れなくとも、斬る事が出来る。
始眼は、その線を強引に見出す眼でもあるのだ。
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