大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

結界と突破

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「五十年前からずっと…って…」
まさか。
初代聖女が最初に張った結界。
その結界の内側に最初から魔族がいて。
何年になるか分からない潜伏。
おそらく、外の魔族との連絡も断絶し、近くにも同族はほとんどいなかっただろう。
見つかれば英雄に屠られ、たとえ英雄に見つからずとも、その先に見えるのは、誰にも助けに来られずに迎える緩やかな死。
そいつらはずっと、息を潜めて。
今もなおいる──!?
「それは本当か?」
英雄を迎えた時とはまた別種の汗が背中を伝う。
「おそらく確定じゃろう。でなければ足りんのじゃ」
「足りない?」
「君も言った通り、例の儀式には約一週間の準備と、二人以上の魔族が必要じゃ…そして、一度の儀式に奪えるスキルの数は一つのみ…」
それは知っている。だが、足りないとは…?
「本部で死んでいたのは、約三十人の幹部らしき人物達じゃった。それら全員がスキルを抜かれておった…純粋に二人のみでやれば、約三十週間もの期間がかかるが…仮にその倍の数、魔族がいれば…期間は半分になるじゃろ?」
「……言いたいことはわかった…で?アンタら英雄達は何人いると予測しているんだ?」
「少なくとも三十人」
英雄の答えは端的で。
それ故に、絶望は遅れてやって来た。
「三十人…!?そんなに数がいれば、今すぐ王都が陥落してもおかしくは──!!」
いや、陥落はしないのか。
静かに俺を見返す一対の瞳が俺を冷静にさせた。
目の前の存在が、誰でどんなものだったかを忘れていた。
「…いや、すまない。そう簡単に落ちる訳が無いか…しかし、それだけの魔族が一集団となっていたなら、なぜ今まで動かなかったんだ?」
当然の疑問だ。
少しばかり失礼かもしれないが、三代目聖女の時代なら、三十人もいれば余裕で陥落出来ただろう。
「最初はおそらく、そこまで数がおったわけじゃなかったんじゃ」
「…何?」
「…先程も確認したがの、聖女様の結界に引っ掛かるのは、強大な力をもった魔獣や魔導具…そして魔族じゃ」
「知ってる。だから魔族には結界を突破出来な──」
「いや、出来るんじゃ。常人なら、考えついてもやろうとはせんじゃろうが…奴らはやりおった」
結界を破らずに突破する方法…だと!?
「対策は出来ているのか!?」
「──対策は…せいぜいが英雄やギルドの冒険者への依頼で結界周りの巡回強化をした程度じゃ」
「たかがいち冒険者に魔族が倒せるのか!?それじゃ対策とは言えないだろ!!」
そんなものがあるのだったら、今この瞬間だってノンピリできない。
しかし──だからといって。
俺に…何が出来る?
「じゃがの」
英雄が口を開く。
「それが最も効果的なのも事実なんじゃ」
結界の突破方法というのはの?──英雄がわざとらしくタメを作る。
その口から出た答えは、確かに考えついても実行しようとは思わないようなものだった。
「手足を削ぎ落として生命力をギリギリまで落とし、魔力を抜き取ってタンクを限りなくゼロに近づけて突破する、というものじゃよ」
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