大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

研究と剣

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要求をするだけして、しばらく所長室で雑談をしていると、最初に俺と話をしていた女研究員が俺を呼びに来た。
「《緋眼騎士》様、用意が出来ました。こちらへお越しください」
「ん、悪いな」
「私も見てみたいし、行きましょうかね」
と言ってラピュセが椅子から降り、危なげなく、正確にこちらへ来る。
「イーノ、ほら行くわよ」
いなくねぇか?と思ったのだが、ふらりといつの間にかイーノが居る。
「所長、よろしいのですか?」
「うん?あぁー…まぁいいわよ。ディレスに代わりにやらせときなさい」
「分かりました」
と言って、イーノも一緒についてくる。
「で、何を用意したのかしら?」
「はい。今回用意したのは──」
と、女研究員の説明を右から左へ受け流しつつ、少しだけ考え事に耽る。
どのぐらい《始眼》の情報をこいつらに渡そうか。
これに関しては、ぶっちゃけ《始眼》のことを全部話しても問題は無いのではないかと思っている。
理由は二つ。知られた所で痛い札ではないという点と、説明したところで理解されるかどうか微妙だという点。
まぁ、どの程度のことができるかはこちらも未知数なので、正直なところは「やってみてから考える」、なのだが。
「──そもそも研究所なので、それぐらいしか用意できなかったのですが、よろしかったでしょうか」
「え?……あー、あぁ。それでいい。急に来て無茶言ってんの俺だし」
何の話かは聞き流していたので半分程度しか分からないが、多分俺が後付けで頼んだ剣についてだろう。
「わかりました。ではこちらの部屋にお願いします。所長はこちらの部屋に……」
「はいはい。じゃ、面白い結果、期待してるよ」
と言ってラピュセとイーノ、そして女研究員が俺の案内された部屋の隣に入っていく。
「んじゃ、やってみますか」
扉を開き、部屋に入る。部屋の作りは左右と正面、三方がガラスで隔てられており、その向こうから研究員が複数人こちらを見ていた。
『聞こえるかしら?《緋眼騎士》さん?』
「あぁ聞こえる。問題ねぇよ」
天井付近の隅にある魔導具からラピュセの声がする。そういう道具なのだろう。
『うん、こっちにも声が聞こえるね。じゃあ早速どうぞ。どうせソレを切るんでしょう?折角なら派手に頼むわよ』
「言ってくれるねぇ」
つっても、俺がするのはただ斬るだけ。そんな期待には答えられそうにないが。
さて、部屋の描写は少ししたが、俺が斬る物については何も言ってなかったな。
部屋の中央に金属製の剣が三本、それと三方の縦横高さが全て一メートル程の箱が二つ。色は銀と黒。
「ふーむ」
剣を二本拾い上げ、軽く握って振ってみる。見た目は無骨で何の変哲もない、ただの鋼鉄の長剣ロングソード
少々重いが、銀剣ほどでは無いし、リーチも大体銀剣と同じぐらいか。これなら問題ないな。
刃を見、二、三度空気を斬る……うーん、切れ味が悪いという程ではないだろうが、決して良くはないだろう。そんな感じ。包丁よか切れるが、武器としては及第点と言ったところだな。うん。
けど、これが剣であることに変わりはない。
やるか。
「《始眼》」
目を閉じてそう呟き、目を開くより先に視界が開ける。
剣を握りしめ、俺は目の前の銀の箱を刮目して視た。
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