大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

休息と来客

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ほんの少し眠るつもりだったのが、思ったよりぐっすりと寝てしまったらしい。
夕方になって、アーネが戻って来るまで、一度も起きずにそのまま寝こけていたようだ。
「起こさなかったのか」
テーブルの上でコインとして待機していたマキナに言う。
「マスターには休息が必要と判断したので」
そんな疲れている風だったかね。とりあえずマキナを目に戻し、目を開いて視界を確認する。
「ほれ、もういいぞ」
「本当に大丈夫ですの?」
「大丈夫だって」
と、俺から全力で顔を背けるアーネに言う。
誰かが部屋に入ったことに気づき、起き上がってアーネと顔を合わせた瞬間、彼女が小さく悲鳴を上げた。
何かと思えば、視界がやけに狭い。マキナが寝ている間に目から抜け出したのだが、それに気づかなかった俺が普通に目を開け、うっかりアーネが空の眼窩を覗き込んで驚いたのだ。
「……大丈夫です、わね。ごめんなさいですわ」
「うん?あぁ、別にいいさ。不意に見せられりゃ驚きもする」
しかしそうだな。こういうことが無いよう、寝るとき用の眼帯でも作っておくか。材料があればの話だが。
「で、そっちはどうだった?」
「大体は予想通りだったんですけれど……そのせいで尚更わからなくなりましたわね」
大方、先程学校長のところで言っていた倉庫の件を司書の所に聞きに行ったのだろうと当たりをつけて聞いたのだが、どうやら正解だったようだ。
「ま、根を詰め過ぎるとかえって分からなくなったりするからな。あんまり無茶するなよ」
「分かってますわ。ところで、《雷光》が探してましたけれど、何したんですの?」
「あ?何を探してるんだ?」
「あなたを、ですわ。前の件でマキナが壊れて、メッセージが繋がらないからと、探し回っていたようですけれど」
《雷光》にマキナが直った事はまだ伝わってないのに、俺が帰ってきたことは伝わってるのか。ちぐはぐだな。
「マキナ、俺が寝てる間に誰か来たか?」
「いえ。数人が部屋の前を通りはしましたが、入室を試みる者はいませんでした」
普通なら自室から訪ねるべきだろうに。まぁいいか。
「マキナ、メッセージ」
「既に飛ばしているのですが、反応がありません。取り込み中のようです」
噛み合わねぇな……
「アーネ、《雷光》と会ったのっていつの話だ?」
「ついさっきですわ。こっちに戻ってくる時にすれ違って、そう聞いてきたんですの」
という事は、本当に今さっきか。
「あ、マスター。今繋がり──」
「《緋眼騎士》!いるか!?」
と、部屋の扉を強く叩く音と共に、切羽詰まった声が響いた。
「……なんだ?」
「開けますか?」
マキナがそう聞くが、お前その姿でどうやって扉を開けるんだ。
「いや、俺がやるよ」
と言ってひょいと開くと、案の定そこには《雷光》がいた。
「よう、一週間ぶり……いや、もっとだな。元気にして──」
「貴様に話がある。至急だ。今話せるか?」
「……わかった、入れ」
ため息をひとつ呑み込み、俺は突然の来客を迎え入れた。
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