大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

用意と口実

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さて、話がようやくひと段落ついた所で、シエルと一緒に下へと降りる。
「よーう、俺は何をすれば」
ひょい、と顔を出して一階に顔を出せば、ラウクムくんが誰かと話してて──。
「あ、レィアさん。《不動》と《荒野》が」
「あ!」「いた!」
嫌な予感危険信号に反応あり。
「(ダッ!!)」
俺が階段をかけ登り。
「「(ギュン!!)」」
《不動荒野》が追いつき。
「「(ガシッ!!)」」
そして即座に俺のコートをひっ掴む。
「もー!」「何で逃げるのー!?」
捕まった…なんでコイツらこんなに早いんだよ…。
「よ、よぉ先輩。どうしてこっちに?」
この二人が来ると言うことは…何となく答えが分かっていたが、それでも聞く。
「向こうの」「お手伝い!」
デスヨネー。
知ってた。
「見た感じ」「元気そうだし」「二つ名の方の」「お店も「用意しないと!」」
「ふざけんな!俺はクラスの方の用意をするって言ってんだろ!お前らのせいでこっちの方は全然なんだよ!!」
今だって襲撃の片付けの真っ最中だ。用意すべき物も昨日と比べれば揃ってきているがまだ足りていないし、さらに宣伝ビラ配りもして、客を呼び込めるようにしなくちゃならない。
「それに、そっちの用意はほとんど学校で済ませただろ?細々とした物は揃え終わってるし、物理的にデカいヤツはいくつかのパーツにバラして馬車に積んでたじゃねぇか」
一応、二つ名での出し物は演劇…の枠の中ではある。かなり荒っぽいのだが。
ちなみに、台本とかはない。大枠の流れ以外ほとんどない。…な?荒っぽいって言っただろ?
「ほとんど揃ってるけどー」「医療品とかー」「防衛とかー」「貸出用のあれやこれとかー」「サクラ雇ったりとかー「色々あるでしょ?」」
「サクラ入れるのかよ…」
早速見ちゃいけない裏を見た気分だ。いや、もちろん演劇とかの純粋な実力はないし、こちらの出し物の方は多分、最初の方はかなり観客たちは困惑するだろうしな。
しかし俺は引き下がれない。
引き下がれないのだ!!
「医療品は適当に買い集めればいいだろ?回復魔法も使えばいいし、防衛は適当にやってれば二つ名持ちに勝てる奴なんてそうそう居ない、貸出用のは…あぁ、王都だから少ないのか…でも、マジモン入れるのは危険だし…まぁいい、最悪木製でもいいだろ。サクラとかは知らん。ルト先輩にでも頼め。んでもって俺をクラスの方に関わらせろ」
「れ、レィアさん、何でそんなにも僕らの方を手伝おうとしてるの…?いや、助かるんだけど…」
「いい事を聞いてくれたラウクム、俺はこの出し物が心配で心配でならないんだ。特に今年は大切な一年目で、西学も参加してきてる。記憶にも記録にも残るような聖学祭になるだろう、だから──」
「…あなた、実は単純に自分の衣装が気になる…あるいは、どうにかして変えようとしてるだけではないんですの?」
「………。」
あぁ、アーネ。
学校に入学してからずっと、俺が嫌いなのは分かる。分かるが、このタイミングでそれを言って欲しくなかった…。
「…図星ですのね」
「買い出し行ってくる!!」
階段を飛び降り、《不動荒野》の手を振り払ってカウンターの上に置いてあったメモを一枚かっさらって修復中の扉から外へと出ていく。
「あっ!!」「逃げた!!」
「逃げたんじゃないぞ!一刻も早く買い出しに行きたいだけだ!!」
全力疾走でその場から離脱しつつ、俺は振り向きざまそう叫んだ。
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