大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

一階と二階

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ひとまず、一階はこんな所か。
今更の話になるが、ウチのクラスが陣取った店は、二階建てだ。詳しいつくりはまた今度機会と時間があれば話すが、ともかく一階の西学共は全部髪で縛って通りに転がした。
余談だが、もちろん縛りは亀さんとそっくりなアレ。髪だから見にくいのが不幸中の幸いかもしれない。
下にいたのは五人…となると、残り一人は上の階にいるはずだ。
その前に。
「よっ」
カウンターの中に飛び入り、戦闘中もずっと動かなかったクラスメイトを救援……あ?
「んー!んー!」
「…!ん!んんーん!」
カウンターの中にいたのは、猿轡を噛まされ、手首と足首を縄で結ばれた男子二人。
「………。」
無言で銀篭手から出した千変片を操り、それら全てを一瞬で切り裂く。
「ぷはっ!助かった!《緋眼騎士》!」
「礼はどうでもいい。それより、シエルはどこだ」
眉を寄せ、銀篭手の上から指を鳴らせば、その男子は恐る恐ると言った風に上を指さす。
──。
「テメェらはここで芋虫ごっこしてて、そのクセ上ではガキと敵をタイマン張らせてたのか!?」
馬鹿じゃねぇのか!?
有り得ねぇだろ!!
「す、すまな──」
「中途半端な謝罪はいらねぇ。ンなもんは自己満足にしかならないゴミ以下のセリフだ。それに、言う相手は俺じゃねぇだろが!」
カウンターのすぐ側にある階段を駆け上ろうとすると、不意に抵抗感が。
イラつきながらそれを見ると、別の男子が俺の手を掴んでいた。
「俺も手伝──」
「黙れ。そこで正座しながら反省文でも練ってろクソが」
俺の顔が余程恐ろしい顔だったのだろう。男子はそのまま硬直し、手の拘束が緩んだ。
叩き落とすようにして男子の手を払い、音もなく階段を上っていく。
階段の上は広い部屋がひとつあるだけなので、ひとまず階段の中に隠れ、様子を窺う──シャル、任せる。
『知ってる。もうやってるよ………ん?何かやっぱりノイズが…』
大丈夫か?
『いや、問題ないだろ。中じゃ反応が二つ、多分戦ってるな』
じゃあシエルはまだ戦える程度には無事なのか。
その事にある意味安堵しつつ、銀篭手の内側に銀腕を形成する。
ひと回り…いや、ふた回りも大きくなった腕は、常人ならばバランスを狂わされるだろうが、俺にはそんな問題は無い。
ふとした思いつきで、銀篭手の《千変》の一部を脚にもつける。下での戦闘で、蹴りを繰り出した時にあまり痛打にならなかったのを思い出したのだ。
脚甲の調子も確かめ、問題なさそうだと判断し。
「行くぞ」
『未だ戦闘中。やっちまえ』
シャルから報告を聞き、俺は階段から飛び出した。
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