大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

西学と聖学

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「ッチぃ!!」
混戦、あるいは乱戦。
シャルによると、大体前衛二十人と後衛十人低度という話だったが、前衛が二十人ということは、前衛として戦う俺達──《逆鱗》《勇者》《雷光》《緋眼騎士》の四人。《不動》は今回抜かせてもらう──の五倍。
一人あたり、五人倒してようやくトントンだ。
それだけでも苦しいのに、何をどうやっているのか、壁のように立ちはだかる西学の生徒達の間をすり抜けて、親指ほどの小さな魔法…魔弾が飛んでくる。
それも、そのどれもが致命傷になりかねない。
──そう、致命傷。
仮面や校章を狙っているのではなく、腹部や喉、ストレートに心臓を狙って飛んでくる。
前衛の生徒も、仮面や校章はほとんど狙わず、手足を刎ねようとすらしている。
それも、迷いがない。
聖学こちらの生徒は、魔獣と戦う時と比べると、幾らか剣筋が鈍る。
しかし、西学の生徒はそれが無い。
最悪──死んでも構わないと言わんばかりに。
いや、もしかすると──。
『それが狙い、か』
西学じゃあ一体何を教えこまれているのやらッ!!
「せいッ!!」
《千変》で作った大剣を全力で振り、目の前の生徒を斬る。
重さは出来るだけ軽くしたので、致命傷にはなりにくいだろう。
狙いは、胸にある西学の校章──。
──ギギッ、ギギ………。
「あぁん!?」
校章が…壊れない!?
「糞がッ!!」
咄嗟に千変剣を重くし、その生徒を強引に吹き飛ばす。
盛大な音と共にそいつは地面と水平にすっ飛び、他の誰かにぶつかったのが辛うじて俺の目の端に見えた。
シャルッ!今の見えたか!?
『見えた』
校章は!?
『なんとか壊れてた。あいつはもう、復帰不可だ』
クソ…まさかあいつ一人が、そして校章のみがな訳ではあるまい。
「おのれっ!小細工をッ!!」
どうやら、他の二つ名持ち達も気づいたらしい。
西学の生徒がつけている仮面と校章。
それらが非常に硬く──
「面倒臭い!!」
俺を取り囲んだ生徒を強引に蹴散らしつつ、千変剣にさらに多く《千変》を注ぎ込んでいく。
────………ター。
…?今なにか──まぁいい。
そして、ただの大剣は、形を変えて銀剣へ。
『おい今代の、その形は──』
輝き、鋭く、しかし決して斬ることは出来ない、誇り高く美しいそれを模した千変剣は、あのギミックをもコピーさせた。
────…マ……ー。
…やはり、なにかノイズが…気のせいではなかったか。
しかし──今はそれを気にしている場合ではない!!
「ブッ散らせ──」
千変剣を振り回し、充分な空間を確保しつつ俺は剣を構える。
地面を踏みしめ、身体を捻り、振り抜くは銀の灼光。
「《煌覇》ァァァァ!!」
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