大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

修行と違い

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「君の目には儂の目と違って、一つ明確な欠点がある」
人混みの中を、ヴァルクスが俺を連れて歩きつつ、そう言う。
来ている所は王都のド真ん中、大聖堂と王城、それと大貴族の屋敷が合わさった王聖城へと繋がる大通り。
ヴァルクスはその大通りにある露店をふらふらと見たり、親とはぐれたらしい子の親を探したりして、何度も往復していた。
「それは使用時間というリミットがついとる事じゃの。恐らく違いは、先天的な物か後天的な物かじゃろうな」
その辺は俺達も何となく分かっていた。初めて緋眼を使った時も、情報が多すぎてロクに使えなかった記憶がある。今はもう身体が慣れたのか、そういうことは無くなったが。
「幸運にも、その目は片目でも充分効果を発揮するようじゃ。そもそも、君の話によると、その目は戦技アーツで発動していらしいが……ひょっとすると、両目が潰れても見えるかもしれんのう」
ヴァルクスはそう言って笑った。
「前に限界が来た時は、頭痛と共に戦技アーツが強制解除された、と言っておったな?原因は……儂が言うまでもないじゃろう?」
「身体が危険だって判断して、戦技アーツを強制終了させた、だろ」
情報処理の限界。あるいは、そもそも備わっていない能力に対して、身体が限界の悲鳴をあげたか。
「そうじゃの。逆に言えば、その戦技アーツは本来、そう言う無理のある戦技アーツじゃ。ここからまず、二つの考えがある」
先を進みつつ、ヴァルクスが一本指を立てる。
「一つ。その戦技アーツで無理をしない。恐らく、今の君が見ている物はあまりにも雑多。つまりは無駄が多すぎる。あらゆるもののあらゆる切断の可能性を拾い、それを視覚化する。例え可視化出来ない、触れることすら出来ないはずのものでも、その目はそれを見出す。今からすべき事は、見る物に対しての情報の取捨選択。視界にフィルターをかける行動じゃ」
と、同時に。と言って二本目の指を立てる。
「二つ。その戦技アーツで無理をする。端的に言えば限界の拡張じゃ。話を聞く限り、君の目は戦闘でおよそ五分程度連続で発動したらしいが、場合によってはそれ以上の戦闘も視野に入れる必要がある。それに話を聞く限り、相手はほぼ一人だったのに対して五分。相手が複数人なら戦闘時間も伸びるし、目への負担も大きい。その目で物を見ること自体になれる必要がある訳じゃな」
無茶苦茶を言う。だが、理屈も理由も納得できるし理解もできる。
「だからここか?」
何十人、いや、何百人というヒトがごった返すこの大通り。少なくとも対象がそれだけの数はあるという事であり、身につけている物や屋台で渡される物品すらもカウントするなら、さらに数は数倍から数十倍に膨れ上がる。
「そうじゃな。本来なら先にフィルターをかける方を練習し、少しずつ自力で限界を伸ばす方がいいんじゃろうが……時間が無い。少々手荒に、両方同時に進めるとしようかの」
「了解師匠。ぶっ倒れたら介抱頼む」
そう言って、まだ残っている左目に意識を集中させ、目を見開く。
「《始眼》」
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